このページの要点
- 不特定多数に同じ条件で参加させる規約は、民法の定型約款に当たり得る。同意の取り方、変更の周知、既存の紹介の扱いを書く。
- セルフバックは、全面禁止・条件付き・容認の型から選び、「自己」の範囲(家族、同居者、法人と代表者)を具体的に書く。
- 報酬の返還は事由・期限・方法・相殺を明記する。返還の事由は、紹介者の側の事情に絞ると整合を保ちやすい。
- 紹介者の紹介に報酬を付けず、参加に負担を求めないことを書く。紹介者の投稿は、広告表示・改変・禁止表現・違反時の措置を決める。
結論:紹介制度は「個別の契約」ではなく「規約」で組む。成立、登録拒否、変更、禁止、報酬を一つにまとめる
商品やサービスを売る事業者が、顧客や不特定多数の個人に紹介を頼み、成果があれば報酬や特典を渡す仕組みは、友達紹介、アフィリエイト、紹介パートナー制度などと呼ばれます。代理店との間で一件ずつ交渉して結ぶ契約と違い、この仕組みでは、登録した人すべてに同じ条件を適用します。そのため、契約書ではなく、「規約」(紹介制度利用規約)の形をとるのが一般的です。
このページで使う用語を整理します。「紹介者」は、制度に登録して、サービスを他の人に紹介する人です。「紹介先」は、紹介を受けて申込みをする人です。「紹介報酬」は、紹介の成果に対して紹介者に支払う金銭や、それに代わる特典です。「紹介コード」「紹介リンク」は、誰の紹介かを識別するための番号やURLです。「セルフバック」は、紹介者が自分の紹介リンクを使って自分で申込みをし、報酬を受け取ることをいいます。「ASP」(アフィリエイトサービスプロバイダー)は、広告主と紹介者の間に入って、リンクの発行、成果の計測、報酬の支払を仲介する事業者です。
紹介制度の規約に入れるべきものは、次の5つに集約されます。
- 制度への参加の成立(登録、同意、登録の拒否)と、規約の変更の方法。
- 紹介の特定の方法と、セルフバックや家族・知人の名義の扱い。
- 報酬の発生、返還、相殺、支払の条件と、その変更。
- 紹介の連鎖に報酬を付けないこと(多段階の禁止)と、制度に参加するための負担を求めないこと。
- 紹介者の投稿や紹介文の守るべき表示のルールと、違反したときの措置。
| 型 | 紹介者 | 規約の相手方 | 報酬の特徴 | 特に気をつけること |
|---|---|---|---|---|
| 友達紹介(顧客紹介) | 既存の顧客が、自分の知人に紹介する | 事業者と紹介者(顧客) | 紹介者・紹介先の双方に特典を渡すことが多い | 家族名義、知人の個人情報の入力、特典と値引きの区別 |
| アフィリエイト(直接契約型) | ブログやSNSで広告として紹介する個人・法人 | 事業者と紹介者 | 成果ごとの報酬。返還の条件を決める | 広告表示の義務、紹介文の改変、禁止表現、セルフバック |
| ASP経由 | ASPに登録した紹介者 | ASPと紹介者、ASPと広告主 | 報酬の支払はASPが行う | ASPの規約と自社の規約の関係、承認制、成果の否認の基準 |
どの型でも、事業者が紹介者の行為の結果について責任を問われ得る点は共通です。紹介者が個人かどうかで、法令の適用が変わることがあります。
事業者間で個別に結ぶ紹介代理店契約は紹介代理店契約書・業務提携契約書で、紹介の帰属を決めるルールを扱っています。このページは、それとは別に、不特定多数の個人を相手にする規約型の制度に絞り、規約としての成立、セルフバック、報酬の返還、多段階の禁止、紹介者の投稿を扱います。
規約として成立させる:登録、同意、登録の拒否、規約の変更
紹介制度の規約は、民法の「定型約款」に当たる場合があります。定型約款は、ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引で、その内容の全部又は一部が画一的であることが双方にとって合理的なものについて、契約の内容とすることを目的として準備された条項の総体です(民法548条の2第1項)。登録フォームで誰でも参加でき、条件が全員同じ紹介制度は、この定義に当てはまりやすい取引です。
個人の紹介者に継続して紹介を任せる制度での、労働者性とフリーランス法の確かめ方については、個人代理店・営業パートナーの労働者性とフリーランス法の記事で詳しく説明しています。
定型約款に当たるとき、紹介者が規約の個別の条項に合意したとみなされるためには、約款を契約の内容とする旨の合意をするか、約款を準備した者が、あらかじめ契約の内容とする旨を相手方に表示している必要があります(同条1項各号)。登録の画面で、規約の全文を見ることができる状態にして、同意のボタンやチェックを置くのは、この要件を満たす書き方です。また、相手方の権利を制限し、義務を加重する条項で、相手方の利益を一方的に害すると認められるものは、合意をしなかったものとみなされます(同条2項)。合意の前後の相当の期間内に紹介者から請求があったときは、約款の内容を示さなければなりません(548条の3)。
規約の変更も、定型約款の仕組みによります。548条の4第1項は、変更が相手方の一般の利益に適合するとき、又は契約をした目的に反せず、変更の必要性、変更後の内容の相当性、変更をすることがある旨の定めの有無・内容などに照らして合理的なときに、個別の合意なしに変更できると定めています。変更するときは、効力発生時期を定め、変更する旨、変更後の内容、効力発生時期を、インターネットの利用その他の適切な方法で周知しなければならず、周知がなければ効力を生じません(同条2項・3項)。
紹介制度で重要なのは、報酬の条件の変更です。報酬の料率を下げる、対象の商品を外す、支払の時期を遅らせるといった変更は、紹介者の収入に直接影響します。規約には、変更の周知の時期、変更後の条件が適用される時点、すでに成立した紹介にどちらの条件が適用されるかを書いておきます。一般には、変更の効力発生日より前に成立した紹介は変更前の条件、効力発生日以後に成立した紹介は変更後の条件、と分ける方法があります。
規約の変更の条文例(一般的な例)
1当社は、民法548条の4の規定に基づき、本規約を変更することができる。
2当社は、前項の変更をするときは、変更の効力発生日の○日前までに、変更する旨、変更後の規約の内容及び効力発生日を、当社のウェブサイトへの掲載及び紹介者が登録した連絡先への通知により周知する。
3紹介報酬の額、対象及び支払条件の変更は、効力発生日以後に成立した紹介にのみ適用する。効力発生日より前に成立した紹介の紹介報酬は、変更前の規約による。
4紹介者は、変更後の規約に同意しないときは、効力発生日の前日までに、第○条の手続により退会することができる。
「○日」には、紹介者が内容を読んで判断できる期間を入れます。第3項は、すでに成立した紹介の報酬を、事後の変更で減らさないための書き方です。
登録の拒否も、あらかじめ書いておく必要があります。反社会的勢力でないことの表明、過去に規約違反で登録を抹消された者でないこと、同じ人が複数のアカウントを作らないこと、虚偽の情報を登録しないことを登録の条件にし、これに反すると判断したときは、登録を拒否し、又は抹消できる旨を定めます。未成年者は、法定代理人の同意が必要です(民法5条1項。成年は18歳。同法4条)。同意のない法律行為は取り消すことができるため(同法5条2項)、未成年者の登録を認めるなら、法定代理人の同意を得ていることを登録の条件にする方法があります。
もう一つ、規約を作る人が見落としやすいのは、紹介者が「消費者」か「事業者」かという点です。消費者契約法は、消費者を、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合を除く)と定めています(2条1項)。副業の個人が、事業としてではなく、趣味のブログで紹介をしている場合は、消費者契約と評価される可能性があります。その場合、事業者の損害賠償責任の全部を免除する条項は無効になり得ますし(同法8条1項)、消費者の利益を一方的に害する条項も無効になり得ます(同法10条)。規約の免責の条は、「一切の責任を負わない」と書くのではなく、範囲を限った書き方にします。責任の一部を免除する条項や上限を設ける条項も、軽過失の場合に限って適用されることを明らかにしていないと無効になり得る点(同条3項)に注意が必要です。たとえば上限を置くなら、「当社は、当社、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き、本制度に関して紹介者に生じた損害について、○円を上限として賠償する責任を負う。」のように、上限を定める同じ一文の中に除外を書きます。「ただし、故意又は重大な過失の場合は除く」と別の文や別の項に分けると、その条項が軽過失の場合に限った免除であることが条項自体から読み取れないとされるおそれがあります。また、故意または重大な過失の場合を除いて責任を負わないと書くだけでは軽過失の責任の全部免除になるため、消費者との間では使えない書き方です。
紹介者の地位についても、規約に書いておきます。紹介者は、事業者から代理、媒介その他の権限を与えられた者ではなく、紹介先に対して、そのような権限があるかのように誤解させる説明や表示をしてはならない、という条です。「公式」「正規代理店」「認定」といった肩書きを使わせない条は、商標ライセンス契約書の表示の管理と同じ考え方です。
紹介の特定と、セルフバック・家族名義の扱い
規約型の制度では、誰の紹介かを、個人同士の約束ではなく、紹介コードや紹介リンクの記録で特定します。リンクをクリックしてから申込みまでの有効期間、複数の紹介者のリンクを経由した場合にどの紹介を優先するか、紹介コードを入力しなかった場合や、後から申告された場合は紹介として扱うか、を決めておきます。事業者間の紹介の帰属の争い方は紹介代理店契約書・業務提携契約書で説明していますが、規約型の制度では、事前の個別の合意がなく、計測の記録が唯一の証拠になるため、記録の方法と保存期間を規約に書いておくと、後の説明に使えます。
次に、セルフバックです。紹介リンクは、紹介者自身も使えてしまいます。自分で申し込んで報酬を得ることを認めると、実質的には割引と同じ効果になります。反対に、一律に禁止するなら、禁止の範囲と、見つけたときの扱いを具体的に書かなければなりません。セルフバックの扱いには、次の三つの型があります。
| 型 | 内容 | 利点 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 全面的に禁止する | 自己の申込みには報酬を支払わず、判明したときは返還を求める | 制度の趣旨(他人への紹介)が明確になる | 「自己」の範囲(家族、同居者、法人と代表者)を定める必要がある |
| 条件を付けて認める | 自己の申込みに対して、別の名目の特典(割引)として扱う | 紹介者への特典と、紹介の報酬が区別される | 特典の額、回数の上限、対象の商品を決める必要がある |
| 認める | 自己の申込みも報酬の対象とする | 規約が単純になる | 実質は値引きと同じになり、通常の価格を支払った顧客との公平を欠く |
どの型を選ぶかは、制度の目的と価格の方針によって決まります。選んだ型を、規約と紹介者向けの案内で同じ言葉で説明します。
全面禁止の型を選ぶ場合に、実際に問題になるのは、「自己」の範囲です。家族の名義で申し込む、同居する人に頼んで申し込んでもらう、自分が代表を務める法人の名義で申し込む、友人と互いの紹介リンクで申し込み合う、といった行為は、どこまでが「自己の申込み」に当たるのかを、規約があいまいにしていると、判定のたびに争いになります。判定の基準として、同一の氏名・住所・電話番号・メールアドレス・決済手段・端末の情報などが一致するかを、事業者が確認できる旨を書いておきます。
一方で、家族の名義を一律に除外すると、「家族に勧める」という、紹介制度の自然な利用まで排除してしまいます。そこで、除外するのは「実質的に紹介者自身が申込みをしたと認められる場合」に限り、その判断は事業者の合理的な判断による、と書く方法があります。疑いがあるときの扱い(報酬の保留、資料の提出の請求、調査への協力)も、規約に書いておきます。
セルフバックの条文の整え方(書き方の例・一般的な例)
自己の範囲
一律の除外ではなく、実質的な判断の基準を置くことで、家族への正当な紹介を妨げません。
疑いがあるとき
保留、説明の機会、判断の順序を置き、いきなり不支給・返還とならない形にします。
報酬の発生・返還・相殺・支払条件
紹介報酬は、いつ、どの時点で発生するのかを、規約で決めます。紹介先が申込みをした時点、契約が成立した時点、代金の入金があった時点、クーリング・オフや返金の期間が経過した時点、サービスの提供を開始してから一定の期間が経った時点などの型があります。早い時点で発生させるほど、紹介者には魅力的ですが、その後の解約や返金のときに戻す手間がかかります。成約の定義の型と戻しの考え方は手数料②:発生の時期、返金時の戻し、支払と異議に整理してありますので、このページでは、規約型の制度に特有の点に絞ります。
まず、返還の請求の根拠です。紹介先の解約や返金があったときに、すでに支払った報酬を返してもらうことは、規約に書いておかなければ、不当利得(民法703条)など一般の規定に頼ることになり、返還の義務があるかどうかが争いになりやすくなります。返還の事由(紹介先の解約、返金、クーリング・オフ、不正な申込み、チャージバック(カード会社を通じた決済の取消し)など)、返還の期限、返還の方法を明記しておきます。
次に、返還の事由の範囲を、どう決めるかです。紹介先の解約は、紹介者の責任ではない場合が多くあります。紹介者が個人の事業者として制度に参加している場合、その制度が業務の委託と評価されると、フリーランス法の適用が問題になり得ます。同法5条1項2号は、一定期間以上の業務委託で、特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに報酬の額を減ずることを禁止しています。紹介先の解約による報酬の返還が、この規定との関係でどう評価されるかは、紹介者が事業者か、制度が業務の委託に当たるか、期間の要件を満たすかによって変わるため、一概には言えません。返還の事由を、虚偽の説明、規約違反、不正な申込みなど、紹介者の側の事情に絞ると、規定との整合を保ちやすくなります。紹介先の都合による解約の場合に、どこまで返還を求めるかは、制度の趣旨に照らして決めておきます。
相殺と、次回以降の報酬からの控除も、規約型の制度では実務的な論点です。紹介者が少額の報酬を多数の人に払う制度では、返還の請求を一件ずつ行うと、回収のコストが報酬を上回ることがあります。民法505条は、双方の債務が弁済期にあるときの相殺を定めています。規約に、返還すべき報酬を、次回以降の報酬と相殺し、又は控除できる旨を書いておくと、手続が簡単になります。ただし、相殺される側の紹介者に不意打ちにならないよう、控除の前に通知をする旨も書いておきます。
報酬の返還・相殺の条文例(一般的な例)
1当社は、紹介報酬の支払後に、次の各号のいずれかに該当したときは、紹介者に対し、当該紹介に係る紹介報酬の全部又は一部の返還を請求できる。(1) 紹介先が、申込みの取消し、解除、クーリング・オフその他の理由により契約が効力を失ったとき(紹介者の責めに帰すべき事由による場合に限る。)。(2) 紹介者が本規約に違反したとき。(3) 紹介が、第○条に定める自己の申込みその他の不正な申込みに基づくものであることが判明したとき。
2紹介者は、前項の請求を受けたときは、請求の日から○日以内に、当社の指定する方法で返還する。
3当社は、前項の返還が履行されないときは、返還すべき金額を、以後の紹介報酬と対当額で相殺し、又は控除することができる。この場合、当社は、あらかじめ、相殺又は控除する金額及びその理由を紹介者に通知する。
第1項(1)は、紹介者の責めに帰すべき事由による場合に限っています。紹介先の都合による解約も返還の対象にするなら、その旨を別に書き、制度の趣旨と整合するかを確かめます。
最後に、支払の条件です。最低支払額に達するまで繰り越す(少額の報酬を、一定額に達するまでまとめて払う)、支払の方法と手数料の負担、紹介者の登録した口座に不備があって振り込めなかったときの扱い、一定の期間請求しなかった報酬を失効させる条などを決めます。失効の条は、紹介者の権利を大きく制限するので、期間を長めにとり、失効の前に通知をする形にしておきます。紹介者に報酬の金額を示すときは、税込か税別かが分かるように書きます。
多段階の禁止と、紹介の連鎖に近づく線
紹介制度で、制度設計の線引きが最も重要になるのが、紹介の連鎖に報酬を付けるかどうかです。紹介者Aが紹介者Bを勧誘し、Bが紹介した顧客の成果からもAに報酬が出る、という仕組みを「多段階」と呼びます。規約では、この仕組みを入れない旨を明確にしておくのが一般的です。
法律の面では、特定商取引法の連鎖販売取引(33条1項)が関係します。連鎖販売業は、他の者が提供する取引料などの利益(特定利益)を収受し得ることをもって勧誘し、その者と特定負担(商品の購入、役務の対価の支払、取引料の提供)を伴う取引をするものとして定義されています。取引料は、加盟料、保証金その他名義のいかんを問わず、取引をするに際して提供される金品です(同条3項)。したがって、報酬が連鎖していても、それだけで直ちに連鎖販売取引になるのではなく、参加するために負担を求めているかどうかが重要になります。定義の詳しい説明と、業務提供誘引販売取引との境界は、二次代理店・再委託と連鎖販売取引の境界にまとめてあります。
規約型の紹介制度で、連鎖販売取引に近づく典型的な場面は、次のようなものです。
- 紹介者になるために、登録料、教材の購入、会員としての商品の購入、研修の受講などの負担を求める。
- 紹介者に、毎月一定額の商品の購入を、報酬を受ける条件にする。
- 紹介者を新たに紹介した人にも、その紹介者の成果の一部を報酬として払う。
- 紹介者の募集を、収入を得られることを前面に出した広告で行う。
友達紹介の制度でも、「紹介者自身が会員で、毎月購入していることが、特典の条件」とする作りは、特定負担の有無を確かめる必要があります。反対に、参加は無料で、購入の義務もなく、報酬は紹介先の購入に対する一段階だけ、という作りにしておくと、連鎖販売取引の要件に当たる可能性は下がります。
多段階の禁止の条文の整え方(書き方の例・一般的な例)
報酬の対象
禁止だけでなく、報酬の対象を一次の紹介に限る旨を書くことで、制度の構造を規約に固定します。
参加の条件
負担を求めない旨を明記して、特定負担の有無を点検できる形にします。
規約には、さらに、紹介者が第三者に対して、収入の保証をうたう勧誘や、紹介者の募集を行うことの禁止も書いておきます。こうした紹介者による勧誘の行為は、事業者の責任が問われる場面があるため、禁止行為と違反した場合の措置(報酬の不支給、登録の抹消)を定めておく必要があります(代理店・紹介者の営業と消費者向けのルール)。
紹介者の投稿・紹介文:表示の義務、改変の制限、禁止表現、違反時の措置
報酬をもらって紹介する投稿は、広告です。景品表示法5条3号に基づく指定の対象には、事業者の表示であることが判別しにくい表示(いわゆるステルスマーケティング)が含まれ、規制の対象は主に広告主である事業者です。紹介者が広告であることを示さずに投稿した場合も、事業者の側の問題になり得ます。この規制の内容と、紹介者の投稿に関する契約上の対応の一般論は、代理店・紹介者の営業と消費者向けのルールに書きましたので、ここでは規約型の制度での実務に絞ります。
規約型の制度では、紹介者を個別に面談して指導することが難しいため、規約と紹介者向けのガイドラインで、守るべきことを具体的に示します。
- 広告であることの表示:投稿の冒頭など、読み手が最初に目にする位置に、「広告」「PR」などと分かる表示を付けること。「#PR」を文末の多数のタグに埋もれさせるような方法は認めない。
- 紹介文の改変:事業者が提供した紹介文や画像を使う場合の、改変の範囲。自由にするか、承認を必要とするか、一定の部分は改変を禁止するか。
- 禁止する表現:効果や成果の断定、「必ず」「誰でも」「簡単に」などの表現、他社との比較、不安をあおる表現、事実と異なる体験談。
- 投稿の場所:紹介してよい媒体(ブログ、SNS、動画)と、してはならない場所(出会い系、有料メルマガの一部、他人のコメント欄など)。
- アカウントの届出:紹介に使うアカウントを登録し、事業者が投稿を確認できるようにすること。
違反があったときの措置も、段階を決めておきます。警告と是正の要請、投稿の削除の要請、報酬の保留や不支給、紹介リンクの停止、登録の抹消の順に、重さに応じた措置を並べ、重大な違反は即時に登録を抹消できる、と書く方法があります。違反が事業者の責任に及ぶ範囲では、紹介者に対して損害賠償を請求できる旨を書くことも考えられますが、紹介者が消費者に当たる場合は、消費者契約法の制限(8条・10条。解除に伴う損害賠償の額の予定や違約金は9条1項1号)に注意が必要です。
紹介者の投稿の条文例(一般的な例)
1紹介者は、本制度に基づく紹介の投稿を行う際は、投稿の冒頭又はこれに準ずる読み手が最初に目にする位置に、報酬を得て行う広告であることが明確に分かる表示を付ける。
2紹介者は、当社が提供した紹介文及び画像を、当社が別に定めるガイドラインの範囲を超えて改変してはならない。
3紹介者は、当社のサービスについて、効果又は成果の断定、事実に反する説明、実際の利用に基づかない体験談、他社との比較その他当社が禁止する表現を用いてはならない。
4紹介者は、紹介に用いるアカウントを当社に登録する。当社は、紹介者の投稿を確認することができ、本規約又はガイドラインに反する投稿があるときは、削除、修正その他の措置を求めることができる。
5紹介者が前各項に違反したときは、当社は、紹介報酬の保留若しくは不支給、紹介リンクの停止又は登録の抹消をすることができる。
ガイドラインを規約の外に置く場合は、規約から「ガイドラインに従うこと」を引用し、ガイドラインの変更も、規約の変更と同じ周知の手続によると書いておきます。
もう一つ、友達紹介の制度で問題になりやすいのが、紹介先の個人情報です。紹介者に、友人の氏名やメールアドレスを入力してもらう方式は、事業者が、紹介先の本人から直接ではなく、第三者から個人情報を取得することになります。個人情報保護法は、個人情報を取得した場合の利用目的の通知又は公表(21条1項)と、個人データの第三者提供の制限(27条1項)を定めています。紹介者が友人の情報を事業者に提供することについて、友人本人の同意を得ているかが問題になります。このため、制度の設計として、紹介者が友人に自分でリンクやコードを送り、友人が自分で申込みをする方式にすると、事業者が第三者から個人情報を受け取る場面を避けられます。入力方式を採用する場合は、紹介者に、本人の同意を得ていることを約束させる条と、事業者側の利用目的の通知の手順を置きます。
規約を公開する前の点検表と、起きがちなこと
紹介制度の規約を作る前に決めておきたい問い(一般的な例)
紹介者は、既存の顧客か、不特定の個人か、事業者か。
規約の相手方によって、消費者契約法やフリーランス法の適用の可能性が変わります。
紹介者に渡すのは、金銭か、ポイントか、割引か、サービスの無料期間か。
報酬の性質で、返還の方法、相殺、支払の条件の書き方が変わります。
セルフバックは認めるか。認めないなら、自己の範囲はどこまでか。
家族、同居者、法人と代表者、友人同士の相互紹介の扱いを、先に決めておく必要があります。
紹介者を紹介した人にも報酬を出すか。参加に費用や商品の購入を求めるか。
どちらかを入れる場合は、連鎖販売取引の要件に当てはめて確かめます。
紹介者の投稿を、事業者は確認できるか。違反があったとき、何ができるか。
広告表示の義務を守らせるための、確認と措置の手段になります。
規約の点検表
- 規約を契約の内容とする旨の同意が、登録の画面で得られる設計になっているか。
- 規約の変更の方法(周知の時期、効力発生日、既存の紹介の扱い)が書かれているか。
- 登録の拒否と抹消の事由、未成年者の扱いが書かれているか。
- 紹介の特定の方法(リンク、コード、有効期間、優先順位)が書かれているか。
- セルフバックと家族名義の扱いが、自己の範囲を含めて書かれているか。
- 報酬の発生の時期、返還の事由と期限、相殺、支払の条件が書かれているか。
- 多段階の報酬を出さないこと、参加に負担を求めないことが書かれているか。
- 広告表示の義務、改変の制限、禁止表現、違反時の措置が書かれているか。
- 金額に、税込か税別かが明記されているか。
規約は、制度が走ってから直すと、すでに登録した紹介者との間で、変更の手続が必要になります。登録の前に、報酬、返還、セルフバック、多段階、投稿の五つを決めておくと、後の変更が少なくなります。制度が終わるとき、紹介者との関係をどう終わらせるかは、契約の終わらせ方:終了の後に残るお金・お客様・表示の考え方が参考になります。
よくあるご質問
紹介制度の規約は、個別の契約書ではなく、規約でよいのですか?
不特定多数の個人が登録し、条件が全員同じ制度なら、規約の形をとるのが一般的です。このような規約は、民法の定型約款に当たる場合があり、契約の内容とする旨の合意や表示、変更の方法が民法548条の2から548条の4に定められています。登録画面で規約の全文を見られる状態にして同意を得ること、規約の変更の周知と効力発生日を定めておくことが基本です。
セルフバックを禁止するには、何を書けばよいですか?
自己の申込みには報酬を支払わないこと、「自己」の範囲(紹介者本人、代表を務める法人、実質的に紹介者が意思決定をした者など)、疑いがあるときの報酬の保留と資料の提出、不正と認められたときの不支給と返還を書きます。家族の名義を一律に除外すると、家族への正当な紹介まで排除するため、実質的な判断の基準を置く方法があります。
紹介先が解約したとき、紹介者に報酬を返してもらえますか?
規約に返還の事由、期限、方法が書かれていれば、それに従って請求できます。書かれていないと、不当利得(民法703条)など一般の規定によることになり、争いになりやすくなります。紹介者が個人の事業者で、業務の委託と評価される場合は、フリーランス法5条1項2号との関係も確かめます。返還の事由を紹介者の側の事情(虚偽の説明、規約違反、不正な申込み)に絞ると整合を保ちやすくなります。
紹介者の紹介者にも報酬を払うと、問題になりますか?
報酬が連鎖するだけで連鎖販売取引になるわけではありませんが、特定商取引法33条1項は、特定利益を収受し得ることをもって誘引し、特定負担(商品の購入、役務の対価の支払、取引料の提供)を伴う取引をするものを連鎖販売業としています。参加の費用、商品の購入の条件、収入をうたう募集がある場合は、要件に当てはめて確かめる必要があります。規約では、多段階の報酬を出さないこと、参加に負担を求めないことを明記する方法があります。
紹介者のSNS投稿に、広告である旨の表示を義務づける必要がありますか?
報酬を得て行う紹介は広告です。景品表示法5条3号に基づく指定により、事業者の表示であることが判別しにくい表示は規制の対象となり、責任は主に広告主である事業者に及びます。規約で表示の義務、表示の位置、改変の制限、禁止表現、違反時の措置を定め、紹介者に守らせる必要があります。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、取引の実態や当事者の立場によって変わることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索 / 公正取引委員会 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 特許庁