このページの要点
- 媒介等の業務を委託されて行う者は、委託の段階を問わず届出の対象になり得る(電気通信事業法73条の2)。契約に、届出番号の通知、再委託先の確認、未届出の場合の停止を書く。
- 提供条件の説明、契約書面、初期契約解除、勧誘の禁止行為は、条文上は電気通信事業者の義務が中心。誰が何を担うかを契約で決め、手数料の戻しと対にして書く。
- 電気通信役務の提供は特定商取引法の適用除外になるが、端末の売買や付帯サービスは取引の形ごとに確かめる。
- テレアポや店頭業務の個人委託は、有効な成果の判定と稼働時間の修正の手続を明記し、契約書の記載と実際の働き方が食い違わないようにする。
結論:通信サービスの販売代理店契約は、電気通信事業法の規律を「契約の鎖」で下まで引き継ぐ書面にする
携帯電話や光回線の回線サービスを売る代理店の契約書は、一般の商品の販売代理店契約と、骨組みが少し違います。通信サービスには、電気通信事業法という法律が、サービスを提供する会社(電気通信事業者)だけでなく、その販売を手伝う代理店に対しても、説明の仕方、勧誘のしかた、届出、委託元による指導を定めているからです。契約書には、これらの規律を、委託元から代理店へ、代理店から二次・三次の代理店や架電(電話をかけて営業すること)の委託先へと、順番に引き継ぐ条文が必要になります。
このページでいう用語を先に整理します。「電気通信事業者」は、通信回線などの電気通信役務を提供する会社です。「媒介等」は、電気通信役務の提供に関する契約の締結の媒介(仲立ち)、取次ぎ、代理をまとめた呼び方で(同法27条の4)、その業務を電気通信事業者から委託された者、さらにその者から二以上の段階にわたって委託を受けた者を「媒介等業務受託者」といいます。媒介等業務受託者のうち、総務大臣に届出をした者が「届出媒介等業務受託者」です(同法73条の2第2項)。以下では、携帯電話の販売店や光回線の販売会社が、この「媒介等業務受託者」として働く場面を想定します。
結論から言うと、契約書に入れるべきものは次の5つです。
- 届出の有無を確認し、再委託の連鎖の全体を把握する条(誰が、どの段階で、何の業務を受けているか)。
- 提供条件の説明、契約書面、勧誘の禁止行為を、委託元が定める手順どおりに行わせる条。
- 初期契約解除を含む解除の申出を妨げず、委託元に速やかに引き継ぐ条と、その場合の手数料の扱い。
- 架電や店頭の業務を個人に委託するときの、報酬の決め方(有効な成果の判定、稼働時間の確認)と、働かせ方の設計。
- 代理店の営業管理システムの入力や顧客情報について、責任者の選任、研修、アクセス権、終了時の削除を定める条。
| 規律 | 根拠 | 負う者 | 契約書での置き場所 |
|---|---|---|---|
| 提供条件の説明 | 電気通信事業法26条、73条の3(準用) | 電気通信事業者、届出媒介等業務受託者 | 業務の条:説明資料、手順、説明の記録 |
| 契約書面の交付 | 同法26条の2 | 電気通信事業者 | 申込みの取次ぎの手順、書面に必要な情報の連絡 |
| 初期契約解除 | 同法26条の3 | 電気通信事業者 | 解除の申出の引継ぎ、不実告知の禁止、手数料の戻し |
| 勧誘の禁止行為 | 同法27条の2、73条の3(準用) | 電気通信事業者、届出媒介等業務受託者 | 勧誘ルールの条、スクリプト、再勧誘の禁止 |
| 媒介等の業務の届出 | 同法73条の2 | 委託を受けて媒介等の業務を行おうとする者 | 届出・変更・廃止の報告、再委託の条件 |
| 委託元による指導・措置 | 同法27条の4、同法施行規則22条の2の18 | 電気通信事業者 | 責任者、研修、報告、検証、是正、解除の条 |
上の表は条文の位置づけの整理です。26条1項の定めにより、説明などの対象になるのは総務大臣が告示で指定した電気通信役務です。取り扱うサービスが対象かどうかは、現行の告示で確かめます。
この種の代理店契約の一般的な型(取次型・販売店型)は代理店契約書の種類と見分け方で、手数料の組み立ては手数料①:算定の基礎と料率で説明しています。このページは、通信サービスに固有の部分、つまり電気通信事業法の規律をどう契約に落とすかと、架電や店頭の業務を個人に委託するときの注意に絞ります。
届出と再委託の連鎖:誰が届け出て、誰が確かめるか
電気通信事業法73条の2第1項は、電気通信事業者又は媒介等業務受託者から委託を受けて、26条1項各号の電気通信役務の提供に関する契約の締結の媒介等の業務を行おうとする者は、総務省令で定めるところにより、一定の事項を記載した書類を添えて、総務大臣に届け出なければならないと定めています。届け出る事項は、氏名又は名称・住所、委託を受ける電気通信事業者又は媒介等業務受託者、媒介等の業務に係る役務を提供する電気通信事業者、役務の区分などです。総務省令(同法施行規則39条3項)は、これに加えて、再委託の有無と、電気通信役務の販売方法の別も定めています。
条文は「電気通信事業者から」だけでなく「媒介等業務受託者から」委託を受けた者も届出の対象にしています。つまり、一次代理店から委託を受けた二次代理店、二次代理店から委託を受けた三次代理店も、それぞれが届出の対象になり得ます。届出事項に変更があったときは遅滞なく届け出る必要があり(同条2項。ただし、委託元や役務を提供する電気通信事業者のみの変更のような軽微な変更は不要。規則39条5項)、媒介等の業務を廃止したときも届出が必要です(同条4項)。
もう一つ見落としやすいのは、届出の義務と、委託元の指導の義務とで、対象の範囲が少し違うことです。届出が必要なのは「媒介等の業務を行おうとする者」ですが、電気通信事業者が措置を講じなければならない相手は、媒介等の業務「又はこれに付随する業務」の委託を受けた者です(同法27条の4、規則22条の2の18第1項)。見込み客の発掘や面談の日程調整のように、説明や申込みの受付そのものではない業務を委託する場合、その業務が媒介等の業務に当たるかどうかは、勧誘や提供条件の説明をするのか、申込みを受け付けるのかといった実態で見極め、委託元の運用と合わせて確かめます。契約書の側では、どちらの場合でも、委託元の指導に従う義務は書いておきます。
条文は「二以上の段階にわたる委託」を含めて指導の対象にしています(27条の4)。上位の契約の義務を、下位の契約にも同じ内容で課します。
契約書にするときは、届出に関する条を次のような形にします。ポイントは、届出番号の通知、変更・廃止の報告、未届出の者に業務をさせないこと、再委託先の把握、そして届出がないことが分かったときの停止です。委託元の電気通信事業者は、規則上、届出を要する媒介等業務受託者が届出を行ったことを確認し、遵守させるための措置を講じなければならないとされています(規則22条の2の18第1項4号)。代理店は、その確認に応えられる情報を、契約で約束しておく必要があります。
届出・再委託の条文例(一般的な例)
1乙は、本業務を開始する前に、電気通信事業法73条の2第1項に基づく届出を行い、その届出番号を甲に書面又は電磁的方法で通知する。届出事項に変更が生じたとき、又は届出に係る業務を廃止したときも、遅滞なく同法に基づく届出を行い、甲に通知する。
2乙は、甲の事前の書面による承諾なく、本業務の全部又は一部を第三者に再委託してはならない。
3乙は、再委託先が前条の届出を要する者であるときは、その届出がされたことを確認した後でなければ、再委託先に本業務を開始させてはならない。乙は、再委託先に対し、本契約と同等の義務を書面で負わせる。
4乙は、再委託先(二以上の段階にわたる再委託を含む。)の氏名又は名称、住所、届出番号及び委託する業務の範囲を、甲の求めに応じて遅滞なく報告する。
5甲は、届出がされていないこと、又は届出の内容と業務の実態が異なることが判明したときは、乙又は再委託先の業務の全部又は一部の停止を求めることができ、乙は直ちにこれに応じる。
再委託の承諾は、再委託先の届出番号を確認してから出す形にすると、承諾と届出の確認が一つの手順になります。第5項の停止は、解除より軽い手段として置いておくと、是正を求めながら業務を止められます。
個人に業務を委託する場合の届出も、見落とされがちです。条文は「委託を受けて…媒介等の業務を行おうとする者」と書いていて、法人に限っていません(規則39条1項は、届出をする者が個人である場合の添付書類も定めています)。個人に業務委託をして媒介等の業務を行わせるなら、その個人自身が届出の対象になる余地があります。一方、雇用して自社の業務として行わせる場合の整理は別になります。この違いは、後で述べる「働かせ方の設計」と一体で考える必要があります。
提供条件の説明・契約書面・初期契約解除を、誰がどこまで担うか
電気通信事業法26条1項は、電気通信事業者が、対象の電気通信役務の提供に関する契約を締結しようとするときは、総務省令で定めるところにより、料金その他の提供条件の概要を利用者に説明しなければならないと定めています。この規定は、同法73条の3により、届出媒介等業務受託者にも準用されています。ただし、契約の内容などから説明をしなくても利用者の利益の保護に支障がない場合は、省令で例外が定められ(同項ただし書)、説明の方法も省令で細かく定められています。
省令(規則22条の2の3第1項)が定める基本説明事項は、契約の締結が行われるまでの間に説明しなければなりません。内容は、電気通信役務を提供する電気通信事業者の名称、連絡先、役務の内容(名称、種類、品質、提供を受けられる場所、利用の制限など)、料金、料金に含まれない経費、料金を期間を限って減免する場合の期間や条件などです。販売現場の言い方でいえば、月額の料金、端末代金や工事費などの別の費用、割引の期間と条件、通信の品質や提供エリアの制限を、申込みを受ける前に説明するということです。
契約が成立したときの書面の交付(26条の2)、書面を受け取った日から原則として8日間の初期契約解除(26条の3)は、条文上は電気通信事業者の義務として書かれています。しかし、利用者と直接やり取りするのは代理店です。契約書では、「誰が書面を交付するのか」「書面に必要な情報(契約の成立日、利用者の氏名・住所、料金の支払の時期・方法など)を誰が、いつまでに連絡するのか」を決めておかなければ、書面の交付が遅れ、初期契約解除の期間の起算点があいまいになります。
初期契約解除は、いくつかの点で、契約書の他の条に影響します。
- 利用者は、書面を発した時に解除の効力が生じ(26条の3第2項)、事業者は解除に伴う損害賠償や違約金を請求できません(同条3項。ただし、解除までに提供を受けた役務の対価など、総務省令で定める額は除かれます)。受け取った金銭などは、速やかに返還しなければなりません(同条4項。同じ額は除かれます)。これに反する利用者に不利な特約は無効です(同条5項)。
- 初期契約解除に関する事項について不実のことを告げると、利用者が期間内に解除を行わなかった場合でも、改めて所定の書面を受け取った日から8日間は解除ができます(同条1項の括弧書)。解除に関する事項について事実と異なる説明をする勧誘は、禁止行為(27条の2第1号)の問題にもなります。
- 初期契約解除の対象となるのは、26条1項1号又は2号の役務に限られます。また、一定の認定を受けた確認措置がある場合などの例外が省令で定められています(規則22条の2の7)。契約書の定義で「初期契約解除の対象となる役務」を特定しておくと、現場での案内を誤りにくくなります。
この仕組みと、代理店の手数料との関係は、あらかじめ決めておきます。初期契約解除や、その他の解約があったときに、代理店が受け取った手数料を戻すのか、戻すなら期限と方法はどうするのかは、成約の定義と一組で決める事項です(詳しくは手数料②:発生の時期、返金時の戻し、支払と異議)。通信サービスの場合は、初期契約解除という、利用者が理由を問わず使える解除の制度があるため、成約の定義を「契約の成立」にするのか、「初期契約解除の期間が経過した後」にするのかで、手数料の確定の時期が大きく変わります。
| 成約の定義 | 手数料が確定する時期 | 代理店の側の見方 | 委託元の側の見方 |
|---|---|---|---|
| 契約の成立 | 利用者の申込みを受けた時 | 早く確定するが、解除があったときの戻しが必要になる | 手数料を払った後の解除が多いと、戻しの回収に手間がかかる |
| サービスの提供開始 | 回線の開通・端末の引渡しが済んだ時 | 現場の実感に近い | 開通までの期間が長いと、確定が遅れる |
| 初期契約解除の期間の経過 | 書面の受領日などから所定の期間が経過した後 | 確定が遅く、資金繰りには不利 | 戻しの手間がなく、算定が単純になる |
どの型でも、書面の交付日(起算点)を記録に残す条を置いておくと、確定の時期を争わずに済みます。
勧誘の禁止行為は、同法27条の2に4つの類型があり、届出媒介等業務受託者にも準用されます(73条の3)。契約の重要な事項について故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為(1号)、勧誘に先立って自己の氏名・名称や契約の締結の勧誘である旨を告げない行為(2号。73条の3の読み替えにより、勧誘に係る電気通信役務を提供する電気通信事業者の名称を含みます)、契約を締結しない旨の意思や勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を示した者への勧誘の継続(3号)、そして省令で定める行為(4号)です。
3号の勧誘の継続には、省令で除外される場合があります。法人契約の勧誘や軽微な変更に係る勧誘は、除外されています(規則22条の2の13第2項)。したがって、個人向けと法人向けの架電を同じスクリプトで行う場合は、個人向けについて「断られたらそこで勧誘を終え、以後の架電先から外す」ことを、業務の手順としてはっきり書いておくのが安全です。このほか、移動通信について総務大臣が指定した事業者には、端末の販売に際しての料金面の利益の提供や、契約の解除を不当に妨げる条件を、自ら約束し、又は第三者や届出代理店に約束させることを制限する規定もあります(27条の3第2項、73条の3)。具体的な内容は省令で定められているので、現行の省令で確かめます。
説明と勧誘の条文例(一般的な例)
1乙は、対象役務の提供条件の概要を、甲が定める説明資料及び手順に従い、利用者が契約の申込みをする前に説明する。乙は、甲が定める資料以外の資料又は乙の独自の判断による説明で、料金その他の提供条件を説明してはならない。
2乙は、勧誘に先立ち、乙の氏名又は名称、勧誘に係る対象役務を提供する電気通信事業者の名称及び契約の締結の勧誘である旨を告げる。
3乙は、利用者が契約を締結しない旨の意思又は勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を示したときは、直ちに勧誘を中止し、当該利用者を以後の勧誘の対象から除く。
4乙は、契約に関する重要な事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げてはならない。契約の解除に関する事項についても同様とする。
5乙は、利用者から契約の解除の申出を受けたときは、解除を妨げる説明をしてはならず、遅滞なく甲に引き継ぐ。
第1項の「資料以外の説明の禁止」は、現場の説明が、委託元の確認を経ていない内容に流れるのを防ぎます。第3項の「勧誘の対象から除く」は、再架電の防止を、個々の担当者の注意ではなく、名簿の管理で担保する書き方です。
特定商取引法との関係:適用除外の範囲と、端末など「役務以外」の部分
通信サービスの電話や訪問による勧誘に、特定商取引法の規制がどう関係するかは、整理しておく必要があります。特定商取引法26条1項8号ニは、他の法律の規定によって訪問販売、通信販売又は電話勧誘販売における購入者等の利益を保護することができると認められる販売又は役務の提供で、政令で定めるものを、適用除外としています。これを受けた同法施行令11条は、別表第二に掲げる販売又は役務の提供としていて、別表第二には「電気通信事業者が行う電気通信役務の提供」が含まれています。つまり、電気通信役務の提供そのものは、訪問販売や電話勧誘販売に当たるとしても、特定商取引法の訪問販売・電話勧誘販売の規定(氏名等の明示、再勧誘の禁止、書面の交付、クーリング・オフなど)の適用を受けず、電気通信事業法の規律がその役割を担う、という整理になります。
ただし、この適用除外を、通信サービスの販売現場の全体に及ぶものと考えるのは早すぎます。別表第二が挙げているのは、あくまで「電気通信事業者が行う電気通信役務の提供」です。端末(スマートフォンなど)の売買は商品の販売ですし、通信サービスとは別に結ぶ有料のオプションや付帯サービス、周辺機器の販売、関連する別の事業者のサービスの勧誘は、役務の提供者や契約の当事者によっては、適用除外の対象にならない可能性があります。取引の形ごとに、誰が誰に何を売る契約なのかを分けて確かめます。
契約書の書き方としては、勧誘のルールの条を「通信役務の部分」と「端末・付帯サービスなどの部分」に分けて、前者は電気通信事業法に沿った手順、後者は電話勧誘販売の氏名等の明示(特定商取引法16条)、契約を締結しない旨の意思を示した者への勧誘の禁止(同法17条)、申込みを郵便等で受けたときの書面の交付(同法18条)などに沿った手順を定める方法があります。同じ電話の中で、通信役務と端末を一緒に勧誘することが多いため、スクリプトも二つの規律を同時に満たすように作ります。電話勧誘販売の一般的な注意は代理店・紹介者の営業と消費者向けのルールでも扱っています。
契約を結ぶ前に、通信役務とそれ以外を切り分ける点検
- 取り扱うサービスは、総務大臣が告示で指定した電気通信役務(26条1項各号)に当たるか。
- 端末、周辺機器、有料のオプション、保守サービスなど、通信役務以外の売買・役務の契約が、同じ勧誘で一緒に結ばれていないか。
- それぞれの契約の当事者(売主、役務の提供者)は誰か。代理店が当事者になる契約はあるか。
- 通信役務以外の部分に、特定商取引法の書面の交付やクーリング・オフの対応が必要かどうか。
- スクリプトと申込書面が、二つの規律の両方を満たす順序と文言になっているか。
架電(テレアポ)・店頭業務を個人に委託するときの報酬と働かせ方
通信サービスの販売では、見込み客に電話をかけて面談の機会をつくる「テレアポ」や、その機会を販売担当に引き継ぐ「トスアップ」、販売店舗での接客・案内の補助、イベントでの案内などを、個人に業務委託することがあります。この場面の契約書で問題になるのは、報酬の決め方(何をもって成果とするか、稼働時間をどう確認するか)と、契約書の書き方と実際の働き方が食い違っていないかという点です。
まず、報酬です。成果報酬型にするなら、「有効なアポイント」の判定を誰がどういう基準で行うかが争いの中心になります。よくある書き方は、委託者が顧客に意思確認などの審査を行い、委託者の裁量で有効と認めたものだけを成果とし、その判断に受託者は異議を述べない、という形です。この書き方は、判定の基準が見えず、無効にされた理由も分からないため、受託者にとっては報酬が確定しません。委託者にとっても、後から基準を争われるおそれがあります。
報酬に関する条文の整え方(書き方の例・一般的な例)
有効なアポイントの判定
基準の明示と通知と再確認の窓口を置くことで、成果の確定を、一方の判断だけに委ねない形にします。
稼働時間の確認と修正
修正の根拠の開示と異議の期間を書き、争いのない部分の支払を止めない形にします。
報酬の性質の書き方
性質の宣言は、実態を変えません。次の項で述べる働かせ方の設計が、実質的な決め手になります。
次に、働かせ方です。労働基準法9条は、「労働者」を、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者と定めています。11条は、賃金を、名称のいかんを問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものと定めています。11条は名称のいかんを問わないと定めており、こうした定義の仕方は、契約の題名や「賃金に該当しない」という記載よりも、就労と支払の実態に着目するものです。なお、労働者に当たるかどうかは、個別の事情による総合的な判断であり、このページはその結論を示すものではなく、契約書を書くときに食い違いが生じやすい点の一般的な整理にとどまります。
労働者性の判断では、指揮監督の下での労務の提供かどうか、報酬が労務の対償といえるかなどの事情が総合的に見られるとされます。契約書との関係で、雇用に近い方向の事情として挙げられやすいのは、次のようなものです。委託者が稼働の時間帯や日数を指定する。場所を指定する。トークスクリプトやマニュアルで話し方や手順を細かく指示する。進捗や稼働状況を細かく報告させ、管理する。時給や日給のように、時間や日数に対して報酬を支払う。他の仕事を事実上できない。代わりの者に頼むことが認められない。1つひとつで決まるものではなく、事情が重なるほど、契約書の題名とは別に、実態に即した評価がされる可能性があります。
店頭業務のシフト制も同じです。販売店舗での接客・案内の業務を、委託者が作ったシフトで行わせ、決められた日に従事できなかったことについて責任を負わせる、という作りは、受託者に業務の進め方の裁量が乏しいことを示す事情として見られ得ます。契約の条文が定める受託者の裁量(たとえば代替要員の手配)と、運用の実際とが、一致しているかどうかが問題になります。
業務委託として成り立つ場合でも、別の法律の対象になります。個人で従業員を使用しない受託者に業務を委託する委託者は、フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)の対象になり得ます。委託をしたときは、給付の内容、報酬の額、支払期日などを、書面又は電磁的方法で直ちに明示しなければなりません(同法3条)。有効なアポイントの基準は、給付の内容に関わる事項として、あらかじめ明示しておくことが望ましいものです。また、一定期間以上の業務委託では、受託者の責めに帰すべき事由がないのに報酬の額を減ずることなどが禁止されています(同法5条1項2号)。判定の結果として報酬を減らす条は、受託者の責めに帰すべき事由があるときに限る形にしておく必要があります。他方、受託者が労働者に当たるのであれば、労働基準法の規律が先に問題になります。どちらの規律が働くかは、契約書の記載ではなく、運用の実態によって決まります。
架電・店頭の個人委託を設計する前に確かめたい問い(一般的な例)
委託する業務は、契約の締結の媒介等に当たるか。見込み客への架電と日程調整にとどまるのか、提供条件の説明や申込みの受付までするのか。
媒介等の業務に当たるかどうかで、届出の要否と、説明・勧誘の規律の直接の対象かどうかが変わります。付随する業務にとどまる場合も、委託元の指導には従う条を置きます。
受託者は個人か法人か。個人なら、従業員を使っていない一人の事業者か。
従業員を使用しない個人は、フリーランス法の特定受託事業者に当たります。書面または電磁的方法での明示(3条)は委託する側の従業員の有無を問わず求められ、報酬の支払期日(4条)や禁止行為(5条。1か月以上の業務委託)の規律は、委託する側が従業員を使用する場合にかかります。
稼働の時間帯、場所、台本、報告の頻度を、委託者はどこまで決めているか。受託者が自分で選べる部分は残っているか。
雇用に近い運用になっていないかを、条文ではなく運用の実態から点検するための問いです。
有効なアポイントの基準は、書面で、受託者が事前に知ることができる形になっているか。
基準が見えないと、報酬の確定を一方の判断に委ねることになります。
初期契約解除や解約があったとき、アポイントや成約の手数料は戻すのか。戻すなら、いつまでか。
通信サービスでは、利用者が理由を問わず解除できる制度があるため、戻しの条を置かないと、手数料だけが残ります。
営業管理システムの入力と顧客情報:責任者・研修・アクセス権・終了時の削除
通信サービスの販売では、代理店は、契約の申込みの入力や、利用者の本人確認の情報、連絡先、契約の状況の確認を、委託元が用意した営業管理システム(以下「代理店システム」)で行うことがあります。ここには、利用者の個人情報が大量に入っています。個人情報保護法は、個人情報取扱事業者に、個人データの安全管理措置(23条)、従業者の監督(24条)、委託先の監督(25条)を求めています。代理店は、委託元との関係では委託先に当たることが多く、再委託をするときは、再委託先の監督も必要になります。
電気通信事業法の側にも、情報管理に関する要求があります。委託元の電気通信事業者が講ずべき措置として、規則22条の2の18第1項は、媒介等業務の実施の状況を監督する責任者の選任(2号)、媒介等業務の手順等に関する文書の作成と、媒介等業務受託者とその従事者に法令等を遵守させるための研修の実施等(3号)、媒介等業務受託者に対する実施状況の定期的な確認と、必要に応じた改善(5号)を挙げています。3号の研修の対象となる法令等には、電気通信事業法のほか、携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律と、青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律が含まれています。
代理店契約の書き方は、この措置を代理店の側で受け止められる形にします。つまり、責任者を置く、研修を受ける、実施状況を報告する、システムの使い方を守る、という約束です。
情報管理の条文例(一般的な例)
1乙は、本業務に係る顧客情報の管理に責任を負う者(以下「情報管理責任者」という。)を選任し、その氏名を甲に届け出る。変更したときも同様とする。
2乙は、本業務の従事者に対し、甲が指定する法令遵守及び個人情報の取扱いに関する研修を、業務を開始する前に受講させ、受講の記録を保存して、甲の求めに応じて提示する。
3乙は、甲の営業管理システムの識別符号の付与を従事者ごとに受け、他人に貸与し、又は共用してはならない。
4乙は、システム上の顧客情報を、本業務の遂行に必要な範囲を超えて、閲覧し、複写し、撮影し、持ち出し、又は送信してはならない。
5乙は、情報の漏えい、滅失又は毀損が生じ、又は生じるおそれがあるときは、直ちに甲に報告し、甲の指示に従う。
6乙は、本契約が終了したとき、又は甲から求められたときは、保有する顧客情報を返還し、又は復元できない方法で消去して、その完了を書面で報告する。
研修の「受講の記録」は、委託元が実施状況を確認するときの資料になります。終了時の削除は、終了後に顧客情報が残り続けて、別の営業に使われることを防ぎます。
個人に業務委託する場合は、さらに配慮が要ります。個人は、自宅で作業することが多く、私物の端末を使いがちです。私物の端末での閲覧・保存を禁止するか、許すなら条件(画面の撮影の禁止、端末の紛失時の報告、業務終了時の消去の確認)を決めます。契約が終了した後の顧客情報の取扱い、顧客に連絡して自分の営業に使うことの禁止は、契約の終わらせ方:終了の後に残るお金・お客様・表示でも扱った、終了後に残る問題の1つです。
契約を結ぶ前の点検表と、起きがちなこと
ここまでの内容を、契約書の条ごとに点検できる表にまとめます。一次代理店の側でも、二次・三次の代理店や架電の委託先の側でも、使える項目です。
通信サービスの販売代理店契約・架電委託契約の点検表
- 委託元と委託先の間で、取り扱う役務が総務大臣の告示で指定された役務に当たることを確かめ、契約で特定しているか。
- 届出の番号、変更、廃止の報告、再委託先の届出の確認を、条文にしているか。
- 説明資料と手順を委託元が定め、それ以外の説明をさせない条があるか。
- 勧誘の前の名称の告知と、断られたときの勧誘の中止、名簿からの除外が、手順として書かれているか。
- 書面の交付の担い手と、書面に必要な情報の連絡の期限が決まっているか。
- 初期契約解除その他の解除の申出を妨げず、引き継ぐ条と、手数料の戻しの条があるか。
- 通信役務以外の売買・付帯サービスに、特定商取引法の手順が反映されているか。
- 個人に委託する場合に、有効な成果の基準と判定の手続、稼働時間の修正の手続が書面で決まっているか。
- 働かせ方(時間、場所、台本、報告)が、業務委託の実態と合っているか。
- 責任者、研修、アクセス権、終了時の削除が決まっているか。
これらは、1つの条文を直せば解決するという問題ではなく、委託元から末端まで、同じ規律が同じ順序で届いているかどうかの問題です。代理店契約の多層構造の整理と、紹介代理店契約書・業務提携契約書の紹介の帰属の条と合わせて、契約の鎖の全体を図にしてから条文を書くと、抜けが見つかりやすくなります。
よくあるご質問
携帯電話や光回線の販売代理店は、必ず届出が必要ですか?
電気通信事業法73条の2第1項は、電気通信事業者又は媒介等業務受託者から委託を受けて、26条1項各号の電気通信役務の提供に関する契約の締結の媒介等の業務を行おうとする者に、届出を求めています。取り扱うサービスが総務大臣の告示で指定された役務に当たるか、委託を受けて行う業務が媒介等の業務に当たるかで決まります。見込み客への架電と日程調整にとどまる業務が当たるかどうかは、業務の実態と委託元の運用で確かめます。
初期契約解除とは何ですか。期間は何日ですか?
契約を締結した利用者が、書面を受け取った日(一定の役務では、提供開始日が遅いときはその日)から起算して8日を経過するまで、書面により契約を解除できる制度です(電気通信事業法26条の3第1項)。解除の効力は書面を発した時に生じ、事業者は解除に伴う違約金などを請求できません(解除までに提供を受けた役務の対価など、省令で定める額を除く)。対象となる役務は、26条1項1号又は2号の役務に限られ、一定の例外が省令で定められています。
架電を委託する個人にも、電気通信事業法の勧誘のルールを守らせる必要がありますか?
届出媒介等業務受託者には、説明(26条)と禁止行為(27条の2)が準用されます(73条の3)。また、委託元の電気通信事業者は、二以上の段階にわたる委託を含めて、委託を受けた者に対する指導などの措置を講じなければならないとされています(27条の4)。契約では、勧誘の前の名称の告知、断られたときの勧誘の中止、不実告知の禁止を、委託先にも同じ内容で課します。
通信サービスの電話勧誘には、特定商取引法はまったく適用されませんか?
特定商取引法26条1項8号ニと施行令11条・別表第二により、電気通信事業者が行う電気通信役務の提供は、訪問販売・電話勧誘販売などの規定の適用除外とされています。ただし、除外されるのは電気通信役務の提供です。端末の売買や、通信とは別に結ぶ有料のオプションなどは、取引の形によっては適用除外の対象にならないことがあります。契約ごとに、売主と役務の提供者を分けて確かめます。
時給制のテレアポを、業務委託にできますか?
契約の題名ではなく、実態で判断されます。労働基準法9条は、事業に使用される者で賃金を支払われる者を労働者とし、11条は、賃金を名称のいかんを問わず労働の対償として支払われるものと定めています。時間帯や場所の指定、台本による細かな指示、時間に対する報酬などの事情が重なると、実態に即して労働者と評価される可能性があります。個別の事情による判断なので、一般論としては、契約書の記載と運用の実際を一致させ、成果の基準と報酬の算定を書面で明確にすることが出発点になります。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、取引の実態や当事者の立場によって変わることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索 / 公正取引委員会 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 特許庁