このページの要点
- 「代理店」は法律上の類型の名前ではない。取次・紹介、代理、取次販売(問屋)、販売店(再販売)、役務の再販のどれかを決める。
- 取次型から再販売型に変えるときは、顧客の定義・業務・支払の向き・報告・解除の条と、お客様向けの利用規約までそろえて直す。
- 表題が「代理店」でも、発注書と承諾で個別の売買が成立する条文なら、販売店として働く。
- 「代理店契約ではない」と書いても、契約の性質は中身で評価される。権限を持たせないなら、禁止する行為を具体的に書く。
結論:契約の名前ではなく「誰が売主で、誰が代金を受け取るか」で決まる
「代理店契約書を作りたい」というご相談で最初に確かめるのは、その代理店がお客様に対して何をするのかです。「代理店」は法律で決まった契約の類型の名前ではありません。商品やサービスを売る側(このサイトでは「本人」又は「提供者」と呼びます)に代わってお客様と契約を結ぶ「代理」、お客様を紹介して契約の成立を手伝うだけの「媒介(取次・紹介)」、自分で商品を買い取って自分の名前で売り直す「再販売(販売店)」、自分の名前で売りながら損益は本人に帰属させる「問屋(取次販売)」など、中身の違う取引がすべて「代理店」と呼ばれています。
中身が違えば、お客様との契約の当事者、代金を受け取る人、売れ残りや返品の負担、苦情や返金の窓口、特定商取引法などの表示をする人が変わります。そこで事務所の契約書では、表題をどう付けるかより先に、次の2点を条文で決めています。
- お客様と契約を結ぶのは誰か(売主・役務の提供者は本人か、代理店か)。
- お客様から代金を受け取るのは誰か。受け取った代金は、どちらからどちらへ流れるか。
この2点の組合せで、事務所の資料に現れた代理店の取引は次の5つの型に分けられます。
| 型 | お客様との契約の当事者 | 代金を受け取る人 | お金の流れ | 事務所の資料での例 |
|---|---|---|---|---|
| 取次・紹介(媒介) | 本人 | 本人 | 本人→代理店(紹介料・手数料) | クラウドサービスの紹介パートナー、営業代行、講座のアフィリエイト |
| 代理(代理受領あり) | 本人(代理店が本人の名で契約) | 代理店が本人に代わって受領 | 代理店→本人(受領した代金を送金) | 物品の販売代理店のひな形 |
| 取次販売(問屋) | 代理店(自己の名で、本人のために販売) | 代理店 | 代理店→本人(売上から配分) | 作家の作品の販売窓口 |
| 販売店(再販売) | 代理店 | 代理店 | 代理店→本人(仕入代金・ロイヤリティ) | 食品ブランドの販売店、クラウドサービスの再販売・ホワイトラベル |
| 役務の再販 | 代理店 | 代理店 | 代理店→制作会社(お客様の入金の有無にかかわらず) | SNS運用の制作会社と広告代理店 |
ホワイトラベルとは、他社が作ったサービスを、自社のブランドだけを表示して提供する形をいいます。
用語を補足します。「代理」は、代理人が本人のためにすることを示して契約し、その効果が本人に直接生じる仕組みです(民法99条1項)。「問屋」は、自己の名をもって他人のために物品の販売又は買入れをすることを業とする者をいい(商法551条)、問屋は販売の相手方に対して自ら権利を取得し、義務を負います(同法552条1項)。「再販売」は、代理店が本人から商品を買い取り、自分の商品として売ることです。この三つは、お客様から見た売主が誰になるかという点で、はっきり違います。
以下では、事務所が作成・レビューした契約書の中から、型を取り違えると何が起きるのか、型を変えるときにどこまで直す必要があるのかを、実例で紹介します。手数料の決め方は手数料①:算定の基礎と料率、再販売型の個別の論点は販売店契約書(特約店契約書)で詳しく扱います。
取次型から再販売型へ作り替えた例:「顧客」の定義からお金の向きまで
法人向けのクラウドサービス(SaaS)の提供者から、法人の代理店に販売してもらうための販売代理店契約書の作成を受けた案件では、当初の案と改訂後で、契約の型そのものが変わりました。当初の案は取次型で、代理店はお客様の情報を提供者に取り次いで成約を補助する役割、お客様は提供者とサービス契約を結び、報酬は提供者が代理店に支払う形でした。改訂後は再販売型に作り替え、代理店が自分でお客様と契約して代金を請求・回収し、提供者の取り分を提供者に振り込む形になっています。
同じ「販売代理店契約書」という表題でも、矢印の向きが逆になっています。
取次型から再販売型へ:変えた条文
「顧客」の定義
定義の一語で、売主と代金の受取人が入れ替わります。
代理店の業務
代理店が契約当事者になるので、お客様への説明や苦情の一次窓口も代理店に移ります。
お金の流れ
代金の回収の手間と未回収のリスクが代理店に移ります。
報告が不十分なとき
代理店が代金を握る型では、提供者が支払を止めるという手段がそもそも使えません。改訂後の条文は、取り分の計算を確定させないことと解除で対応する形になっています。
型を変えるときは、定義と業務の条だけでなく、支払の条(誰が誰に、いつまでに払うか)、源泉徴収や相殺の条(どちらが差し引く側か)、報告の条(誰が誰に何を報告するか)、解除の条(報告や送金を怠ったときの効果)を一つずつ見直す必要があります。支払の向きが逆になると、これらの条は主語と相手方が入れ替わるからです。
もう一つ、契約書の外にも直すところがあります。再販売型ではお客様と契約するのが代理店になるので、提供者が自社のお客様向けに用意している利用規約やサービス提供契約書(提供者とお客様の直接の契約を前提にしたもの)を、そのまま代理店のお客様に使うことはできません。代理店経由の契約について定めを置くか、代理店が自分のお客様と結ぶための規約を別に用意するかを、代理店契約と同時に決めておきます。
ひな形の流用で型がずれる:物販の代理店契約をサービスの紹介に使う場面
物品の販売代理店のひな形は、代理店が売買契約を結び、代金を代理受領して本人に送金し、本人に代わって商品を引き渡す、という作りになっていることが多くあります。このひな形を土台に、サービスの紹介だけを頼む代理店(たとえば施術サロンが自分のお客様や知人のサロンを紹介する形)の契約を作ると、「売買契約の効力は代理店と買主の間に生じる」といった物販の文言や、「代理受領」の見出しが残りやすくなります。紹介だけを頼む契約にこうした文言が残ると、代理店が契約を結ぶ権限や代金を受け取る権限を持っているように読め、お客様が代理店に代金を払ってしまうといった行き違いの原因になります。
送客の向きが逆になる例もあります。リフォームの紹介サイトの運営者と施工業者の契約では、当初の案は「施工業者の側がサイトの運営者のお客様に職人を紹介し、運営者が紹介報酬を払う」形でしたが、改訂後は「運営者が見込み客を施工業者に送り、施工業者が運営者に1件ごとの紹介料と成約手数料を払う」形に作り替えました。誰が誰にお客様を送り、誰が誰に払うのかが逆になると、目的の条、業務の条、料金の条、報告の条をそろえて書き直すことになります(送客型の契約の詳細は紹介代理店契約書・業務提携契約書)。
ひな形を土台にするときに、型に合わせて確かめる条
- 目的と定義:「顧客」「販売」「成約」が、誰と誰の契約を指しているか。
- 代理店の権限:契約の締結・見積りの提示・値引き・代金の受領を、代理店ができるのか、できないのか。
- 代金の流れ:お客様が支払う先、代理店と本人の間の支払の向き、振込手数料の負担者。
- 報告:手数料の計算の根拠になる報告を、誰が誰にするか。報告の条を削ったなら、手数料の条が報告を前提にしていないか。
- 物品の条:引渡し・貸与物の返還・在庫の条が、物を扱わない契約に残っていないか。
- お客様向けの書類:利用規約・申込書の契約当事者が、代理店契約の型と合っているか。
表題が「代理店」でも、条文が売買なら販売店として働く
食品ブランドの保有者が、取引先に「代理店」として商品を売ってもらう契約では、表題は「代理店契約」、権限は「販売代理権」と呼びながら、条文では、代理店が本人所定の発注書で発注し、本人が承諾したときに個別の売買契約が成立する、という作りにしています。単価は発注のたびに本人が示し、市況や為替で改定できるとしています。
この作りでは、代理店は商品を買い取って自分で売るので、法律上は販売店(再販売)です。お客様に対する売主は代理店になり、売れ残りの在庫や代金の回収のリスクも代理店が負います。反対に、代理店の売値は代理店が決めるのが原則で、本人がその売値を定めて守らせることは、正当な理由がない限り、独占禁止法の再販売価格の拘束(同法2条9項4号)に当たります。再販売先を制限したい、ブランドを守りたいという本人の希望は、再販売先の承諾制や商標の使用条件として、別の条で書くことになります(販売店契約書・商標ライセンス契約書)。
逆に、一つの契約の中に「代理権の付与」と「代理店がお客様から代金を回収することの禁止」と「販売価格と仕入価格の差額を手数料として払う」と「最低発注ロット」が並んでいると、代理店が買い取るのか、取り次ぐだけなのかが決まりません。仕入価格や最低発注ロットは買取りの語、代理権と本人による回収は取次・代理の語だからです。どちらの型にするかを先に決め、語をそろえます。
「代理店契約ではない」と書く条項と、その限界
代理店に権限を持たせたくない側の契約では、契約の性質を条文で書いておくことがあります。工事関連の会社が営業代行会社に見込み客の開拓を委託する契約では、「本契約は代理店契約、販売店契約、フランチャイズ契約ではない」と明記し、業務は見込み客の開拓と商談の設定までで、見積りの確定・契約の締結・クロージング・与信の判断は委託者が行うとしています。採用支援サービスの営業代理・紹介業務の委託契約では、受託者に契約の締結、見積りの提示、値引きや返金の交渉、条件の変更、成果の約束を禁じ、「正規代理店」「パートナー」といった表示も禁じたうえで、販売代理店契約・フランチャイズ契約・雇用・共同事業のいずれでもないと書いています。受診支援の事業者と医療機関の提携契約でも、両者の間に代理・媒介・フランチャイズの関係は生じないと定めています。
こうした条項は、相手方やお客様に「この人は本人の代わりに約束できる立場ではない」ことを示す意味があります。ただし、契約の性質は、最終的には文言ではなく中身で評価されます。事業を引き継いだ技術教室が、各地の教室(分室)と結んだ技術使用の契約では、「雇用契約、フランチャイズ契約又は代理店契約ではない」と書いていますが、名称・ブランドの使用を許し、生徒の料金のうち一定額を本部に納めさせ、料金や教材を本部が統制する、という中身はフランチャイズに近いものです。「ではない」と書いた条項を頼りにせず、中身に応じて必要な定めを置くことが大切です(認定店・分室・のれん分け、フランチャイズ契約書)。
講座の受講契約で、受講生に代理店などの権限を与えないことを書く例もあります。セラピスト養成スクールの受講契約では、この契約は認定講師・講師養成・フランチャイズ・代理店・提携校・ライセンス等の権限を与えず、将来の制度に当然に参加する権利も優先権もない、と定め、「認定講師」「代理店」「フランチャイズ」「公式スクール」といった特別な権限があるかのような表示を禁じています。卒業生であることの表示は認めています。
販売の名義をヒヤリングの最重要の問いにした例(取次販売)
作家の作品を、プロモーション会社が販売窓口となって売る契約では、ヒヤリングシートの「販売名義」の部を最重要の設問にしました。誰の名前で売るかによって、購入者に対する責任と、表示の義務を負う人が決まるからです。
作家の作品の販売窓口:販売名義について確かめたこと
作品は、作家の名前で売りますか、販売窓口(プロモーション会社)の名前で売りますか。
窓口の名前で売るなら、窓口が自己の名で作家のために販売する取次販売(商法551条の問屋)として組みます。購入者に対する売主の責任(契約不適合責任)は窓口が負います。この案件では、確定版で窓口の名義に決まりました。
通信販売で売る場合、販売条件の表示や申込みの最終確認画面は、誰の名前で作りますか。
売主になる人が、特定商取引法の広告の表示(11条)や、申込みを受ける際の表示(12条の6)を行う立場になります。窓口の名義なら、窓口のサイトや販売ページの表示を整えます。
作品の所有権は、いつ誰に移りますか。
取次販売では、作品は作家のもののまま窓口が売るので、購入者に引き渡すまで所有権を作家に留保する形にしました。窓口が作品を買い取る販売店型とは、この点で違います。
販売窓口を一つに絞りますか(独占)。作家が自分で売ることはありますか。
独占にするなら、独占の目的と範囲、窓口が負う義務、作家の直販との価格の整合を決めます(独占販売契約書)。
取次販売は、販売店型(買取り)と代理型(作家の名で契約)の中間にある形です。窓口は在庫を買い取らずに済み、作家は所有権を手元に残せますが、購入者から見た売主は窓口になります。どの型を選ぶかで、返品・不良品の対応、表示、代金の預り方、作家への配分の計算が変わるので、型を決める問いを最初に置いています。
役務の再販:代理店がお客様の窓口になる三者の契約
物品ではなくサービスを再販する例もあります。SNS運用の制作会社が、直接のお客様向けの契約とは別に、広告代理店向けの「代理店・再販モデル」の契約を用意した案件では、広告代理店が自分の名前でエンドクライアント(最終的なお客様)と契約し、制作会社は広告代理店に対してだけ義務を負う三者の構造にしました。
制作会社は、エンドクライアントとの直接の交渉を業務から外しています。
- 窓口の分担:エンドクライアントとの直接の交渉を制作会社の業務から外し、広告代理店がエンドクライアントに業務のガイドラインを周知し、守らせるとしました。
- 素材と承認:素材・アカウントの権限・投稿の承認を広告代理店とエンドクライアントから提供させ、3営業日以内の回答を求め、遅れによる影響は制作会社が責任を負わないとしました。投稿案の受領後3営業日以内に修正の指示がなければ承認したものとみなす定めも、代理店版にだけ置いています。
- 報酬:広告代理店がエンドクライアントから受け取る総額から「業務紹介料」として一定割合を差し引いた額を、エンドクライアントの入金の有無にかかわらず広告代理店が制作会社に払うとしました。未回収のリスクは、窓口である広告代理店が負います。
- 素材に起因する違反:広告代理店又はエンドクライアントが提供した素材や広告表示による権利侵害、景品表示法違反・薬機法違反は、広告代理店の責任と費用で解決すると具体的に書きました。
- 成果物の利用許諾:著作権は制作会社に残し、利用を許す範囲を「エンドクライアントのSNSアカウントの運営」に合わせました。
役務の再販では、エンドクライアントは制作会社の契約の当事者ではないため、制作会社がエンドクライアントに直接義務を課すことはできません。広告代理店に「守らせる」義務を負わせる書き方にするのはそのためです。あわせて、エンドクライアントとの契約が終わったときに広告代理店と制作会社の契約をどうするか(その案件の分だけ終わるのか、基本契約は続くのか)や、制作会社がエンドクライアントと直接取引することを制限するかどうかも、役務の再販に特有の決めごととして確かめておきます。直接取引の制限の書き方は紹介代理店契約書・業務提携契約書で扱います。
よくあるご質問
販売代理店と販売店(特約店)の違いは何ですか?
販売代理店は、本人(メーカーや提供者)の名でお客様と契約し、契約の効果が本人に生じる形が基本です。販売店(特約店)は、本人から商品を買い取り、自分の名前でお客様に売る再販売の形です。販売店型では、お客様に対する売主も在庫のリスクも販売店にあり、本人が販売店の売値を定めて守らせることは、正当な理由がない限り、独占禁止法の再販売価格の拘束に当たります。
紹介代理店(取次)にも代理店契約書は必要ですか?
必要です。紹介だけを頼む場合でも、成約の定義、手数料の発生時期、既存顧客の扱い、返金時の戻し、代理店が契約の締結や値引きをしてはならないことなどを決めておかないと、手数料をめぐる争いになります。契約書の名前は「紹介業務委託契約書」「パートナー契約書」などでもかまいません。
代理店の型を途中で変えるとき、どこを直せばよいですか?
定義(顧客・販売・成約)、代理店の業務と権限、支払の向き、源泉徴収や相殺の主語、報告の向き、報告や送金を怠ったときの効果、解除の条をそろえて直します。お客様向けの利用規約や申込書の当事者も、新しい型に合わせる必要があります。
「本契約は代理店契約ではない」と書けば、代理店としての責任を負いませんか?
その条項だけで評価が決まるわけではありません。契約の性質は中身で評価されるので、権限を持たせたくないなら、契約の締結・見積りの提示・代金の受領をしてはならないことや、代理人と誤認させる表示をしないことを、具体的に書いておく必要があります。
取次販売(問屋)とは、どういう形ですか?
代理店が自己の名をもって、本人のために物品を販売する形です(商法551条)。購入者に対しては代理店が売主として権利を取得し義務を負いますが、損益は本人に帰属します。作家の作品の販売窓口のように、窓口が在庫を買い取らずに自分の名前で売る場面で使われます。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、取引の実態や当事者の立場によって変わることがあります。事務所の改訂例・報告書の指摘・ヒヤリングの問いとして紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきた販売代理店契約書、販売店契約書、紹介・営業代行の契約書、送客の業務提携契約書、商標・特許・ノウハウ・ソフトウェア・著作物の使用許諾契約書、フランチャイズ契約書、認定店・分室の規約などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています(最終確認日:2026年10月16日)。参考: e-Gov法令検索 / 公正取引委員会 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 特許庁