このページの要点
- 行政書士法19条は、名目を問わず報酬を得て、業として官公署に提出する書類を作成することを制限している。紹介者の業務は、情報提供と連絡の整備に限る。
- 報酬の発生条件の「交付決定」は、誰が、何の、いつ受けたかを定義し、報酬表にない補助金の額を一方の判断だけにしない。
- 交付決定の取消しや補助金の返還があったときの紹介報酬の戻しを、戻さない・全額戻す・原因で分ける、のいずれかに決めて書く。
- 直接取引の違約金は、対象を紹介した顧客に限り、失われた報酬を基準に、損害賠償額の予定として書く。
結論:紹介者の仕事を「紹介と連絡の整備」に限り、申請書類に触れない線を、契約書と運用の両方で引く
補助金の申請支援を事業にしている会社が、顧客を紹介してくれる経営支援会社やコンサルタントと結ぶ契約を、この文章では「紹介パートナー契約」と呼びます。表題は「営業代行契約書」「代理店契約書」「業務提携契約書」などさまざまですが、中身は、紹介者が見込み客を支援会社に引き合わせ、申請が通って交付決定を受けた場合に、支援会社が紹介者へ報酬を払う、という形が典型です。
この契約には、通常の紹介契約にはない固有の問題が一つあります。補助金の申請書類は、国や地方公共団体という官公署に提出する書類であり、その作成を報酬を得て業とすることは、行政書士法で行政書士・行政書士法人の業務として定められているからです。紹介者が報酬を受け取る構造のなかで、紹介者が書類づくりに踏み込んでしまうと、紹介報酬の問題ではなく、書類作成の業務の問題になります。
契約書を組み立てるときの柱は、次の五つです。
- 紹介者の業務を、見込み客の探索、顧客情報の提供、連絡がつく状態の整備、に限って書く(申請書類や事業計画書の作成・代筆・修正を入れない)。
- 報酬の発生条件である「交付決定」を、通知を受けた時点・受けた者・対象の補助金まで特定して定義する。
- 補助金の種類や枠ごとの報酬を別紙の表にし、表にない補助金の扱いを「一方の判断で定める」だけにしない。
- 交付決定が後で取り消された場合や、補助金の返還を命じられた場合に、紹介報酬を戻すか戻さないかを書く。
- 直接取引(中抜き)の禁止と違約金は、対象と範囲を限り、金額の根拠を持てる形にする。
紹介の帰属や既存顧客の判定、中抜きの禁止の一般論は紹介代理店契約書・業務提携契約書で、報酬の算定の基礎は手数料の決め方で扱っています。ここでは、補助金の申請支援という分野に特有の論点だけを書きます。なお、補助金ごとの募集要領や対象経費、採択の基準といった個別のルールには立ち入りません。
行政書士法19条:何が制限されているか
まず条文を確かめます。行政書士法1条の3第1項は、行政書士の業務を「他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(電磁的記録を作成する場合のその電磁的記録を含む)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む)を作成することを業とする」ものと定めています。同法19条1項は、行政書士又は行政書士法人でない者は、「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として」この業務を行うことができない、と定めています。ただし書きで、他の法律に別段の定めがある場合と、定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について一定の者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでないとされています。
契約書の作り手として押さえておきたい点は、次の四つです。
- 対象は「官公署に提出する書類」の作成です。国の補助金でも、地方公共団体の補助金でも、申請書や添付書類は官公署に提出する書類です。紙の書類だけでなく、電子申請のために電磁的記録を作成することも、条文の括弧書きで含まれています。
- 「報酬を得て」の部分に、「いかなる名目によるかを問わず」という言葉が置かれています。報酬の名目を「コンサルティング料」「システム利用料」「成功報酬」「紹介料」「事務手数料」などと変えても、書類の作成の対価と見られる実質があれば、名目だけでは条文の適用を免れないという趣旨の文言です。令和7年の改正で、この部分が条文に明記されました。
- 「業として」とは、反復継続する意思をもって行うことをいいます。1回限りの手伝いと、紹介パートナーとして継続的に顧客を送り込む仕組みの中での関与とでは、評価が異なります。
- 適用が除かれるのは、他の法律に別段の定めがある場合などです。他の法律で別の資格者の業務とされている手続もありますが、補助金の申請書類については、その手続を定める法律ごとに確かめる必要があり、本ページでは個別の補助金に立ち入りません。
違反の効果も確認しておきます。同法21条の2は、19条1項に違反したときは、その違反行為をした者を1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処すると定めています。さらに同法23条の3は、法人の代表者や従業者などが法人の業務に関して21条の2の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても罰金刑を科すと定めています(両罰規定)。契約の当事者が会社であっても、会社自身が処罰の対象になり得る構造です。罰則の条文が置かれていることと、個々の事案で実際に該当するかどうかは別の問題で、後者は書類の作成にどこまで関与したか、報酬がどの業務の対価か、という事実で決まります。
契約書を見る前に、事実として確かめておきたいこと
- 申請書類の作成(事業計画書の本文、経費の積算表、電子申請の入力を含む)を、誰が、どの契約に基づいて行うのか。
- その作成を行う者が、報酬を受ける立場にあるのか。あるなら、行政書士又は行政書士法人か、他の法律に別段の定めがある立場か。
- 紹介者が、顧客に対して書類の書き方を教えたり、下書きを作ったり、入力画面を操作したりする運用になっていないか。
- 報酬表の金額が、紹介の対価だけを表しているのか、書類作成の対価に当たる部分を含んでいると読まれないか。
最後の点は、報酬表の見せ方に関わります。紹介料として払う金額が、申請書の作成費用の実質を含んでいるように読まれる設計(たとえば、紹介者が書類の一部を作成した場合に報酬が増える、作成の分量に応じて報酬が変わる、など)は避けるのが、契約書づくりの基本線です。
紹介者の仕事の範囲:情報提供と連絡の整備に限る
紹介者の業務を限定する方法には、「してよいこと」を列挙する書き方と、「してはならないこと」を列挙する書き方があります。実務では両方を置きます。してよいことの列挙は、契約の目的を示し、してはならないことの列挙は、運用が広がったときの歯止めになります。
紹介者と顧客の間には、申請支援の契約はありません。報酬は、顧客が交付決定を受けたあとに、支援会社から紹介者へ払われます。申請書類は、支援会社の側の契約で作成され、紹介者は関与しません。
紹介者の業務の範囲(条文例)
1乙は、甲の提供する申請支援サービスに関心を有する可能性のある事業者(以下「顧客」という。)を探索し、甲に対し、顧客の名称、連絡先その他甲が顧客に連絡するために必要な情報(以下「顧客情報」という。)を提供する。
2乙は、前項の提供に際し、甲が顧客と連絡を取ることができる状態を整える。ただし、乙は、顧客から申請に関する個別の相談を受けた場合は、甲の担当者につなぐものとし、自ら回答しない。
3乙は、補助金の申請書類、事業計画書、見積書、経費の積算その他官公署に提出する書類又はその基礎となる資料について、その作成、下書き、修正、代筆、入力の代行その他これらに関与する行為を行ってはならない。
4乙は、顧客に対し、補助金の採択、交付決定又は交付額を保証し、又は断定する説明をしてはならない。
5甲は、乙が前2項に違反したと認めるときは、乙に対し是正を求めることができ、是正されないときは、本契約を解除することができる。
第3項が中心です。「関与する行為」と広く書き、作成・下書き・修正・代筆・入力の代行を例示しておくと、運用が少しずつ広がったときに、どの行為が契約違反かを指させます。
ここで注意したいのは、書面の文言だけでは足りないことです。契約書に「乙は書類作成に関与しない」と書いてあっても、運用の実態が書類づくりへの関与になっていれば、実質で評価されます。契約書には、実態を確認するための仕組みを併せて置きます。
| 仕組み | 書き方の例 | 働き |
|---|---|---|
| 報告 | 紹介者は、顧客との接触の状況(日付・方法・内容の要旨)を、一定の頻度で支援会社に報告する | 書類づくりに入り込んでいないかを、記録で確かめられる |
| 資料の取扱い | 紹介者に渡す資料は紹介用の案内に限り、申請書の雛形や記入例は渡さない | 書類作成の道具を、紹介者の手元に置かない |
| 研修 | 契約の締結時に、してよいこと・してはならないことを説明し、確認書に署名する | 禁止事項を知らなかった、という事態を防ぐ |
| 調査 | 支援会社は、書類作成への関与が疑われるときは、紹介者に事情の説明を求められる | 疑いを放置せず、早い段階で事実を確かめる |
いずれも、紹介者の営業を縛るためではなく、報酬の根拠が紹介にあることを記録で示すための仕組みです。
契約を作る前に確かめる問い
紹介者は、顧客と何を話すのか。申請の可否や書き方の話に入るのか。
入るなら、その部分は支援会社の担当者に引き継ぐ運用にします。紹介者の業務が「つなぐ」で終わるかどうかが、契約書の書き方の出発点です。
申請書類を実際に作るのは、誰で、どの契約か。
紹介者と顧客の間に書類作成の契約があると、紹介報酬の外で別の報酬が発生しているのではないか、という問題が生じます。契約の当事者の組み合わせを、図にして確認します。
紹介者は、顧客から直接お金を受け取っていないか。
顧客から紹介者へ、相談料や手数料の名目で支払がある場合、紹介報酬と二重になり、名目の問題も加わります。顧客からの受領を禁止する条項を置くかを決めます。
「交付決定」を報酬の発生条件にするときの定義
補助金の申請支援では、報酬の発生条件を「交付決定」にする契約が多く見られます。申請をしただけでは報酬が出ず、採択され、交付決定を受けて初めて報酬が出る、という成果連動の形です。この形は、支援会社にとって、成果が出なかった紹介の対価を払わずに済み、紹介者にとっては、成果が出たときに報酬を受け取れる、という分かりやすさがあります。
ただし、「交付決定」の意味を定義しておかないと、いつ報酬が発生したのかで争いになります。定義で決めておく項目は次のとおりです。
- 誰が受けたか:紹介された顧客本人が受けたのか、顧客が属するグループ会社が受けたのかを決めます。
- 何の交付決定か:支援会社の支援を受けた申請に係るものに限るのか、顧客が別ルートで申請したものも含むのかを決めます。
- どの時点か:交付決定の通知を顧客が受領した日なのか、交付決定の通知の日付なのかを決めます。
- どう確かめるか:交付決定通知書の写しを顧客から取得できるのは支援会社の側なので、支援会社が確認し、紹介者へ報酬明細で通知する形が自然です。
- いくらの交付決定か:交付額が申請額より減額されて決定される場合(国の補助金では、交付の申請に係る事項に修正を加えて交付の決定をすることができる旨の定めがあります。補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律6条3項)に、報酬も減るのかを決めます。
最後の点は見落とされがちです。報酬表が補助金の種類ごとの定額なら、交付額が減っても報酬は変わらない設計にでき、交付額の何割とする設計なら、交付額に連動して変わります。どちらでもよいのですが、どちらなのかは条文に書く必要があります。
「交付決定」の定義の書き方(一般的な例)
定義の置き方
対象を「甲の支援を受けた申請」と「別紙記載の補助金」に限り、日付の基準も定めています。「これに類する金銭的支援」という幅のある書き方は、後から対象を争う余地を残します。
報酬表にない補助金
「甲の判断で定める」だけだと、額も、払うかどうかも一方の判断になります。紹介者の側から見て、予測できない報酬は、契約の中心を欠きます。
報酬明細の通知
通知の起算点を、支援会社が交付決定を知った日にし、通知がない場合の紹介者の請求手段も書いています。通知が遅れたときに、紹介者が待つだけの状態になるのを防ぎます。
報酬表の作り方と、取消し・返還のときの戻し
補助金の種類や枠によって、報酬を変える契約があります。申請の難しさや、支援会社が受け取る報酬の大きさが種類ごとに違うので、種類ごとの報酬表を別紙にする設計は自然です。別紙の報酬表を作るときは、次のような項目を欄として設けます。
| 欄 | 書く内容 | 決めておく理由 |
|---|---|---|
| 補助金の区分 | 補助金の名称、枠、募集の回 | 同じ名称でも、枠や回で報酬が違う設計がある |
| 報酬額 | 定額か、交付額に対する割合か。税込か税別か | 算定の基礎と、税の表示を取り違えない |
| 発生条件 | 交付決定、または交付額の確定 | いつ報酬が発生するのかをそろえる |
| 支払時期 | 明細の通知から請求書の受領まで、請求書の受領から振込まで | 支払が止まる時期をなくす |
| 上限・下限 | 1顧客あたり、1期間あたりの上限があるか | 予算の見通しを持てるようにする |
報酬額は、税込か税別かを明記しておきます。表の金額の意味が食い違うと、請求書の金額が合いません。
次に、交付決定のあとに事情が変わった場合です。国の補助金では、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(以下「適正化法」といいます)に、交付の決定の取消し(17条)と、取り消した場合の補助金の返還命令(18条)の定めがあります。たとえば、補助金を他の用途に使った場合や、交付の決定に付された条件に違反した場合は、交付決定の全部又は一部が取り消されることがあります(17条1項)。また、額の確定の際に、すでに交付された額が確定額を超えているときは、返還を命じられます(18条2項)。地方公共団体の補助金は、各自治体の条例や要綱で、同様の取消しと返還の定めが置かれるのが通常ですが、内容は個別に確かめる必要があります。
紹介パートナー契約では、この取消しや返還が起きたとき、すでに払った紹介報酬を返してもらうか、そのままにするかを決めておきます。選択肢は次の三つです。
- 戻さない:交付決定を受けた時点で報酬は確定し、その後の取消しや返還の影響を受けない。紹介者にとって最も分かりやすい。
- 全額戻す:交付決定が全部取り消されたときは、報酬を全額返す。支援会社の側に有利だが、紹介者が負うリスクが大きい。
- 取消しの原因で分ける:顧客の側の事情(不正、条件違反)で取り消されたときは戻し、行政の側の事情(予算の変更など)のときは戻さない。当事者の予測がつきやすい。
どれを選ぶにしても、戻しの対象となる取消しの種類、戻す額、戻す期限、戻すべきかを誰が判断するのかを書く必要があります。報酬を戻す仕組みの一般論は手数料の発生時期と返金時の戻しに書いていますので、ここでは補助金に固有の点だけを補います。固有の点とは、交付決定が取り消されるかどうかを紹介者は知り得ず、支援会社だけが顧客から情報を受け取れる、という情報の偏りです。偏りがあるので、戻しを定めるなら、支援会社が取消しの通知を受けたときに、紹介者へ知らせる義務も置いておくのが公平です。
報酬条項を点検するときの着眼点
- 名目報酬の名目が「紹介料」であっても、条文の別の箇所に「書類の作成に係る費用」「申請事務の対価」といった言葉があると、報酬の趣旨を疑われる。
- 決定権報酬表にない補助金の額、報酬表の変更、報酬明細の内容のいずれかを、一方の判断だけで決められる設計になっていないか。
- 異議報酬明細に異議を述べる期間が短すぎないか。期間内に異議がなかったことをもって、すべて同意したものとみなされる設計か。
- 解除の期限解除の理由が生じてから一定期間内でなければ解除できない、という期限が、実際に違反を知る前に過ぎてしまわないか。
- 遅延支払が遅れたときの遅延損害金が定められているか。定められていなければ、法定利率によることになる。
直接取引の禁止と違約金:金額の根拠を持てる形に
紹介パートナー契約では、紹介した顧客と紹介者の側が直接契約し、支援会社を通さない(中抜き)ことを防ぐ条項が置かれるのが通常です。補助金の分野では、顧客と紹介者が、すでに別の取引関係にあることも多く、直接取引の禁止の範囲が広すぎると、紹介者の本来の事業まで縛ってしまいます。
- 禁止の対象を、紹介した顧客に対する「同種の申請支援サービス」の提供に限る。紹介者の本来の業務(経営の助言など)全般を止める書き方にしない。
- 期間を、契約期間中と、終了後の一定期間に限る。
- 支援会社の営業秘密や顧客情報を使った場合に限る、という書き方もある。
- 禁止に違反した場合の効果として、報酬の不支給、解除、違約金のどれを置くかを決める。
違約金についても整理します。違約金を「報酬額の数倍」とする書き方がありますが、民法は違約金を賠償額の予定と推定します(民法420条3項)。賠償額の予定をしたときは、その額が契約の目的に照らして過大であれば、その部分は公序良俗に反して無効になり得ます(民法90条)。「数倍」が妥当かどうかは、支援会社が失う利益や、取引の継続による損害の大きさなどを踏まえて判断することになり、倍率が高ければ高いほど、根拠を説明できる必要があります。実際の損害の賠償も重ねて請求できる、という書き方にすると、予定と推定されるはずの違約金が、最低保証額のようになり、いっそう争いが生じやすくなります。
直接取引の違約金(一般的な例)
違約金の額
違約金を、失われた報酬を基準にした額にし、予定であることを明示して、二重の請求を避けています。額の根拠を説明しやすく、過大と評価される危険も減ります。
対象の限定
紹介した顧客と、情報の利用という限定を付けて、紹介者の事業全般の制限にならないようにしています。
紹介者の営業と顧客情報:採択の断定と、同意の取得
補助金の営業では、採択や交付決定を保証するような説明が、顧客の誤解を生みやすい点に注意が必要です。採択は、実施機関の審査で決まり、申請を支援する側が約束できるものではありません。「必ず通る」「採択率が高い」といった説明が、顧客の契約の判断を誤らせたと評価されれば、紹介者の説明が支援会社の責任として跳ね返ります。紹介者や代理店の営業が、事業者の責任として扱われる場面は代理店・紹介者の営業と消費者向けのルールで整理していますので、そちらもあわせて確認してください。
契約書では、次のように手当てします。
- 採択・交付決定・交付額を保証し、または断定する説明を禁止する(先の条文例の第4項)。
- 紹介者が使う営業資料や案内文は、支援会社が事前に確認したものに限る。
- 「補助金が出るまで費用は一切かからない」といった説明をするときは、成功時の報酬の有無や、解約時に費用がかかるかどうかなど、条件を併せて説明させる。
- 顧客情報を支援会社へ渡すときは、顧客本人から、第三者に提供することの同意を得ていることを、紹介者の保証として書く。個人情報保護法の同意が必要な情報が含まれるときは、同意の取り方も定めておく。
顧客情報の提供は、紹介パートナー契約の入口です。紹介者が、顧客の承諾を得ないまま、名刺の情報や取引先の一覧を支援会社へ渡してしまうと、あとで顧客との信頼関係が損なわれるだけでなく、個人情報の取扱いの問題にもなります。契約書に「同意を得ている旨の保証」を書くのは、紹介者に確認を促す意味があります。
紹介者に確認しておきたい問い
顧客に、支援会社を紹介することと、顧客情報を渡すことを、先に伝えているか。
顧客が知らないまま情報が渡ると、支援会社の最初の連絡が、顧客にとって予告のない連絡になり、紹介者への信頼が損なわれます。
紹介者が用意している案内文や広告の文言に、採択や交付決定を断定する表現はないか。
表現の確認は、契約を結ぶ前にしておきます。契約後は、案内文を事前に確認する仕組みを置きます。
紹介者は、複数の支援会社と契約していないか。
複数の契約を認めるなら、同じ顧客を複数の会社へ紹介した場合の帰属を決めておきます(紹介の帰属は、紹介代理店契約書のページを参照)。
契約の終わらせ方:終了後の報酬と、書類作成への関与が見つかったとき
紹介パートナー契約が終了するとき、決めておくべき点が二つあります。第一は、終了の時点で、まだ交付決定が出ていない案件の報酬です。契約終了前に紹介した顧客が、終了後に交付決定を受けた場合に、紹介者に報酬を払うのかを決めておきます。補助金は、申請から交付決定まで数か月かかることも多く、終了の時点で多くの案件が途中にあるのが普通です。終了後の報酬の一般論は契約の終わらせ方で扱っています。補助金に固有の点としては、紹介者の違反(書類作成への関与など)が原因で契約を解除した場合に、終了後の報酬を払わない設計にするかどうか、が挙げられます。
第二は、紹介者が書類作成に関与していたことが後から分かった場合の扱いです。このとき、契約の解除、すでに払った報酬の返還、顧客への説明の協力、といった条項が必要になります。解除の条項に「書類作成への関与」を明示的な解除事由として置いておけば、催告なしに解除できる、という整理にもできます(解除の一般の定めは民法541条・542条)。
書類作成への関与があったときの定め(条文例)
1甲は、乙が第○条第3項の規定に違反したことを知ったときは、催告をすることなく、本契約を解除することができる。
2前項により本契約が解除されたときは、甲は、解除の時点で交付決定に至っていない案件について、報酬の支払義務を負わない。
3乙は、第1項の事実が生じたときは、速やかに甲に事情を報告し、顧客への説明その他の甲の対応に協力する。
解除の事由を書類作成への関与に限って明示し、報酬への影響も併せて書いています。
よくあるご質問
補助金の紹介だけをして報酬を受け取る場合、行政書士法19条に触れますか。
紹介そのものが、直ちに書類の作成に当たるわけではありません。19条が制限しているのは、他人の依頼を受け、名目を問わず報酬を得て、業として、官公署に提出する書類などを作成することです。紹介者が見込み客を引き合わせるだけで、書類づくりに関与しないなら、書類作成の問題は生じにくい構造です。ただし、実際に書類の下書きや入力の代行に関わったか、報酬が書類作成の対価に当たると読まれないかは、事実で判断されます。契約書では、紹介者の業務を情報提供と連絡の整備に限り、書類作成への関与を禁止し、運用を確かめる報告の仕組みを置きます。
令和7年の改正で、行政書士法19条はどう変わったのですか。
現行の19条1項は、報酬を得る場面を「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」と定めています。名目を問わない、という文言が、条文に明記されたことが重要です。報酬の名目を、コンサルティング料やシステム利用料に変えても、書類作成の対価という実質があれば、名目だけでは適用を免れないという趣旨です。個々の事案で該当するかどうかは、書類の作成への関与の程度と、報酬の実質で決まります。
報酬の発生条件を「交付決定」にするとき、定義に何を書けばよいですか。
誰が受けたか(顧客本人か、グループ会社か)、何の交付決定か(支援を受けた申請に係るものか、別紙記載の補助金か)、どの時点か(通知の受領日か通知の日付か)、誰がどう確かめるか、の四点です。あわせて、交付額が申請額より減額されて決定されたときに、報酬が連動して減るのかも決めておきます。報酬表にない補助金の報酬を「一方の判断で定める」とするだけだと、額も払うかどうかも不確定になるため、双方の同意で定める形にするのが無難です。
交付決定が取り消されたとき、すでに払った紹介報酬は返してもらえますか。
契約に書いてあれば、書いてあるとおりです。書かれていなければ、報酬は交付決定を条件に発生しており、その条件は満たされていたので、当然に戻すことにはなりません。国の補助金では、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律17条・18条に、交付決定の取消しと返還命令の定めがありますが、これは国と補助事業者の関係の規定で、支援会社と紹介者の間の報酬の戻しは契約で決めます。戻さない、全額戻す、取消しの原因で分ける、のどれにするかを、事前に決めておきます。
直接取引を禁止する条項で、違約金を報酬の数倍にするのは有効ですか。
「数倍」と定めたというだけで有効か無効かが決まるわけではありません。違約金は賠償額の予定と推定され(民法420条3項)、額が過大で、実際に生じる損害に比べて不相当なときは、その部分が公序良俗に反して無効になる余地があります(民法90条)。倍率を高く設定するなら、支援会社が失う利益や、取引の継続による損害の大きさなどから、額の根拠を説明できるようにしておきます。失われた報酬に相当する額を違約金とし、予定であることを書く形が、争いになりにくい書き方です。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、取引の実態や当事者の立場によって変わることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索 / 公正取引委員会 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 特許庁