代理店契約・業務提携契約の終わらせ方:終了後の手数料・顧客・清算

継続的な契約は、終了の後に残るお金・お客様・表示の扱いを、契約の最初に決めておきます。

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継続手数料を置いたのに終了後の扱いを書いていないと、終了の通知の日から新しい争いが始まります。

このページの要点

  • テールは、対象のお客様(終了前に紹介済みと記録された者など)と期間を限って書く。継続手数料の終わりも決める。
  • お客様の情報・営業のリストの帰属、返還・削除と証明、終了後の勧誘の禁止、移籍への協力を書く。
  • フランチャイズからの離脱では、解決金の対価として競業避止などの制限の消滅と清算を明記する。
  • 責任の上限は報酬の一定期間の総額が多い。違約金は対象を限り、実際の損害との関係を明記する。

結論:終了の「後」に残るお金・お客様・表示を、契約の最初に決めておく

代理店契約・紹介契約・業務提携契約・フランチャイズ契約は、継続的な契約です。契約が終わっても、代理店が紹介したお客様は本人との取引を続け、加盟店のお客様の情報は手元に残り、店舗の看板やWebの表示も残ります。終了の時に何を清算し、何を返し、何を続けてよいのかを決めていない契約では、終了の通知を出した日から新しい争いが始まります。

事務所の資料から見えてくる、終了の時に決めておくことは次のとおりです。

  1. 終了後の手数料(テール):終了の前に紹介したお客様が終了後に成約したら払うか。継続の手数料はいつまで払うか。
  2. お客様と情報:お客様の情報・営業のリスト・成果物は誰のものか。終了後の勧誘の禁止、返還・削除。
  3. 在庫と表示:売れ残りの在庫、販促物、看板・Web・SNSの表示の撤去の期限。
  4. 離脱の清算:競業避止などの制限を、終了の合意でどう扱うか。
  5. 期間・更新・解約・解除:いつ、どの方法で終わらせられるか。
  6. 責任の上限と違約金:終了をめぐる損害の賠償の範囲。

手数料の戻しと終了時の清算の期限は手数料②で、終了後の表示の比較は商標ライセンス契約書で扱いました。ここでは、それ以外の論点を順に紹介します。

終了後の手数料(テール)と、継続手数料の終わり

テール(テールコミッション)とは、契約の期間中に紹介・営業したお客様が、契約の終了後に成約したときに払う手数料です。紹介する側から見ると、成約の直前で契約を終わらせられて手数料を取りそこなうことを防ぐ定めです。

テールの定めの比較
契約定め見るべき点
採用支援の営業代理・紹介(委託者の側で作成)原則として終了後の手数料はない。ただし、期間中に登録済みで、終了の時に商談が続いていると管理されていたお客様が、終了後2か月以内に成約すれば対象。受託者の責めによる解除や、営業への協力の中断のときは対象外対象を「登録済み」かつ「商談継続中と管理」のお客様に絞り、期間も短く区切っている
営業代行の契約(受託者の側のレビュー)契約中に営業したお客様が、終了後に成約の要件を満たしたら報酬を払う受託者にとって重要な保護の定め。同じ相手方の広告取扱の契約にはこの定めがない
学習コーチングの会員紹介(紹介を受ける側のレビュー)原案にテールはなく、終了直後の成約に紹介料が出ない紹介を受ける側が3か月前の予告の中途解約や更新の拒絶で支払を免れ得る。紹介する側からテールを求められたら、「終了前に紹介済みと記録された者が終了後○か月以内に成約した場合」に限る、という交渉の勘所を記載
配信プラットフォームの多層の代理店所属するクリエイターが退所した時点で報酬の対象外。終了の時点で有効に管理しているクリエイターの分だけ払い、プラットフォームの判定で除外された分は払わないテールを置かず、終了の時点を唯一の基準にしている

条文例:対象を限ったテール(考え方を示すための例)

1本契約の終了前に乙が甲に紹介し、甲の顧客管理において紹介済みとして登録された見込み客が、本契約の終了日から2か月以内に甲との契約を締結したときは、甲は、当該契約について本契約の定めに従い手数料を支払う。

2前項の規定は、乙の責めに帰すべき事由により本契約が解除された場合、及び乙が終了前に当該見込み客に関する営業への協力を正当な理由なく中止した場合には、適用しない。

3第1項の手数料の支払が完了したときは、甲及び乙の間の手数料に関する債権債務は、すべて清算されたものとする。

期間の長さは、商談から成約までにかかる期間を目安に決めます。

継続の手数料(お客様が支払うたびに発生する手数料)を置いた契約では、終了との関係がさらに問題になります。月額のサービスのアフィリエイト型の代理店の「紹介したユーザーが支払う限り払う」という定め、配信事務所のスカウトの代理店の報酬の分配、配信事業者の紹介者の「紹介したクリエイターの収益の10%」、相互送客の契約の紹介の分、いずれも、契約の終了の後も続くのかを書いておかないと、終了の後に「まだ払われるはず」「もう払わない」の争いになります。継続の手数料は、終了の時点で止める、終了後一定の期間に限って払う、終了後も払い続けるが一括で清算できる、のどれにするかを選んで書きます。

お客様の情報・成果物の帰属と、移籍への協力

工事関連の営業代行の契約では、お客様の情報・名刺・営業のリストは発生と同時に委託者に帰属するとし、終了後1年間は委託者のお客様への勧誘を禁じ、終了の時には委託者の名義・名刺・メールアドレスの使用をやめ、データを返還・削除して、その証明を出させるとしました。営業代行と広告取扱の2契約のレビューでも、終了の時に、委託者が提供した情報と受託者が作った商談の履歴などは委託者に帰属し、受託者が自分の媒体で取得した情報などを除いて、受託者は再利用できない、という原案の定めを確かめています。どの情報が誰のものかは、「受託者が自分の媒体で取得した情報」のような除外を含めて書いておくことが大切です。

人が移る場面では、移籍への協力の定めが要ります。二次代理店の事務所とクリエイターの新しい契約では、終了後は原則5営業日以内に一次代理店へ登録の解除を申請し、未払金などの争いを理由に移籍への協力を拒まない、としました(二次代理店・多層代理店)。配信プラットフォームの本部と代理店の契約では、終了の時に、クリエイターが希望すれば本部が運営する事務所へ移籍できるとしています。お金の争いと人の移籍を切り離す書き方は、移る人の自由を守り、事務所の側も不当な引き止めと言われることを避けられます。

リフォームの送客サイトの契約では、紹介したお客様のリストなどはサイトの側に帰属し、契約中と終了後2年間はサイトの取引先との直接の契約や競業を禁じています。パーソナルジムのフランチャイズの改訂では、終了の時に、他の加盟店への引継ぎを希望するお客様がいれば、そのお客様の同意を得て情報を提供できる、という任意の定めを置きました。お客様の情報を誰が持ち続けるかは、お客様本人の意思とも関わるので、同意を得て引き継ぐ方法を用意しておくと、終了の時のお客様の不安を減らせます。配信事務所とスカウトの代理店の契約では、終了後に所属するクリエイターを引き抜くことや連絡をとることを禁じ、違反には定額の違約金を定めています。

終了の時の清算の手順(事務所の資料から)

  • 未払いの手数料・報酬:いつまでに払うか(医療関連の紹介報酬の契約では、終了後30日以内)。
  • 手数料の戻し:次の支払から差し引く方式なら、終了の時点で打ち切るのか、残りを返してもらうのか。
  • お客様の情報・データ:返還・削除の期限と、その証明の提出(施術サロンのフランチャイズでは7日以内に返還・消去して証明書)。私物の端末やSNSの履歴に残った情報も対象にするか。
  • 名義・アカウント:本人の名義・名刺・メールアドレス・SNSアカウントの使用の停止、返還、パスワードの変更。
  • 表示:看板・Web・地図サービス・SNSの表示の撤去の期限(認定店では7日、指導メソッドの認定では14日)。
  • 登録と移籍:上の層の代理店への登録の解除の申請(二次代理店の契約では原則5営業日以内)と、移籍への協力。
  • 在庫と販促物:売り切る期間を認めるか、本人が引き取るか、廃棄するか。
  • 存続する条:秘密保持・競業避止・引き抜きの禁止・終了後の手数料など、終了後も続く条を、条の番号で列挙しておく。

フランチャイズからの離脱:解決金で競業避止を消す合意

別の本部のフランチャイズの加盟店だった依頼者が、自分の講座の事業を始めるにあたって、元の本部との加盟店契約と物品販売・役務提供の契約を終わらせる合意書を作った案件があります。元の契約には競業避止の義務があり、そのままでは新しい事業が競業に当たるおそれがありました。

離脱の清算の合意の構造
元の加盟店解決金を払う
解決金
元の本部制限の終了と清算に応じる

解決金の対価は、契約の終了、競業避止その他の事業活動の制限の終了、ロイヤリティなどの支払義務の終了と、一切の権利義務の清算です。

  • 対象の契約:加盟店契約と物品販売・役務提供の契約、それに付随・関連する一切の合意を対象にしました。
  • 制限の消滅:競業避止・競合の禁止・再加盟の禁止・営業の制限の義務と、それに対応する権利が、合意の成立と解決金の支払で消え、元の本部は、元の加盟店が教育の事業などを独自に行うことに異議を述べない、としました。
  • 一般的なノウハウ:特定の知的財産として保護されない一般的な知識・技能・教育の手法・営業の手法・人のつながりは、元の加盟店が自由に使えることを確認し、教材・商標などの権利は侵害しないとしました。
  • 清算と秘密:双方が請求権を放棄して債権債務がないことを確認し、相互の誹謗中傷を禁じ、合意の存在・内容・交渉の経緯・相手方の公になっていない情報を秘密としました。

この合意の秘密保持は、依頼者が新しい事業で結ぶ契約にも影響しました。新しい講座で外部の講師と結ぶ業務委託契約と秘密保持契約では、講師が「加盟店ではない」ことを定義の中で明記し、秘密情報に、本部が第三者と「締結し、締結しようとし、又は締結していた」フランチャイズ契約(終了の合意を含む)の存在・内容・交渉の経緯を含めました。依頼者が講師に事情を話すことで、元の本部との合意の秘密保持に違反しないよう、講師にも同じ秘密を守らせる手当てです。離脱の合意を結んだら、その後に結ぶ契約の秘密保持の範囲も見直します(フランチャイズ契約書)。

本部の側の不履行で加盟店が契約を終わらせる場合の清算も、決めておきたい点です。パーソナルジムのフランチャイズの改訂では、加盟店が催告して解除し、又は催告なしに解除したときは、本部は、まだ提供していない使用許諾と標準の支援に相当する額を返す、としました。加盟金やロイヤリティを「いかなる理由があっても返さない」とだけ書くと、本部の不履行で終わった場合にまで返さないと読めてしまうので、終了の事由ごとに清算を分けておくことが大切です。

期間・更新・解約・解除の設計

期間と終わらせ方の書き方の比較
契約期間・更新途中で終わらせる方法
工事案件の紹介自動更新は通算5年まで本人の支払が30日以上遅れたら紹介者が解除できる
出張買取の業務提携1年ごとの自動更新で通算5回まで。条件の変更は60日前に通知し、まとまらなければ従前の条件で更新—
配信事務所のスカウトの代理店5年。満了の6か月前までに申出がなければ2年ずつ延長—
採用支援の営業代理・紹介1年・自動更新なし30日前の予告で任意に解約
求人媒体の独占販売代理店1年の自動更新更新後に限り、相当の理由があれば30日前の予告で途中で終了。代理店の送金が10営業日を超えて遅れたら、催告のうえ解除
配信プラットフォームの多層の代理店当初の案の1年の自動更新から、最後は3か月・更新の規定なしに改訂所属するクリエイターが0人のときだけ、2か月前の書面の通知で解約

任意の解除の書き方にも注意が要ります。任意の解除を「通知の後、相手方から異議がなければ解除が成立する」と書くと、異議が出れば解除できないとも読めます。任意に解除できる権利(通知すれば終わる)なのか、合意で解除する(相手方の同意が要る)のかを、はっきり書き分けておきます。任意の解除を認めるなら、予告の期間と、解除によって相手方に生じた損害を誰が負うかもあわせて決めます。出張マッサージとホテルの提携では、任意の解除は3か月前の通知とし、相手方に生じた損害は通知した側が負う、としています。SNS運用の制作会社と広告代理店の契約では、自動更新を3か月単位とし、途中で解約するときの違約金を残りの期間の月額報酬の総額の50%としました。工事の指定番号の提供の提携のように、期間の定めを置かず、30日前の通知で解約できるとする作りもあります。

当事者の倒産などで続けられなくなったときの終わり方を決めておく例もあります。医療関連のプラットフォームと個人の紹介者の契約では、改訂で、プラットフォームの運営者・紹介者・プラットフォームの運営主体のいずれかが倒産などをしたときは契約が当然に終わり、逸失利益などは責任を負わないが、既に確定した金銭の債務は除く、という条を設けました。勤務先・家族・宗教・風評などの外部の要因による損害を免責する条も、同じ改訂で置いています。

解除の事由の広さも、相手方の立場では重要です。営業代行会社が受けた営業代行の契約のレビューでは、初期2年・その後1年ごとの自動更新で、途中で終わらせるには双方の合意が要る作りに、催告なしの即時解除の事由として「その他各号に類する不信用な事実」という抽象的な号があり、受託者は固定費を自分で負担し最低の保証もない、という組合せの非対称を指摘し、是正の期間と解除の事由の具体化を求めました。同じ相手方の広告取扱の契約では、自動更新を止める通知が「両方が通知しない限り更新」と読め、受託者だけでは止められない点も指摘しています。電力関連サービスの紹介契約の修正版(紹介する側からの依頼)では、相手方の原契約の「財務状態の悪化のおそれ」「経営陣の交代」「主要株主の異動」「直前1年の成約なし」を解除の事由から外し、倒産・差押え・契約の継続が困難になる組織の再編などに限り、解除の前に生じた報酬の請求権は残り、解除のときもすでに成約したお客様へのサービスを続けるよう努める、としました。

責任の上限と違約金

終了をめぐって損害の賠償が問題になったとき、上限の定めが効いてきます。代理店・紹介の契約の責任の上限は、受け取った又は払った報酬・ロイヤリティの一定の期間の総額を基準にするものが多く見られます。

責任の上限の例
契約上限上限を適用しない場合
文章生成のWebサービスの代理店提供者の責任は、代理店が過去6か月に受け取った成果報酬の総額故意・重大な過失
クラウドサービスの紹介業務紹介者の責任は、その契約年度に提供者が払った報酬の総額故意・重大な過失、秘密保持・知的財産・競業避止・反社会的勢力の条項の違反
採用支援の営業代理・紹介直近6か月の支払報酬の総額又は一定額の高い方。改訂で、法令違反・再委託の違反は別枠の上限にした改訂後は故意・重大な過失と反社会的勢力の違反だけ(秘密保持・個人情報の漏えい・知的財産の侵害は通常の上限)
工事関連の営業代行委託者の責任は、その契約年度に委託者が払った報酬の総額(改訂で委託者の債務不履行による受託者の請求権を明記)故意・重大な過失
配信事業者の紹介通常かつ直接の損害に限り、直近3か月の分配額の総額故意・重大な過失、禁止事項・競業避止・秘密保持の違反
店舗型サービスのフランチャイズ本部の責任は、直近12か月のロイヤリティの総額—
オンライン講座のフランチャイズ本部の責任は、支払済みの加盟金・ロイヤリティの総額—

レビューでは、上限の水準も見ています。海外のクラウドサービスの独占再販では、上限が直近12か月のロイヤリティで、再販する側がお客様に負う損害とかけ離れ、個人情報の漏えいなどを例外にしていないことを、営業代行の契約では、上限が直近6か月の実際の支払額で、契約の初期は上限が低くなりすぎることを指摘し、初期の最低の保証額を求めました。

違約金の書き方も、終了の場面で争いになります。営業代行会社が受けた広告取扱の契約では、受託者が「各条項に違反した場合」に、違反の軽重を問わず既払いの報酬の全額を違約金とし、そのうえで実際の損害の賠償も請求できる、という重ねがけの定めがありました。民法は違約金を賠償額の予定と推定するので(同法420条3項)、違約金と実際の損害の賠償を重ねて請求できる形はその推定と逆の扱いになり、報告書は、民法90条や優越的地位の濫用(独占禁止法2条9項5号・19条)の観点から問題になり得るとして、重大な違反に限る、上限を付ける、違約金と実際の損害のどちらかに一本化する、といった是正を求めるよう助言しています。違約金を置くなら、対象の違反を限り、額の根拠(平均的な損害、費やした費用の累計など)を書き、実際の損害との関係(予定か、それを超える損害も請求できる最低額か)を明記しておきます(独占販売契約書で紹介した類型別の違約金も参照)。

よくあるご質問

代理店契約が終わった後に成約したお客様の手数料は払う必要がありますか?

契約にテール(終了後の手数料)の定めがあれば払います。定めがなければ原則として払いませんが、争いになりやすいので、対象のお客様(終了前に紹介済みと記録された者など)と期間(終了後2か月以内など)を限って、払うか払わないかを明記しておきます。

代理店が持っているお客様のリストは、契約終了後に返してもらえますか?

契約で、お客様の情報や営業のリストが発生と同時に本人に帰属すること、終了の時に返還・削除して証明を出すことを定めておけば、それに基づいて求められます。代理店が自分の媒体で集めた情報などを除外する場合は、その範囲も書いておきます。

フランチャイズの競業避止義務は、契約終了の合意で消すことができますか?

当事者の合意で消すことができます。解決金を払う代わりに、競業避止・再加盟の禁止などの制限が消え、本部は元の加盟店の独自の事業に異議を述べない、と明記した例があります。一般的なノウハウは自由に使えることもあわせて確認しておきます。

代理店契約の損害賠償の上限は、どう決めればよいですか?

受け取った又は払った報酬の一定の期間の総額を基準にする例が多くあります。故意・重大な過失、秘密保持や知的財産の侵害などを上限の例外にするか、契約の初期に上限が低くなりすぎないかも確かめます。

違約金を定めておけば、それとは別に損害賠償も請求できますか?

民法は違約金を賠償額の予定と推定します(民法420条3項)。違約金を超える損害も請求したいなら、違約金が最低額であることを明記しておく必要があります。違反の軽重を問わず違約金と損害賠償を重ねる定めは、公序良俗などの観点から問題になり得ます。

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