独占販売契約書:独占・テリトリー・販売目標・競業避止

独占は、独占の対価として何をするかと、どういうときに独占が外れるかを、セットで書きます。

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無条件の独占は有利に見えて、相手方に義務がなければ守られない約束になり得ます。

このページの要点

  • 独占の範囲(地域・商品・販路・期間)と、地域を特定する書面を決める。本人の直接営業を止めるなら例外を具体的に書く。
  • 独占を受ける側の義務(誠実な販売・状況の共有・過度な値引きをしない)を書き、双務にする。
  • 一定期間売らなければ非独占に切り替わる、重大な違反で独占を解除できる、など外れる条件を置く。
  • 競業避止は、期間・地域・対象を限る。秘密情報を使った競合に絞る、場所に絞るなどの型がある。

結論:独占は「対価」と「外れる条件」をセットで書く

独占販売契約は、ある地域・ある商品・ある販路で、販売の権利を一社だけに与える契約です。独占を受ける代理店は、他の代理店や本人自身との競争を気にせずに投資できます。本人は、売る力のある代理店に力を集中させられます。けれども、独占は相手方以外の販路を閉じることでもあるので、独占を受けた代理店が売らなければ、本人の売上はその地域で止まります。

事務所が独占の条項を作り、又はレビューするときは、次の点をセットで確かめています。

  1. 独占の範囲:地域・商品・販路・期間。地域の特定の方法(都道府県、市区町村、半径など)と、その書き方の置き場所(本文か別紙か)。
  2. 本人ができること・できないこと:本人の直接の営業、他の代理店への許諾、例外として認める場面。
  3. 独占の対価として代理店が負う義務:販売の努力、販売の状況の共有、最低の販売量など。
  4. 独占が外れる条件:重大な違反、一定期間の不実施、目標の未達など。外れた後の扱い(非独占への切替えか、契約の終了か)。
  5. 競業の禁止:代理店が契約中・終了後に同種の商品を扱えるか。期間・地域・対象の限定。

フランチャイズや認定の制度の地域の調整も、このページで比べます。フランチャイズ本部の契約書全体はフランチャイズ契約書、認定の制度は認定店・分室・のれん分けで扱います。

都道府県単位の独占販売代理店と、独占の条件がない独占再販

求人媒体の運営会社が、都道府県単位で独占の販売代理店を置く契約では、代理店がお客様と契約して代金を回収し、売上から自分の報酬を差し引いた残りを本部に送金する作りでした。独占の条項は、次のように書いています。

独占の条項の構成(求人媒体の独占販売代理店)

1本部は、別途合意により特定した都道府県において、代理店に独占的な販売権を付与し、第三者に販売権・代理権・紹介権を許諾せず、本部自身も当該地域で直接の営業をしない。

2前項にかかわらず、全国の媒体への掲載に伴って避けられない営業、公共団体などからの受動的な依頼への対応、法令などに基づく行為は、独占の対象外とする。

3代理店が当該地域の外で営業するときは、別途書面で合意する。

4代理店に重大な違反があり、是正されないときは、本部は独占権の全部又は一部を解除し、又は停止することができる。

条文の構成を説明するための要約です。この契約には、最低の販売数量の定めは置いていません。

本人自身の直接の営業まで止める書き方は、代理店にとって強い保護になります。そのぶん、例外(全国の媒体に伴う営業、受け身の依頼)を具体的に書いておかないと、本人の通常の事業まで独占違反と言われかねません。地域は「別途合意で特定」としているので、合意した地域を書いた書面を、契約と一緒に保管しておくことが前提になります。

同じ契約では、代理店が業務を再委託することと、契約上の地位を譲ることを、本部の承諾なしにはできないとしました。独占を受けた代理店が地位を譲ったり、下の代理店に地域を任せたりできると、本部の知らないうちに独占が第三者に移ってしまうので、それを防ぐ定めになります。期間は1年の自動更新とし、更新した後に限り、相当の理由があれば30日前の予告で途中で終わらせることができるとしています。最初の1年は独占を確実に守り、更新後は見直しの余地を残す、という期間の組み方です。独占の地位の重さに応じて、期間と途中で終わらせる方法を決めておきます(契約の終わらせ方)。

反対に、独占の条件がないまま独占を与えた原案もあります。海外のクラウドサービスを日本で独占的にホワイトラベルで再販する契約のレビュー(再販する側からの依頼)では、日本全国・全業種・全チャネルの独占を与えながら、最低の販売義務・努力義務・売上の目標・独占を維持する条件がないことを指摘しました。再販する側が売らない場合の扱いも、提供する側が独占を外せるかも分からず、重大な仕様の変更や機能の停止が独占の違反に当たるかも判断できません。再販する側の要望で作った改良が他社に提供されれば、独占との関係も問題になります。再販する側にとって有利に見える「無条件の独占」も、提供する側の義務がなければ、実際には守られない約束になり得ます。

独占の範囲を、地域ではなく期間や商品のカテゴリで区切る書き方もあります。海外の翻訳出版の会社が漫画家から翻訳と海外配信の独占のライセンスを受ける契約(英文の契約の日本語訳)では、独占の地域を日本を除く全世界とし、掲載から1か月を「完全独占期間」として、その後は作家が日本の配信サイトで日本のお客様に限り、非独占で販売できるとしています(ライセンス契約書)。キャラクターの商品化の個別の契約で、権利者が類似の商品を競合や第三者に許諾しないことを禁止事項に入れ、実質的にカテゴリの独占にしている例もあります。

独占の対価として負う義務と、不実施なら非独占に切り替える書き方

作家の作品の販売窓口を独占にした契約(代理店契約書の種類で紹介した取次販売の案件)では、作家は有効期間中、販売窓口を窓口会社に独占的に委託し、自分で又は第三者(画廊・ギャラリー・ECサイトの運営者を含む)を通じて新たな窓口を設けないとしました。この独占の書き方には、いくつかの工夫があります。

  • 目的を書く:独占の目的を、価格の維持と市場の混乱の防止によるブランドの価値の保全と明記しました。
  • 範囲を限る:期間は有効期間、対象は販売窓口に限り、創作や講演は縛らないとしました。
  • 双務にする:独占の対価として、窓口会社は、誠実な販売、販売の状況の共有、作家の直販に手数料を取らないこと、過度な値引きをしないことを義務として負うとしました。ご説明書では、片方だけが縛られる独占は優越的地位の濫用(独占禁止法2条9項5号)の議論を招くため、双務にしたと説明しています。
  • 関連する行為の調整:確定版で、作家が自分で増版や新しい商品を企画するときは、事前に窓口会社と協議して合意を得る、という定めを加えました。既に確定していた企画は別紙で除外し、創作の活動を制限しない旨の項には「次項に定める行為を除く」と書き添えて、二つの項が矛盾しないようにしています。

独占の違反の効果も、範囲を限って書きました。この契約の違約金は、窓口の新設、価格の協調を怠った直販、窓口を通さない案件の遂行、秘密の漏えいの4つの類型に限り、額は違反の時までに発生したプロモーションの費用の累計に連動させ、損害賠償の額の予定としての最低額とし、それを超える損害は請求できるとしています。独占を受ける側が独占のために費やした費用を基準にすると、違約金の額の説明がしやすくなります。

共同開発のための資金の提供と、ノウハウの使用の許諾を定める基本合意では、当初の案はメーカーが専門家の既存の知見を「非独占的に」使える形でしたが、改訂後は、衛生用品のカテゴリの対象製品に限って「独占的」とし、メーカーが販売を始めない場合、又は連続12か月以上販売しない場合は、自動的に非独占に切り替わるとしました。独占の対価が「売ること」であるなら、売らないときに独占が外れる条件を置く、という書き方です。

独占を与えない書き方も、はっきり書いておきます。クラウドサービスの販売代理店契約は、販売の地域を全世界とし、承諾は不要、対象のお客様の制限もない非独占の作りです。採用支援の営業代理の契約では本人が第三者に同種の業務を自由に委託できるとし、工事関連の営業代行の契約では独占的な営業権は与えないとしています。定期購読の商品の訪問営業代行の契約では、営業の区域を、当初の案の地域名から「委託者が別途書面又は電子記録で指定する地域」に改め、対象は委託者が指定した販売店に限り、区域の外の営業を禁じています。区域を契約の本文に書かずに指定書で動かせるようにすると、区域の変更のたびに契約を作り直さずに済みます。

フランチャイズ・認定の制度の地域の調整

フランチャイズや認定の制度でも、地域の扱いは書き方がいくつもあります。

地域の調整の書き方の比較
書き方内容事務所の資料での例
独占の営業地域と例外「独占営業地域」と定義し、加盟店の書面の承諾なしに本部は出店しない。期間限定のイベント・実証実験・提携先との共同事業は、協議のうえ例外として営業できる店舗型サービスのフランチャイズ(依頼者の原案の改訂)
書面で明示した場合だけ独占営業のエリアは本部と加盟店が協議して本部が指定・承認する(市区町村・商圏の単位も可)。エリアの外で継続的に営業するときは事前に相談。独占は書面で明示した場合だけ施工型の商材のフランチャイズ
本部は制限されないエリアの独占の有無は個別の書面で定め、本部は加盟店の地域でも直営店・他の加盟店・他の販売代理の契約を置ける住宅用の設備の販売・施工のフランチャイズ
認定しない方式独占権を与えるのではなく、本部の所在地から半径2km以内、既存の認定店から一定の距離以内の新しい拠点は認定しない。距離は地図のサービスで直線距離を測る施術の技術の認定店の規約

フランチャイズの地域の条の改訂

店舗型サービス

依頼者の原案半径10kmの範囲に本部は直営店・他の加盟店を出さない。合意があれば例外。
改訂後「独占営業地域」と定義し、加盟店の書面の承諾なしに出店しない。期間限定のイベント・実証実験・提携先との共同事業は、協議のうえ例外として営業できる。

例外を、何をするときの例外かが分かるように具体化しています。

施工型の商材

当初の案独占的な営業地域はない。本部は地域に関係なく加盟の許諾・直営ができ、重なりが大きいときは調整に努める。
改訂後営業のエリアは協議して本部が指定・承認する(都道府県に限らず市区町村・商圏の単位も可)。エリアの外で継続的に営業するときは事前に相談。書面で明示した場合だけ独占。

独占を原則にせず、個別に書面で与える方式に改めています。

店舗型サービスのフランチャイズでは、競業避止は終了後2年・半径10kmで両方の版とも同じですが、改訂で、役員・従業員・親族・実質的な支配者を使った潜脱も禁じました。地域の独占を与える側も受ける側も、名義を替えて同じ地域で営業することを防ぐ定めは、独占の条とあわせて置いておきます。

店舗型サービスのフランチャイズの改訂では、地域の条で「独占営業地域」を定めながら、別の条ではブランドの使用権を「非独占的かつ譲渡不能」としています。ブランドの使用の許諾が非独占であることと、出店の地域を独占にすることは両立しますが、読む人が混乱しないよう、何について独占で、何について非独占なのかを書き分けておくことが大切です。認定しない方式は、独占を約束しないまま既存の拠点を守る書き方で、本部にとっては、独占を侵したときの責任を負わずに済む利点があります。

販売目標・ノルマの書き方

独占を与えるなら販売目標を、と考えるのが自然ですが、事務所の資料では、目標の未達に強い効果を持たせない書き方が目立ちます。

販売目標・ノルマの書き方

食品ブランドの販売店

当初の案から毎会計年度に本人と協議して目標の数量を決め、最大限の努力をする。
改訂後(同じ)未達のときの効果は定めていない。

努力義務にとどめる書き方です。目標を決める手続(協議)は書いてあります。

住宅用の設備のフランチャイズ

当初の案販売のノルマとその達成のための業務を定め、ノルマの3回の未達を更新の拒絶と解除の事由にする。
改訂後ノルマを削り、「品質基準及び営業方針に沿って、誠実に営業活動を行う」に改め、更新の拒絶と解除の事由からもノルマを外した。

数量の義務から、営業の仕方の義務に切り替えています。

学習コーチングの会員紹介の原案のレビューでは、紹介する側の紹介の義務(量・頻度・専属かどうか)が特定されていないことを指摘し、最低の活動量にするのか努力義務にするのかを明確にするよう求めました。海外のクラウドサービスの独占再販のレビューでも、独占なのに最低の販売義務がないことを指摘しています。最低の数量を置くなら、未達のときに独占が外れるのか、契約が終わるのか、差額を補償するのかまで書いておかないと、目標の数字だけが残ります。

競業避止の範囲:期間・地域・対象を限る

代理店や加盟店に、契約中と終了後に同種の商品を扱わせない競業避止の条は、範囲が広すぎると、相手方の営業の自由を不当に縛るとして効力が争われます。事務所の資料には、広い型から狭い型まで、さまざまな書き方があります。

競業避止の書き方の比較
型内容事務所の資料での例
期間+対象+違約罰契約中と終了後2年、同種のサービスの運営・関与・競合先の販売代理などを禁じ、違約罰と超える損害の賠償。無効のおそれがあるときは協議で「最も実効性のある義務」に定め直す求人媒体の独占販売代理店
独占禁止法の留保契約中と終了後1年、同種のサービスの販売・仲介・紹介や役員への就任を禁じ、独占禁止法と公正取引委員会のガイドラインに反しない範囲で解釈すると書くクラウドサービスの販売代理店
秘密情報を使った競合に絞る紹介する側の同種の事業は妨げないと確認したうえで、秘密情報・営業情報・ノウハウを使った競合と勧誘だけを禁じる電力関連サービスの紹介(相手方の無限定の競業禁止を修正)
場所に絞る本部が指定する店舗の物件と同じ所在地(同じ建物・同じテナントビルを含む)に限り、終了後2年施術サロンのフランチャイズ
ノウハウを使わない仕事は自由秘密情報・コンテンツを使った競合に限り、期間・地域は定めず秘密性がなくなるまで。本部のノウハウを使わずに一般的な仕事をすることは禁じないオンライン講座のフランチャイズ
期間は長く、違約金は置かない終了後7年、同種の施工の事業、地域の限定なし。違約金はなく、差止めと損害賠償で対応する施工型の商材のフランチャイズ
強化型終了後5年、対象に加盟店の親族、地域は全国と本部の事業の全地域、違約金は1件の固定額と売上の50%の高い方、誓約書の提出住宅用の設備のフランチャイズ(改訂で強化)
提供するノウハウの範囲に限るノウハウを提供した専門家は、類似の衛生用品の開発・販売を契約中と終了後2年しない。専門家の本来の活動や一般的なハーブの製品は除く共同開発とノウハウの使用許諾

定期購読の商品の訪問営業代行の契約は、競業避止の期間と違約金を改訂ごとに調整した例です。終了後の競業避止と引き抜きの禁止の期間は、当初の案の2年から、1年、18か月と変わり、最後に競業避止の条も18か月にそろえました。違約金も、当初の案の「競業の違反1回につき定額」から、原則は実際の損害の額とし、私文書の偽造や架空の契約などの不正だけ定額にする形を経て、最終的には類型別(人材の引き抜きは引き抜かれた人の直近1年の総報酬の6か月分、同業他社のための営業代行は実際の損害の額、重大な不正は1回の定額)とし、「違約金の額は平均的な損害の額を勘案して定めた」旨も加えました。違約金の額の根拠を書いておくと、額の相当性を説明しやすくなります。

競業避止は、独占の裏返しでもあります。出張マッサージとホテルの提携では、事業者が、ホテルの施設と競合する地域・形態で同業他社と契約することを制限する専属に近い条を、改訂で加えました。工事の指定番号の提供の提携では、番号を提供する側だけが第三者に番号を提供できず、受ける側は他社と自由に取引できる、片方だけが縛られる形です。どちらが縛られ、その代わりに何を得ているのかを、契約の全体で釣り合わせることが大切です(紹介代理店契約書・業務提携契約書)。

よくあるご質問

独占販売契約で、本人(メーカー)自身の直接販売も禁止できますか?

契約で定めればできます。その場合は、全国の広告に伴う営業や、お客様からの受け身の依頼など、例外として認める場面を具体的に書いておかないと、本人の通常の事業まで独占違反と言われるおそれがあります。

独占を与えるなら、最低販売数量を必ず定めるべきですか?

必須ではありませんが、独占を与える側から見ると、代理店が売らないときの手当てが必要です。最低数量のほか、一定期間売らなければ非独占に切り替わる、重大な違反で独占を解除できる、といった外れる条件を置く書き方があります。

テリトリー(営業地域)は、契約書の本文に書くべきですか?

本文でも別紙でもかまいませんが、どの書面で特定したのかが分かるようにしておきます。変更が多いなら、本人が書面で指定する地域とし、指定の方法と通知を契約で決めておく書き方もあります。

代理店の競業避止は、どこまで定められますか?

期間・地域・対象を限るのが基本です。秘密情報やノウハウを使った競合に限る、特定の店舗の所在地に限る、といった絞り方があります。広すぎる競業避止は、相手方の営業の自由を不当に縛るとして効力が争われます。

独占の対価として、代理店に義務を課す必要はありますか?

一方だけが縛られる独占は、取引上の地位の優劣によっては優越的地位の濫用の議論を招きます。誠実な販売、販売状況の共有、過度な値引きをしないことなど、独占を受ける側の義務も書いて双務にしておくと、釣り合いが取れます。

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