このページの要点
- 労働者かどうかは、題名ではなく、指揮監督・拘束・報酬の性質などの実態で総合的に判断される。
- 固定報酬や最低保証、稼働時間の管理、他社の仕事の禁止は、雇用に近づく事情になる。
- 労働者でない個人の代理店には、明示・支払期日・手数料の戻し・買取の要請・解約予告などでフリーランス法が及ぶ。
- 条文は、法令遵守に関する要請に絞った指示、成果に応じた報酬、補助者の使用、短い競業避止の形に直す。
結論:契約書に「業務委託」と書いても、労働者かどうかは働き方の実態で決まります
個人の代理店や営業パートナーに、成約に応じた報酬で営業を任せる契約は、「代理店契約」「業務委託契約」「営業代行契約」などの題名で結ばれます。しかし、題名が何であっても、実際の働き方が雇われて働く形に近ければ、労働基準法などの労働関係の法律が適用されます。反対に、独立した事業者として働いているといえるときは、労働基準法ではなく、フリーランス法が問題になります。
考える順番は、次の2段階です。
- まず、その個人が労働基準法上の「労働者」に当たらないかを確かめます。
- 労働者に当たらないときは、フリーランス法(正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)の対象になるかを確かめ、守るべき項目を契約書と運用に反映します。
用語を補足します。労働基準法9条は、労働者を「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と定めています。「使用される」とは、他人の指揮監督の下で働くことをいいます(次の節で説明します)。フリーランス法は、従業員を使わない個人などの「特定受託事業者」に業務を委託する事業者に、取引条件の明示や支払期日などの義務を課す法律です。公正取引委員会のQ&Aは、発注事業者との関係で労働基準法等の「労働者」と認められる場合は、その相手は特定受託事業者に該当せず、労働基準法等の個別的労働関係法令が適用される、と整理しています。
契約書は、実態を整えるための設計図であり、実態と食い違えば題名は役に立ちません。
このページでは、代理店・営業パートナーの契約で雇用に近づく事情、近づけないための条文の直し方、労働者でない場合にフリーランス法が代理店契約のどこに働くか、ヒヤリングで確認する事項を説明します。紹介の帰属や中抜きの禁止は紹介代理店契約書・業務提携契約書、手数料の支払期日は手数料②:発生時期と返金時の戻しで扱います。代理店契約の型の選び方は代理店契約書の種類と見分け方を参照してください。
労働者かどうかは、どんな事情を見て判断されるのですか
契約の題名ではなく、実際の働き方を総合して判断されます。国が示している整理では、中心になるのは「使用従属性」で、次の2点を見ます。①他人の指揮監督の下で労務を提供しているか、②報酬が、その指揮監督の下での労働の対価として支払われているか、です。
①の指揮監督については、一般に次のような事情が見られます。
- 仕事の依頼や業務従事の指示を断れるか(諾否の自由)。断れないことは、指揮監督を推認させる事情になります。
- 業務の進め方や順序について、具体的な指示や管理があるか。
- 勤務の時間や場所が決められ、管理されているか(拘束性)。
- 本人に代わって他の人が仕事をすることが認められているか(代替性)。認められていれば、指揮監督を否定する方向の事情になります。
②の報酬については、時間や日数に応じて支払われる、欠勤すると減る、といった形は、労務の対価らしさを強めます。成約という結果に応じた報酬は、それだけで独立を意味するわけではありませんが、時間と結びつく報酬とは性格が違います。
これらで判断がつきにくいときに、補強として見られるのが「事業者性」と「専属性」です。事業者性は、機器や費用を自分で負担しているか、同じ仕事をする従業員と比べて報酬が著しく高いか、といった点です。専属性は、他社の仕事を実際に受けられる状態か、という点です。他社の仕事を制度上禁じられている、または時間的余裕がなく事実上できない場合は、労働者性を補強する事情になります。
一つの事情だけで結論が出るわけではありません。事情が重なるほど、実態に即した評価がされます。代理店・営業パートナーの働き方に当てはめると、次のようになります。
| 見る点 | 雇用に近づく運用 | 独立に近づく運用 |
|---|---|---|
| 案件の諾否 | 割り当てられた商談や訪問先を断れない | 受ける案件や訪問先を自分で選べ、断っても不利益がない |
| 進め方 | 台本どおりの話し方、訪問の順序や日々の行動計画まで指示される | 守るべき法令と表示のルールだけが示され、方法は任される |
| 時間・場所 | 出社時間や滞在時間が決まり、遅刻や欠勤が管理される | 稼働日と時間帯を自分で決め、出退勤の管理がない |
| 報酬の決まり方 | 日給・時給・月額固定で、稼働に応じて払われる | 成約や売上に応じた報酬で、成果がなければ発生しない |
| 機器・費用 | 端末も通信費も交通費も、すべて委託元が持つ | 自前の端末や通信環境を使い、営業費用を自分で負担する |
| 代替性 | 本人以外が行うことを一切認めない | 手続を踏めば補助者を使える |
| 他社の仕事 | 同種の仕事を禁止され、実際にも時間がない | 他社の仕事を受けることができる |
| 組織への組込み | 社員と同じ名刺・肩書・メールアドレスを使い、社内会議への出席が義務 | 業務委託の立場を表示し、会議への出席は任意 |
右列の事情がそろっていれば独立した事業者と評価されやすくなりますが、一つひとつの有無で決まるわけではありません。
契約書に「雇用ではない」と書くこと自体には、実態を決める力はありません。それでも書く意味は、委託元が指示をしない範囲、代理店が自分で決める範囲、報酬が成果に応じることを、双方が最初に確認し、記録を残す点にあります。
代理店・営業パートナーでは、どの場面で雇用に近づきやすいのですか
「報酬が歩合だから業務委託だ」と考えられがちですが、実務で目立つのは、歩合かどうかよりも、稼働の管理と、固定的な支払が混ざっている点です。典型的な場面を順に見ます。
稼働時間と報告の管理
販売先の営業時間に合わせた時間帯を「目安とする」と書く例や、日報・行動予定の提出、定例会議への出席を義務づける例があります。商談の相手の都合で時間が決まることと、委託元が時間を管理することは別です。後者は拘束性を強めます。週に1回程度の報告であっても、目的が成約の確認や報酬の算定にあるのか、行動の管理にあるのかで、見え方が変わります。報告を求めるなら、報告の目的を報酬の算定と成約の確認に限り、「指揮命令や労務管理を目的としない」ことを書いておきます。
固定報酬と最低保証
成約報酬に加えて月額の固定報酬を置く例、月の報酬が一定額に満たないときに差額を補う「最低保証」を置く例があります。固定の部分が、成果ではなく稼働そのものの対価として機能すると、労務の対償らしさが強まります。「任意の支援金」という名前にしても、毎月ほぼ定額で支払う運用であれば、実質は変わりません。固定の部分を置く場合は、その性質(たとえば、営業資料の作成や物件の下調べなど、成果とは別に依頼する個別の業務の対価)を条文で分けて書きます。
計算例:固定報酬を、拘束時間で割ってみる
固定報酬が、実態として拘束時間に対する支払になっていないかは、時間あたりの金額に直すと分かりやすくなります。次の例は、考え方を示すための仮定の数字です。
- 例A:月額の固定報酬が12万円で、週5日・1日8時間、月20日の稼働を求められる場合。12万円 ÷(8時間 × 20日 = 160時間)= 1時間あたり750円です。稼働時間が決められ、時間に対応する報酬になっているため、労働者性が強く疑われます。
- 例B:固定報酬はなく、成約1件につき3万円で、ある月に2件成約した場合。報酬は6万円です。稼働日も時間も本人が決めており、時間と報酬が連動していません。
労働者に当たると評価された場合、賃金の最低額を定める最低賃金法が適用されます。最低賃金額は地域ごとに定められており、これを下回る賃金を定める労働契約は、その部分が無効となり、最低賃金と同様の定めをしたものとみなされます(同法4条2項)。例Aのような固定報酬が、拘束時間との関係で問題になるのはこのためです。
専属・競業避止・違約金
契約期間中に、委託元の営業秘密や顧客情報を使って競合する行為を禁じることは、独立した事業者との契約でも通常のことです。問題になるのは、他社の仕事そのものを禁じる書き方、契約が終わった後も長期間・広い範囲で同種の仕事を禁じる書き方、違反したときの高額の固定違約金を置く書き方です。他社の仕事を受けられないことは、専属性を強める事情になります。また、終了後の制限は、代償がなく範囲も広ければ、公序良俗(民法90条)に反して無効と判断される可能性があり、違約金は賠償額の予定と推定されます(同法420条3項)。
販売先の店舗などに常駐して働く場合
商品の販売先の店舗に入って、その店舗の営業時間に合わせ、店舗側の指示を受けて働く形は、委託元だけでなく店舗の指揮命令も加わるため、独立性の評価がさらに厳しくなります。業務委託の名目で人を他社の現場に出し、その他社が指示をする形は、労働者派遣や労働者供給に当たらないかという別の問題も生じます。
研修・リーダー・名刺と肩書
営業の方法を身につけるための研修は、法令遵守や商品説明の正確さを伝える範囲であれば問題になりにくい一方、出席の義務づけ、評価や懲戒に近い運用、受講料の負担を伴うと、組織への組込みや強制購入の問題を生みます。リーダーとして他の営業員の指導や同行を担う代理店が、その営業員に報酬を支払う場合は、再委託や多段階の問題として別に検討が必要です(二次代理店・再委託と連鎖販売取引の境界)。社員と同じ名刺や肩書を使わせる場合も、委託元の組織の一員に見えやすくなります。
労働者でないとき、フリーランス法はどこまで及びますか
個人の代理店が労働者でないとき、従業員を使っていなければ、その個人は「特定受託事業者」に当たり、委託する側にフリーランス法上の義務が生じます。何をどこまで守るかは、委託する側の規模と、契約の期間で変わります。
まず、対象の線引きです。「特定受託事業者」は、業務委託の相手方である事業者で、個人であって従業員を使用しないもの、または、法人であって代表者以外に役員がなく従業員も使用しないもの(いわゆる一人法人)です(同法2条1項)。代理店が従業員や他の役員を持てば、特定受託事業者には当たりません。委託する側は、取引条件の明示(3条)はすべての業務委託事業者が守る必要がありますが、支払期日や禁止行為などの多くは、個人であって従業員を使用するもの、または法人であって2人以上の役員があるか従業員を使用するもの(特定業務委託事業者。同法2条6項)が負う義務です。
| 規定 | 内容 | 代理店契約での場面 |
|---|---|---|
| 3条 | 業務委託をしたら直ちに、給付の内容、報酬の額、支払期日などを、書面又は電磁的方法で明示する(委託する側の従業員の有無を問わない) | 報酬表を契約書の別紙にする。報酬の変更は書面又は電磁的方法で通知する |
| 4条 | 報酬の支払期日は、役務の提供を受けた日から60日以内で、できる限り短く定める。月単位の締切は、公正取引委員会のQ&A(Q48)で「受領から2か月以内」として扱われる | 手数料の締め日と支払日、顧客の入金を待つ設計 |
| 5条1項 | 1か月以上の業務委託で、責めに帰すべき事由のない報酬の減額、著しく低い報酬の不当な設定、自己の指定する物や役務の強制購入・強制利用などを禁止する | 手数料の戻し、営業ツール・研修・商材の買取の要請 |
| 5条2項 | 自己のための金銭・役務の提供を要請すること、責めに帰すべき事由のない給付内容の変更ややり直しを、特定受託事業者の利益を不当に害する形ですることを禁止する | 協賛金やイベント参加費の要請、営業資料の度重なる作り直し |
| 12条 | 特定受託事業者の募集情報について、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしない。正確かつ最新の内容に保つ | 代理店・パートナーの募集広告や説明会の資料 |
| 13条 | 6か月以上の継続的な業務委託では、申出に応じた育児・介護との両立への配慮が義務。それ未満は努力義務 | 稼働の調整、会議や研修の日程 |
| 14条 | ハラスメントに関する相談対応の体制の整備その他の措置 | 同行営業、研修、チャットでの言動 |
| 16条 | 6か月以上の継続的な業務委託では、契約の解除や更新しないことを、少なくとも30日前までに予告する。理由の開示請求にも応じる | 自動更新の拒絶、中途解約、解除 |
5条1項の「1か月以上」は、更新により1か月以上継続することになる業務委託を含みます。
フリーランス法は、報酬を歩合にすることを禁じるものではなく、条件を明示し、期日までに払い、不当な押しつけをしないための枠組みです。ただし、この枠組みに従っているから労働者ではない、ということにはなりません。労働者性は、先に述べた実態で別に判断されます。
手数料の戻し、買取の要請、支払日、解約予告、募集広告は、どこを見直せばよいですか
代理店契約で実際に問題になりやすい場面を、フリーランス法の規定に当てはめて整理します。以下は、個人で従業員を使わない代理店が相手で、1か月以上続く委託を前提にした整理です。
手数料の戻し(返還)
成約後に顧客が解約したときに、支払済みの手数料を返してもらう条項は、代理店契約でよく見られます。1か月以上の業務委託では、特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに報酬の額を減ずることが禁じられています(フリーランス法5条1項2号)。顧客の解約が代理店の責任ではない場合に、手数料を戻させる条項は、この規定との関係を確かめる必要があります。戻す事由を、虚偽の説明、規約違反、不正な申込みなど、代理店の側の事情に絞ると整合を保ちやすくなります。発生時期と戻しの設計は手数料②:発生時期と返金時の戻しで詳しく説明しています。
営業ツール・商材・研修の買取の要請
営業の道具や商品、有料の研修を、代理店に購入させる契約があります。委託する側が自己の指定する物を強制して購入させ、または役務を強制して利用させることは、品質の均一化に必要な場合などの正当な理由がない限り禁じられます(5条1項5号)。「購入は任意」と書いても、購入しないと案件の配分や手数料率で不利になる運用であれば、強制と評価される余地があります。購入が必要なら、その理由と価格を明示し、購入を条件としない形を基本にします。
手数料の支払日
手数料の支払期日は、役務の提供を受けた日から60日以内で、できる限り短く定める必要があります(4条1項)。毎月末日締め・翌月末日払いのような月単位の制度は、「受領から2か月以内」として扱われます(Q48)。顧客から入金があって初めて手数料が確定する設計や、売上が確定した月の翌々月に払う設計が、この枠に収まるかは、役務の提供を受けた日がいつと評価されるかによって変わるため、個別に確かめます。算定の基礎は手数料①:算定の基礎と料率を参照してください。
契約の終了と更新しない通知
民法上、準委任のような委任の契約は、各当事者がいつでも解除でき(民法651条1項)、相手方に不利な時期の解除には損害賠償の問題が生じます(同条2項)。他方、フリーランス法は、6か月以上の継続的な業務委託について、委託する側が契約を解除する、または期間満了後に更新しない場合に、少なくとも30日前までの予告を求めています(16条1項)。自動更新の「更新しない」通知も含まれる点に注意します。終了時の精算や、終了後の手数料の扱いは代理店契約・業務提携契約・フランチャイズの終了を参照してください。
代理店・パートナーの募集広告
代理店やパートナーを募る広告や説明会の資料は、特定受託事業者の募集情報に当たりえます。業務の内容や報酬について、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならず、正確かつ最新の内容に保つ必要があります(12条)。「誰でも高収入」「未経験でも月○万円が可能」といった表現は、実際の達成者の割合や、必要な稼働時間・費用が示されていなければ、誤解を生じさせると見られるおそれがあります。紹介制度の規約は紹介制度の利用規約を参照してください。
二次代理店への再委託
代理店が、自分が受けた業務を個人の二次代理店に再委託するとき、その代理店は特定業務委託事業者として、フリーランス法の義務を負うことがあります。再委託である旨、元の委託者の名称、元の業務の対価の支払期日などを明示した場合は、二次代理店への報酬の支払期日は、元の支払期日から30日以内で、できる限り短く定めることになります(4条3項)。連鎖販売取引との境界は二次代理店・再委託と連鎖販売取引の境界、消費者への勧誘のルールは代理店の紹介者・営業と法規制で説明しています。
よくある失敗と直し方:雇用に近づく条項を、独立した事業者の条項に直す
営業を個人に任せる契約書には、次のような書き方が見られます。条文の直し方と、それが何を変えるのかを、対比で示します。
条項の直し方(一般的な例)
稼働の時間
委託元が時間を管理する形から、相手方の都合に合わせるだけの形に変わります。承諾の仕組みを置かないことが要点です。
指示
包括的な指示権を、法令遵守と表示に関する要請に絞ります。要請の方法を書面又は電磁的方法にして、記録も残します。
固定・最低保証
稼働に対する支払の性格を除きます。個別の業務を別建てにすることで、成果報酬との区別を明らかにします。
競業避止
他社の仕事を禁じる書き方をやめ、守りたい対象(営業秘密、特定の顧客)に絞ります。期間・範囲・対価の整合を取ります。
再委託・補助者
代替性を残しながら、情報管理の責任は代理店に負わせます。全面禁止は、本人にしかできない労務の提供に見えやすくなります。
報酬の変更
報酬の一方的な決定が、労働者性の事情にも、フリーランス法上の明示(3条)の問題にもなりえます。変更の時期と適用範囲を決めます。
契約書でよく見られる失敗
- 題名だけ業務委託「雇用ではない」と書きながら、日報、出退勤の記録、時間に応じた報酬の定めを残している。条文どうしが食い違い、確認の記録としても役に立たない。
- 雇用の言葉の混入「勤務」「在籍」「入退店」「欠勤」「退職」といった言葉が残っている。契約の性質の評価にも影響するため、「稼働」「契約期間中」「解約」に直す。
- 固定部分の名目替え最低保証を「任意の支援金」と呼び替えただけで、毎月ほぼ同額を払い続けている。名目ではなく運用が見られる。
- 明示がない手数料率や支払日を口頭やチャットでしか伝えず、書面又は電磁的方法での明示(3条)がない。
独立した事業者として任せるための条文例
次の条文例は、個人の代理店・営業パートナーと営業紹介の業務委託契約を結ぶときの考え方を示すために、新たに書き起こした例です。数字や期間の○は、取引の実態に合わせて決めます。
条文例①:契約の性質と業務の進め方
1本契約は、甲が乙に対し営業紹介業務(以下「本業務」という。)を委託し、乙がこれを受託する業務委託契約であり、雇用契約その他の労働契約ではない。
2乙は、独立した事業者として、自己の裁量と責任において本業務を遂行する。乙は、稼働する日、時間帯、場所、訪問先及び営業の方法を自ら決定する。
3甲は、乙に対し、法令の遵守、表示の正確さ、顧客情報の保護及び甲の信用の保持に関する事項に限り、書面又は電磁的方法により要請することができる。甲は、乙に対し、出退勤の管理及び日々の行動の報告を求めない。
4乙は、甲から提案された個別の案件を、理由を示すことなく断ることができる。甲は、断ったことを理由として不利益な取扱いをしない。
5乙は、甲の事前の承諾を得て、補助者を使用することができる。甲は、正当な理由なく承諾を拒まない。
この条文は、実態が伴って初めて意味を持ちます。第3項の「要請」の範囲を超える指示が日常的に行われるなら、条文と運用が食い違います。
条文例②:報酬と費用
1甲は乙に対し、乙の紹介により成約した契約ごとに、別紙の報酬表に定める報酬を支払う。報酬は成約の成果に応じて定めるものであり、乙の稼働時間又は稼働日数に応じて定めるものではない。
2甲は、乙に対し、報酬の最低額を保証しない。
3甲は、報酬の額、計算方法及び支払期日を、本契約及び別紙により乙に明示する。
4甲は、報酬表を変更しようとするときは、変更の○日前までに、書面又は電磁的方法により乙に通知する。変更は、変更後に成立した契約に適用する。乙が変更に同意しないときは、乙は第○条により本契約を解約することができる。
5乙は、本業務に用いる機器、通信環境及び移動に要する費用を自己の負担とする。ただし、甲が事前に書面又は電磁的方法で承認した費用は、実費を甲が負担する。
支払日の定めは、手数料の締め日と支払日を別紙に書き、フリーランス法4条の枠に収まるかを確かめます。
条文例③:競業、購入の要請、解約の予告
1乙は、契約期間中、甲の営業秘密及び顧客情報を用いて、甲の事業と競合する行為をしてはならない。本項は、乙が他社の業務を受けることを妨げない。
2乙は、契約終了後○か月間、別紙で特定した顧客に対し、甲と競合する商品の個別の勧誘をしてはならない。甲は、乙に対し、この制限の対価として、○円を支払う。
3甲は、乙に対し、営業ツール、商材又は研修を、購入又は受講の義務として要請しない。乙が任意に購入又は受講する場合は、その対価と内容を事前に書面又は電磁的方法で示す。
4甲又は乙は、○日前までに書面又は電磁的方法で通知して、本契約を解約することができる。
5甲は、本契約の期間が6か月以上となる場合において、本契約を解除し、又は期間満了後に更新しないときは、少なくとも30日前までに乙に予告する。ただし、フリーランス法その他の法令が予告を要しないと定める場合は、この限りでない。
第2項の対価は、制限の範囲や期間に見合う額かどうかも含めて決めます。第5項は、法令の定める例外を引用する形にしてあります。
ヒヤリングで確認すること
契約書を作る前に、働き方の実態と、相手方の規模を確認します。確認する理由も合わせて示します。
代理店・営業パートナーとの契約を作る前の問い
代理店になる人は、個人ですか、法人ですか。法人なら、代表者以外に役員や従業員はいますか。
特定受託事業者に当たるか(フリーランス法2条1項)が決まります。従業員を使う代理店は、対象から外れます。
委託する側は、従業員を使っていますか。法人なら、役員は何人いますか。
特定業務委託事業者(2条6項)に当たるかで、支払期日(4条)や禁止行為(5条)、募集情報の表示(12条)などの義務の有無が変わります。
代理店の一日の流れはどうなりますか。稼働する日と時間帯、場所は、誰がどう決めますか。
拘束性の有無を確かめます。販売先の営業時間に合わせる、会社に集合する、といった運用は、契約書を直しても残るためです。
日報、同行、会議、研修は、どの頻度で、何のために行いますか。出席しないとどうなりますか。
報告や研修の目的が、報酬の算定や法令遵守の確保にあるのか、行動の管理にあるのかを分けます。欠席の不利益は、指揮監督の判断に影響します。
報酬は、成約に応じた分だけですか。固定の報酬や最低保証、立替の精算は、ありますか。
固定の部分が稼働時間に結びついていないかを、計算例のように時間あたりに直して確かめます。
他社の仕事を同時にしている人はいますか。本業ですか、副業ですか。
専属性の程度を確かめます。他社の仕事を実際に受けられる状態かが、補強要素になります。
手数料の戻し、営業ツールや商材の購入、協賛金などの要請を予定していますか。
5条の禁止行為と整合するかを確かめます。戻す事由や購入の任意性を、条文で絞ります。
代理店やパートナーを募る広告、説明会の資料には、どんな表現を使いますか。
12条の募集情報の表示に当たりえます。収入の例を示す場合は、前提となる稼働時間や費用、達成者の割合を示せるかを確かめます。
契約の期間は何か月ですか。自動更新にしますか。終了させるときの通知は、どう運用しますか。
6か月以上の継続的な業務委託には、解除と不更新の予告(16条)が及びます。民法651条の解除権との関係も整理します。
よくあるご質問
契約書に「雇用ではない」と書けば、労働基準法は適用されませんか。
適用されないとは限りません。労働者かどうかは、契約書の題名や文言ではなく、指揮監督の有無、時間や場所の拘束、報酬の性質などの実態で判断されます。「雇用ではない」という確認は、実態を整えるための記録として意味がありますが、実態が雇用に近ければ、労働基準法等が適用されます。
完全歩合の報酬にすれば、労働者にはなりませんか。
歩合であることは独立に近づく事情の一つですが、それだけで決まりません。稼働時間や場所を決められ、日々の行動を管理され、案件を断れないなどの事情が重なれば、労働者と評価される可能性があります。反対に、固定報酬や最低保証があっても、それが稼働とは別の性質であるなら、一概に労働者になるわけではありません。
個人の代理店に委託するとき、フリーランス法の書面での明示は必要ですか。
代理店が個人で従業員を使わない場合や、一人法人の場合は、特定受託事業者に当たり、業務委託をしたら直ちに、給付の内容、報酬の額、支払期日などを書面又は電磁的方法で明示する必要があります(3条)。この明示は、委託する側が従業員を使っているかどうかを問わず求められます。契約書の別紙に報酬表を付ける形が分かりやすい方法です。
1か月や3か月の短い契約でも、終了前の予告は必要ですか。
フリーランス法16条の解除等の予告は、6か月以上の継続的な業務委託が対象です。それより短い契約には、同条の予告義務は及びません。ただし、契約書に定めた解約の手続は守る必要があり、1か月以上の業務委託には、報酬の減額などを禁じる5条1項が及びます。自動更新で6か月以上続くことになる場合は、更新を含めて数えます。
代理店が法人なら、フリーランス法は関係ありませんか。
法人でも、代表者以外に役員がなく、従業員も使っていない一人法人は、特定受託事業者に当たります(2条1項2号)。代表者以外に役員や従業員がいる法人は当たりません。法人であることだけでは決まらないため、役員と従業員の有無を確かめます。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、取引の実態や当事者の立場によって変わることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索 / 公正取引委員会 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 特許庁