販売店契約書(特約店契約書):再販売型の個別売買・価格・責任

販売店型では、取引のたびに成立する個別の売買の共通ルールを、基本契約に書いておきます。

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販売店契約で価格に触れなくても、商標の契約で廉価販売を禁じれば、売値に影響する定めになります。

このページの要点

  • 個別契約は、発注書と承諾で成立させ、本人が断れる場合と単価の決め方を書く。
  • 販売店からさらに他の業者に卸すことは、申請書による事前の承諾制にでき、断る・撤回する基準も書く。
  • 契約不適合は、受領後の検査と通知の期限、本人の対応、責任の上限を決める(商人間の売買は商法526条)。
  • 売値は販売店が決めるのが原則。推奨価格にとどめ、再販売価格の拘束に当たらない書き方にする。

結論:販売店型では「個別売買の成立」と「再販売の範囲」を基本契約に書く

販売店契約(特約店契約)は、販売店が本人から商品を買い取り、自分の名前で、自分の値段でお客様に売る契約です。お客様に対する売主は販売店で、在庫と代金の回収のリスクも販売店が負います。本人と販売店の間では、取引のたびに売買契約(個別契約)が成立し、販売店契約はその共通のルールを定める基本契約になります。

事務所の資料で物品の販売店契約として作ったものは、食品ブランドの保有者の契約が中心で、ほかに、クラウドサービスやソフトの再販、作家の作品の販売窓口、役務の再販の例があります。これらから、販売店型の基本契約で決めておくことを並べると、次のとおりです。

  1. 個別契約の成立:発注の方法、承諾の方法、本人が断れる場合、単価の決め方。
  2. 支払と出荷:前払いか後払いか、決済の方法、出荷の条件、発注の取消し・変更。
  3. 再販売の範囲:販売店自身の販売に限るか、さらに他の業者への卸売を認めるか。
  4. 品質と不適合:受け取ったときの検査、通知の期限、本人の対応、責任の上限。
  5. 価格:販売店が自由に決めるのか、推奨価格を示すのか。
  6. 終了時:在庫・販促物・商標の表示の扱い。

名前が「代理店契約」でも、条文で個別の売買を定めていれば販売店型として働くことは、代理店契約書の種類で説明しました。

個別売買の成立・単価・支払・取消し

食品ブランドの保有者が取引先に商品を売ってもらう契約では、個別の売買を次のように組んでいます。

個別契約の条の構成(食品ブランドの販売店)

1本商品の単価は、発注のつど本人が提示する。本人は、市況・為替の変動その他の事情により、単価を改定することができる。

2個別契約は、販売店が本人所定の発注書により発注し、本人がこれを承諾したときに成立する。

3本人は、在庫、納期、販売店の信用状態その他の事情を考慮し、発注の全部又は一部を承諾しないことができる。

4販売店が発注を取り消し、又は変更しようとするときは、直ちに本人に通知して承諾を得なければならない。本人が製造その他の準備に着手した後は、販売店は、そのために生じた実費その他の合理的な費用を負担する。

条文の構成を説明するための要約です。単価を発注のつど示す方式は、価格の変動が大きい商品に向いています。

食品ブランドの販売店:支払と取消しの改訂

支払と出荷

当初の案前払いで、入金を確認してから出荷する。遅延損害金は年14.6%。
改訂後クレジットカードで払い、決済を確認してから出荷する。遅延損害金の項は削り、カード会社との決済の契約に基づいて本人に損害が出たときは販売店が補う。

決済の方法を変えると、遅延の考え方も変わります。カード決済の取消しなどで本人に生じる損害を、誰が負うかを書いています。

発注の取消し・変更

当初の案本人の書面の同意が必要。着手後は実費を負担する。
改訂後販売店は直ちに通知して本人の承諾を得る。着手後は実費その他の合理的な費用を負担する。

取消しの手続を早くし、負担する費用の範囲を実費に限らない形にしています。

販売の実績の報告

当初の案「定期的に」報告する。
改訂後改訂の途中では「各四半期の末日から10営業日以内に、書面又は電磁的方法で」と具体化し、最終的には四半期ごとの報告の形にした。

報告の頻度と期限は、本人がどこまで販売の状況を把握したいかで決めます。

個別契約の成立の時点をはっきりさせておくと、在庫が足りないときや販売店の支払が滞っているときに、本人が出荷を断れる根拠になります。反対に、販売店の側から見れば、承諾の期限(発注から何日以内に承諾するか、承諾がなければどうなるか)を決めておかないと、仕入の予定が立ちません。どちらの側で作るかで、承諾の期限を置くかどうかが変わります。

再販売先の承諾制と、既存の取引先の除外

同じ契約では、販売の権利を非独占とし、販売店自身の販売に限りました。第三者への再販売(さらに別の業者に卸すこと)・再委託・代理販売は、所定の再販売申請書による事前の承諾制とし、申請書には再販売先の商号・業種・販路・年間の見込み数量・信用の情報を書かせます。本人は理由を示さずに承諾を断ることができ、ブランドを傷つけるおそれがあれば承諾を撤回できるとしています。

あわせて、本人が既に商談中・取引中の事業者は販売店の販売の対象から外し、その一覧を別紙で示すとしました。販売店が本人の既存の取引先に売り込むと、本人と販売店が同じお客様を取り合うことになるからです。紹介契約の既存顧客の除外(紹介代理店契約書・業務提携契約書)と同じ発想ですが、販売店型では、除外した取引先には本人が直接売り続けることが前提になります。

再販売先の承諾制を置くときの確認

  • 申請書に書かせる項目(再販売先の商号・業種・販路・見込み数量・信用の情報)を決める。
  • 承諾を断る場合と、承諾を撤回する場合の基準を書く(理由を示さずに断れる、ブランドを傷つけるおそれがあれば撤回できる、など)。
  • 承諾した再販売先が商標や販促物を使う場合の手続を、商標の使用許諾の側でも決めておく。
  • 既存の取引先を除外するなら、一覧を別紙にし、追加・削除の手続も決める。
  • 契約が終わったときに、再販売先への通知と在庫の扱いをどうするかを決める。

契約不適合の短い通知期限と、責任の上限

販売店型では、本人は売主として、引き渡した商品が種類・品質・数量について契約の内容に適合しないとき(契約不適合)の責任を負います。商人どうしの売買では、買主は受け取ったら遅滞なく検査し、不適合を見つけたら直ちに売主に通知しなければ、追完・代金の減額・損害賠償・解除を請求できなくなります。種類・品質の不適合で直ちに見つけられないものも、受領から6か月以内に見つけて直ちに通知しなければ同じく請求できず、6か月を過ぎてから見つけた不適合は請求できません(商法526条1項・2項)。ただし、売主が不適合を知っていた場合には、この制限は適用されません(同条3項)。契約で通知の期限を定めるときも、この点を踏まえて、売主が知りながら引き渡した場合の扱いを考えておきます。

食品ブランドの販売店の契約では、この通知をさらに具体的にし、納品の日から7日以内に通知しなければ権利を失うとしました。本人の対応は、代わりの品・再加工・返金のどれかで、どれにするかは本人が選びます。責任の上限は代金の相当額とし、販売店が転売や加工をした後に分かった部分は責任を負わないとしています。食品のように時間がたつと状態が変わる商品では、短い期限で検査と通知をさせることに合理性があります。一方、販売店の側から見れば、転売の後に分かった不適合をすべて免責にされると、お客様からの苦情を自分だけで負うことになるので、隠れた不適合の扱いを交渉することになります。

価格の扱い:自由・推奨価格・価格の協調・廉価販売の禁止

販売店は自分の商品として売るので、売値は販売店が決めるのが原則です。本人が販売店の売値を決めて守らせること(再販売価格の拘束)は、正当な理由がない限り、独占禁止法の不公正な取引方法に当たります(同法2条9項4号・19条)。事務所の資料では、価格に関わる書き方として次のものがあります。

価格に関わる書き方の比較
書き方内容事務所の資料での例
価格は自由再販する側が自由に価格を決める海外のクラウドサービスの独占再販(レビューでは、著しい安売りやブランドの維持の基準がないこと、大幅な割引がロイヤリティの回避と評価されるかが分からないことを指摘)
推奨価格にとどめる施工の価格は加盟店が自由に決め、本部は参考価格・推奨価格を示すだけで拘束しない。ただし過度な廉売や誤認を招く価格の表示は、ブランドを傷つけるものとして是正を求める施工型の商材のフランチャイズ
本人と窓口の価格の協調作品ごとの設定価格を協議して管理表に記録し、窓口は市場の価値を大きく損なわない範囲で実売の価格を決められる。作家が直販するときは事前に通知し、設定価格と整合させる作家の作品の販売窓口(取次販売)
商標の側での廉価販売の禁止販売店契約には価格の拘束はないが、商標の使用許諾契約の禁止行為に「ブランドの価値を傷つけるような廉価販売」を入れている食品ブランドの販売店と商標の使用許諾

作家の作品の販売窓口の案件では、ご説明書で、再販売価格の拘束を原則として違法とした最高裁の判例(和光堂事件・最判昭和50年7月10日)を踏まえ、この契約は買い取った商品の転売価格を拘束するものではなく、取次販売で売る作品について創作者本人と販売窓口が価格を協調するものであるが、それでも一方が他方に価格を指定する書き方は避けた、と説明しています。作家の取り分は実売の価格(税抜)の一定割合とし、設定価格を記録する管理表(共有のスプレッドシート)を別紙で特定しました。

食品ブランドの例のように、販売店契約では価格に触れず、商標の使用許諾契約の側で廉価販売を禁じる形は、実質的には販売店の売値に影響を与える定めです。再販売価格の拘束との関係は、その禁止がどの程度の値引きまで及ぶのか、ブランドの保護として説明できるのかを含めて、検討が要る点として扱います(商標ライセンス契約書)。

取次販売の代金の預り方と配分

作家の作品の販売窓口の契約は、窓口が作品を買い取らずに自分の名前で売る取次販売なので、販売店型とは代金の流れが違います。窓口は購入者から代金を受け取り、作家の取り分を後で渡します。この契約では、受け取った代金の使い道と清算の時期を、次のように決めました。

  • 収益の充当の順序:作品の販売などで得た収益は、窓口が負担したプロモーションの費用の総額に達するまで先にその費用に充て(費用の発生と収益の前後は問わない)、その後を作家と窓口で1対1に分けるとしました。
  • 支払の原資:作家への支払の原資は収益に限り、契約が終わった時点で費用を回収しきれていなくても、残りを作家に請求しないとしました。
  • 清算の時点:毎月の報告・支払の義務は置かず、6か月が経過した時点と契約の終了の時点の2回で清算することを義務づけました。
  • 原画と複製:原画と版は作家が保管し、複製は管理表に記録した範囲に限るとしました。
  • 窓口が関わらない案件:作家が窓口を通さずに受ける案件(窓口が関与しない案件)の切り分けを書き、広告では、ステマ告示に沿って事業者の表示であることを明示するとしました。

取次販売では、窓口が預かる代金は最終的には作家に渡すべきお金を含むので、いつ、何を差し引いて、いくら渡すのかを契約で決めておかないと、窓口の手元に作家のお金が残り続けます。費用を先に回収する設計にするなら、費用の範囲と上限、回収しきれなかった費用の扱いも書いておきます。

ソフトウェア・役務の再販と、ホワイトラベル

物品ではなく、ソフトやクラウドサービスを再販する場合は、売買ではなく、利用の権利をお客様に渡すことになります。他社のソフトを自社の名義で販売し、売上の一定割合をポイントで開発者に還元する販売代行の契約では、販売する側が自己の名義と責任で販売し、エンドユーザーとの契約の主体はすべて販売する側としました。提供期間・ポイント数・仕様・利用の範囲などの提供条件は販売する側が決めて開発者に事前に通知し、開発者は合理的な異議がない限り同意するとしています。開発者の知的財産権は開発者に残し(翻案などの権利を含む)、販売する側に複製・改変・リバースエンジニアリングなどを禁じています。ソフトを自社名義で再販する場合は、エンドユーザーに使わせる権限(再許諾の権限)を権利者から得ていることを、契約で明確にしておく必要があります(ライセンス契約書)。

海外のクラウドサービスのホワイトラベル再販の原案に対する指摘(再販する側からの依頼)

  • 責任の集中提供する側の表示は不要なので、お客様から見た提供の主体は再販する側だけになる。一方で、提供する側の責任には上限(直近12か月のロイヤリティ)がある。
  • 上限の例外個人情報の漏えい・秘密の漏えい・知的財産の侵害を上限の例外にしていない。第三者からの請求の補償の条がない(最も重大な欠落)。
  • 回収のリスクお客様の未払い・途中解約による返金・貸倒れのときに、ロイヤリティの支払義務があるかが分からない。遅延損害金・不実の報告への対応・監査の結果との差額の精算もない。
  • 費用と料率クラウドや外部APIの費用は再販する側の負担なのに、ロイヤリティの料率は固定。利用が増えるほど再販する側の利益が減る作りになり得る。
  • 監査監査は提供する側の権利だけで、頻度・事前の通知・費用の負担がない。再販する側から提供する側の技術の運用を確かめる権利もない。
  • 再委託販売の活動の再委託は可、販売の権利の再許諾は不可、という区別が抽象的で、代理店の方式やパートナーによる販売が許されるかが分からない。

ホワイトラベルでは、お客様にとっての売主は再販する側だけなので、提供する側の不具合も、まず再販する側が責任を問われます。再販する側で契約を見るときは、提供する側の責任の上限が、お客様に負う責任とかけ離れていないか、第三者からの請求の補償があるかを、最初に確かめます。

この報告書は、再販するサービスがAIを使うものであることから、AIに特有の論点も挙げています。誤った回答についての保証の否認をどう書くか、生成されたものが第三者の権利を侵害しないことの保証と補償、提供する側が使っている外部のAPIが止まったときの免責と代わりの措置、個人情報の取扱いの委託の関係と国外への移転、サービスの水準の合意(SLA)です。お客様に対しては再販する側が提供の主体になるので、これらの点を提供する側との契約で決めておかないと、お客様との契約で約束したことを、提供する側に求められなくなります。

ソフトの販売代行の契約では、報酬は、エンドユーザーからの売上(税抜)の一定割合を、入金を確認し、キャンセル・返金・未収がないと確定した分(確定売上)についてだけポイントで還元し、キャンセルなどが出た分は次の月以降の報酬から差し引き、明細を交付するとしました。交付の期限は入金を確認した月の翌月末です。再販の契約では、こうした報酬の流れに加えて、独占にするか、競合する製品を扱えるか、最低の販売数量を置くかも、扱う製品と販売の体制に応じて決めます。とくに、契約が終わったときに既に販売したエンドユーザーが使い続けられるのか、サポートは誰がするのかを決めておかないと、終了のときにお客様が取り残されます。

役務の再販でも、エンドクライアントからの入金の有無にかかわらず、窓口の代理店が制作会社に払う作りにした例を代理店契約書の種類で紹介しました。再販する側が回収のリスクを負う、という点は物品の販売店と同じです。

終了時の在庫と表示

食品ブランドの販売店の契約では、終了時の未販売の在庫の扱い、商標の使用の停止、再販売先への通知は協議で決め、解除の後は本人の指示に従って在庫などを処理するとしています。販売店契約と商標の使用許諾契約を別々に作る場合は、終了時の在庫の扱い(売り切ってよいのか、本人が買い戻すのか、廃棄するのか)と商標の撤去の期限を、両方の契約でそろえておく必要があります。在庫を売り切る期間を認めるなら、その間は商標の表示を続けてよいことも書いておきます。

施工型の商材のフランチャイズでは、加盟店が最初に買うスターターキットの価格を、当初の案の「予定価格(最終的には本部の価格表で決める)」から、改訂で確定した額に改めました。最初の取引の価格が後で動く書き方は、加盟の判断の前提を揺るがせます。同じ契約では、スターターキットの所有権は代金の完済の時に移るとし、無断の転売を禁じ、初期の不良は交換・修理で対応するとしています。本部が加盟店に物品を供給する場面でも、所有権の移る時期と転売の制限は、販売店契約と同じように書いておきます(フランチャイズ契約書)。

よくあるご質問

販売店契約書(特約店契約書)と販売代理店契約書の違いは何ですか?

販売店契約は、販売店が本人から商品を買い取って自分の名前で売る再販売の契約です。販売代理店契約は、代理店が本人の名で契約し、効果が本人に生じる形が基本です。販売店型では、売値は販売店が決め、在庫と代金の回収のリスクも販売店が負います。

メーカーが販売店の売値を決めることはできますか?

販売店の売値を決めて守らせることは、正当な理由がない限り、独占禁止法の不公正な取引方法(再販売価格の拘束)に当たります。参考価格・推奨価格を示すにとどめ、拘束しないと書く例があります。

販売店契約で、契約不適合の通知期限を短くできますか?

事業者どうしの契約では、契約で定めることができます。商人間の売買では、買主は受け取ったら遅滞なく検査し、不適合を見つけたら直ちに通知する必要があります(商法526条)。食品のような商品では、納品から数日以内の通知を求める例があります。

販売店がさらに他の業者に卸すことを制限できますか?

契約で、販売店自身の販売に限り、他の業者への再販売は事前の承諾制にすることができます。申請書の項目、承諾を断る場合・撤回する場合の基準を決めておくと運用しやすくなります。

ソフトやクラウドサービスを再販するとき、物品の販売店契約と何が違いますか?

物品のように所有権を渡すのではなく、利用の権利をお客様に渡すことになります。お客様に使わせる権限(再許諾の権限)を権利者から得ていること、提供する側の不具合の責任の分担、第三者からの請求の補償を決めておく必要があります。

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