ライセンス契約書:技術・ノウハウ・特許・ソフトウェア・著作物の使用許諾

ライセンス契約の中心は、許諾の範囲と、対価の基礎と、それを確かめる手段の書き方です。

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特許の共有者は、契約で別段の定めをしない限り、他の共有者の同意なしに特許発明を実施できます。

このページの要点

  • 許諾の対象・地域・期間・独占か非独占か・再許諾の可否・用途を特定する。対象は名称だけでなく番号や仕様でも定義する。
  • 対価の基礎(純販売価格・卸売価格・純利益・営業利益など)と除く費用を列挙し、必要なら累計の上限を置く。
  • 報告の頻度と、帳簿の閲覧の方法・期間・閲覧する人を決める。
  • 改良したもの・新たに作ったものの帰属と、無償の提供やまとめ売りの扱いを決める。

結論:許諾の「範囲」と、対価の「基礎」と、それを「確かめる手段」を一組で書く

ライセンス契約(使用許諾契約)は、特許・ノウハウ・ソフトウェア・著作物などを、権利者が他人に使わせる契約です。権利そのものは権利者に残り、相手方(ライセンシー)は、契約で決めた範囲で使う権利だけを得ます。特許であれば、特許権者は他人に通常実施権を許諾でき、通常実施権者は設定行為で定めた範囲内で業として特許発明を実施できます(特許法78条1項・2項)。著作物であれば、許諾を得た者は、許諾に係る利用方法及び条件の範囲内で利用できます(著作権法63条2項)。つまり、ライセンス契約の中心は「範囲」の書き方です。

事務所が作成・レビューしてきたライセンス契約から見えてくる、書いておくべき要素は次のとおりです。

  1. 許諾の範囲:対象(特許番号・仕様・製品名など)、地域、期間、独占か非独占か、再許諾(さらに他人に使わせること)の可否、用途。
  2. 対価:一時金(イニシャル)と継続の対価(ランニング)、その基礎(販売価格・純販売価格・卸売価格・純利益・営業利益など)と料率、上限。
  3. 確かめる手段:報告の頻度と項目、帳簿の閲覧・監査の方法・期間・費用。
  4. 成果の帰属:ライセンシーが改良したもの、新たに作ったものが誰のものになるか。
  5. 終わり方:期間の満了・権利の消滅・支配権の移転のときの扱い。

名称・ロゴの使用許諾は商標ライセンス契約書で、フランチャイズのノウハウの使用許諾はフランチャイズ契約書で扱います。ここでは、特許・ノウハウ・ソフトウェア・著作物の順に、事務所の資料を紹介します。

特許の通常実施権の許諾:特許権者の側の書式

製品の特許について、特許権者の側で用意した通常実施権の許諾契約の書式は、ライセンス契約の基本の項目がそろった例です。

特許の通常実施権の許諾契約:主な定め
項目定め定めの働き
許諾の範囲日本国内での製造・販売その他の処分。譲渡不能・非独占・再実施権なし誰が、どこで、何をしてよいかを特定する
対価締結から30日以内のイニシャル・ロイヤルティと、純販売価格に一定率を掛けたランニング・ロイヤルティ一時金と継続の対価を分ける
純販売価格総販売価格から、輸送料・保険料・梱包料・租税公課を差し引いた額対価の基礎から外す費用を列挙する
報告と支払暦年ごとに報告し、年末から40日以内に請求、2か月以内に支払う報告の頻度と支払までの流れを決める
帳簿の閲覧特許権者に疑義があれば、特許権者が指名しライセンシーが同意する公認会計士に帳簿を閲覧させる。閲覧の権利は各報告書の受領から2年間確かめる手段と、その期限を決める
不返還・解約支払済みの対価は返さない。ライセンシーが特許の有効性を争ったときは解約できる有効性を争う相手方との契約を続けない
侵害・改良第三者の侵害の排除の費用は協議。ライセンシーの改良発明は、特許権者に協議した条件で非独占の通常実施権を許諾する改良の成果の扱いを決める
表示・期間特許の表示をする。有効期間は特許の存続期間の満了まで、無効審決の確定で終了権利が消えたときに契約も終わるようにする

帳簿の閲覧の権利に期限(各報告書の受領から2年)を付けると、ライセンシーはいつまでも過去の帳簿を見られる状態に置かれず、特許権者は期限内に確かめる動機を持ちます。閲覧するのを特許権者自身ではなく、両者が同意する公認会計士にしているのは、ライセンシーの取引先や原価の情報を特許権者に直接見せない工夫です。改良発明については、特許権者に非独占の実施権を与えるにとどめ、ライセンシーの改良を特許権者のものにしてしまう書き方は避けています。

共有特許と販売窓口のコミッション

共同で出願した製造方法の特許に関わる製品について、共有者の一方(販売窓口の会社)が、他方(製造を担う会社)の直接の取引にコミッション(手数料)を課す取引基本契約では、相手方の原案をレビューした報告書と、改訂版の契約書を作りました。出発点は、特許の共有者は、契約で別段の定めをした場合を除き、他の共有者の同意を得ないで特許発明を実施できる(特許法73条2項)という点です。

報告書の指摘(販売窓口の側からの依頼)

  • コミッションの根拠共有者は契約がなければ自由に実施できるので、製造を担う会社には、契約がなければ販売窓口に対価を払う義務がない。コミッションは特許の持分から出てくるものではなく、契約の文言からだけ出てくる。
  • 発生の要件原案は、承諾を得た直接の受託だけが対象と読める書き方で、承諾を得ずに取引すればコミッションがかからないと読まれるおそれがある。
  • 対象の定義原案は「本製品」を名称だけで定義していた。
  • 終期原案には存続の条項がなく、1か月前に更新を拒絶すれば、直接の取引を続けたまま契約から離れられた。
  • 独占禁止法販売窓口と承諾制は、共同研究開発に関する独占禁止法上の指針では、成果に基づく製品の販売先の制限として、当事者の市場での地位や制限の期間などを総合的に勘案して判断される事項に当たり得る。対象を共同開発の成果である製品の取引に限り、制約が相手方の事業の全般に及ばないようにする(及べば拘束条件付取引の問題が大きくなる)。

改訂版で定めたこと

コミッションの性格

相手方の原案根拠の定めがない。
改訂後共同開発の成果である製品の取引の対価(特許の登録の有無を問わない)とし、登録後は、承諾制とコミッションが特許法73条2項の「別段の定」に当たる、という二段構えにした。

登録の前でも後でも、コミッションの根拠が契約にあることを明らかにしています。

発生の要件

相手方の原案承諾を得た直接の受託だけが対象と読める。
改訂後承諾の有無を問わず発生する。取引先が実施する権原は、承諾の有無や支払の遅れに影響されない。承諾のない注文は、取引先の同意を得て販売窓口が引き取れる。

承諾をとらないほうが得になる、という逆の動機を消しています。

対象の定義

相手方の原案製品の名称だけ。
改訂後出願番号と特許請求の範囲の製造方法、別紙の仕様(改良を含む)、製品の名称の3層で定義した。直接の取引は委託加工・売買などの形を問わず、関連会社・再委託先の取引も含める。

名称を変えたり、関連会社を通したりしても対象から外れないようにしています。

終期

相手方の原案存続の条項がない。
改訂後終了後3年は、取引をした取引先について発生する。出願が消えても効力は続く。持分を譲り受けた後は発生しない。

契約を終わらせてコミッションを免れることを防いでいます。

販売窓口が他社に製造を委託する場合も問題になります。共有の特許権について他人に通常実施権を許諾するには、他の共有者の同意が必要です(特許法73条3項)。改訂版では、委託先が販売窓口の指揮監督の下で販売窓口のためだけに製造し、全量を販売窓口に納め、自分では販売しない、という「一機関」の要件を委託先との契約で定めることにし、製造を担う会社は、それがライセンスに当たらないことを確認し、登録後についてもあらかじめ同意する、としました。共有者どうしは、特許の持分・費用の分担・第三者への実施の許諾の条件などを別の覚書で定めていたため、改訂版では、特許の管理は覚書により、製品の取引は本契約による、と役割を分けました。覚書の中の「合意又はやむを得ない事情があれば一方が単独で製造販売できる」という定めは、本契約の承諾制に置き換えることを確認し、本契約が終わった後は覚書の定めに戻る、としています。同じ当事者の間に複数の書面があるときは、どの書面が何を決めるのかを書いておかないと、都合のよい書面を持ち出し合うことになります。算定の面では、差し引く「その他の実費相当額」を閉じた列挙にし、関連会社を通す取引は最終の取引先への対価で計算し、取引がなかった期間も報告させ(ゼロ報告)、年1回の閲覧を定めました。違約金や遅延損害金は置いていません。依頼者の方針が、制裁ではなく認識のずれを防ぐことにあったためです。

ノウハウの独占使用許諾と、利益に連動するロイヤリティ

製品のメーカーと、処方や監修を担い開発の資金も出す専門家が結んだ基本合意は、ノウハウの使用許諾と資金の回収を組み合わせた例です。独占から非独占への切替え(独占販売契約書で紹介)のほか、次の点を定めています。

  • 権利の帰属:専門家の既存の知見は専門家に残り、製品の商標・ブランド名・パッケージ・仕様は原則としてメーカーのものとしました。専門家は自分の活動で既存の知見を自由に使え、メーカーは対象の製品の外では使えません。
  • ロイヤリティの基礎:事業の営業利益(EBIT)の30%とし、支払の期間は黒字になってから5年としました。改訂で、累計の上限を「拠出額の5倍」とし、EBITの算定の方法と費用の配賦は別の書面で定める、上限に達しても販売が続くなら継続を誠実に協議する、という定めを加えました。
  • 支払の時期:当初の案と最初の改訂では事業年度の終了後90日以内の年1回の支払でしたが、次の改訂で、黒字になった後は月末締め・翌月末払いの月次に改めました。
  • 支配権の移転のとき:事業やブランドの支配権が移る取引では、「拠出額の3倍」と「未回収のロイヤリティの残高」の高い方を一括で払い、上限は拠出額の5倍としました。改訂で、さらに「譲渡の対価の20%」を上限に加えています。払い終えれば、金銭の支払の義務はすべて終わります。
  • 資金の形式:補助金の申請などの必要があるときは貸付の形にでき、量産が決まったら拠出金に切り替えられるとし、資金の使い道を研究開発・試作・製造の準備に限りました。

営業利益を基礎にすると、売上が伸びても費用がかさめばロイヤリティは小さくなり、費用の配賦の方法しだいで金額が大きく変わります。算定の方法と配賦のルールを別の書面で決めるという定めは、その点をあいまいなまま残さないための手当てになります。累計の上限と支配権の移転のときの一括の支払は、資金を出した側にとっては回収の見通しを、メーカーにとっては負担の上限を、それぞれ示す定めです。

ソフトウェア・クラウドサービスの利用許諾

ソフトやクラウドサービスのライセンスでは、物を渡さずに「使える状態」を提供するので、使える人・使える場所・使える目的の書き方が重要になります。

ソフトウェア・クラウドの利用許諾の例
場面許諾の範囲その他の定め
他社のソフトの使用許諾(ポイントで対価を払う)非独占・譲渡不能・サブライセンス不可・取消可能。日本国内での自己の内部業務に限る対価は前払いのポイント、使用期間は3か月が1単位、月あたりの必要ポイントは使用開始の30日前までに通知。解除されても支払済みのポイントは返さない。賠償の上限は直近6か月分のポイント相当額(故意・重大な過失を除く)
通信の基盤システムとAIサービスの技術提携相手方がエンドユーザー向けのAIサービスを提供する目的に限り、非独占・再許諾不可。クラウドでのアクセスによる利用許諾で、譲渡・貸与ではない。第三者への再提供・転貸は禁止各自がエンドユーザーと個別に契約し、売上の共有・収益の分配はしない。責任の分担の図を別紙にする
システム開発の成果物(受注者の側のレビュー)成果物の著作権は受注者に残し、発注者には自らシステムを使うのに必要な範囲で無償の使用を許諾する受注者が他の案件で改変・再利用・販売できることを明記する追加の条項を提案

ソフトの使用許諾の契約では、改訂で、保守の対応を「翌営業日までに原則として回答」から「一次回答を行い、早期の解決に最大限努力することを目標とする。解決そのものは保証しない」に改めました。回答の期限を約束すると、守れなかったときに債務不履行と言われるおそれがあります。改訂後の書き方は、約束の中身を「一次回答」と「努力の目標」に分けたものです。

海外のクラウドサービスの独占再販のレビュー(販売店契約書で紹介)では、ライセンスの面から、再販する側に与える利用の権利の範囲、契約が終わった後も使えるか、再販する側の要望で作った改良が誰のものになるかが決まっていないこと、お客様のデータについては「帰属」だけが書かれ、提供する側が学習に使ったり統計にしたりしてよいかが書かれていないことを指摘しました。AIを使うサービスでは、データの扱いの書き方が、そのまま許諾の範囲の問題になります。

著作物・商品化のライセンス

著作物のライセンスでは、ロイヤリティの基礎と、無償で提供するときの扱いが争いになりやすい点です。海外の翻訳出版の会社が日本の漫画家から翻訳と海外配信の独占ライセンスを受ける契約(英文の正式な契約の日本語訳で、条項の内容は英語の原文によるもの)では、次の点が特徴です。

  • 逆のライセンス:独占の地域を日本を除く全世界とし、掲載から1か月の完全独占期間の後は、作家が日本の配信サイトで日本のお客様に限り、翻訳されたものを非独占・取消可能なライセンスで販売できるとしています。翻訳の会社から作家へ、逆にライセンスを返す二方向の構造です。
  • 報告と支払:月末から10日以内に報告し、支払は外国の通貨建てで、累計が一定額に満たない間は支払を留保できるとしています。責任の上限は、直近12か月に払ったロイヤルティの総額です。
  • 基礎の明記:ロイヤルティは卸売価格の70%とし、改訂で「卸売価格の70%(販売価格ではない)」と、定義の条と別紙の両方に書きました。
  • 無償の提供の扱い:読者の寄付で翻訳の費用を集める制度について、改訂で、最低の寄付額は卸売価格と同じ額とし、寄付者への無料の提供は「販売」とみなしてロイヤルティの対象にし、卸売価格を超える寄付は分配の対象外とし、制度は作家ごとの任意の参加としました。
  • 募集の説明との整合:依頼者の募集ページには、翻訳された作品の著作権は作家が持つと書かれている一方、契約では翻訳されたものの権利を翻訳の会社に帰属させており、両者の違いを記録しています。募集の段階の説明と契約の条項は、そろえておく必要があります。

キャラクターの商品化権の契約では、枠組みの契約で包括的に許諾し、商品ごとの内容・料率・期間は個別の契約で定め、個別の契約の許可がなければ開発できない、という二層の構造にしました。枠組みの契約は3年で、満了の3か月前までに異議がなければ1年ずつ延長します。個別の契約では、販売先を特定のプラットフォームとその関連先、販売の区域を全世界とし、価格はプラットフォームと協議して決めます。ロイヤリティは純利益の一定割合で、純利益はアプリのストアの手数料・素材の製作費・税金を売上から引いた額とし、1〜3か月ごとに締めて翌々月末に払います。販売のプラットフォームに示す版では、作家が商品化権の管理を任せている事業者の同意を許諾と製造販売の条件にし、支払もその事業者の口座にする定めを加えました。権利の帰属については、開発した商品の権利はライセンシーに帰属するとしつつ、改訂で「提供するキャラクターやイラストの著作権は権利者のもの」と書き加え、原作と開発物を分けています。

アニメの作品の企画展とグッズの著作物の利用許諾(ライセンシーの側の修正)では、商品のロイヤリティの基礎が「希望小売価格(税抜)×製造数量×一定率」で製造数量が基礎になるため、予定の数量を超える追加の製造を事前の承認制にし、権利者は合理的な理由がない限り承認し、10営業日以内に回答がなければ承認とみなすとしました。監査で違約金がかかる差額の基準を5%超から10%超にし、終了後の立入りの監査を1年に限り、不可抗力で企画が中止になったときは許諾料の精算を協議し、権利者の承認を得た素材に基づく利用は権利を侵害しないことの保証の対象から外しています。漫画の原作を映像にする利用許諾(一時金の買切りから売上の分配に組み替えたもの)では、分ける売上を暦月の単位で「購入者からの受領額−プラットフォームの手数料−返金・取消しの額」と定義し、契約は締結の日に効力を生じて制作の期間の利用もカバーする一方、分配の期間は最初の販売開始の日から2年とし、販売開始の日を書面又は電子メールで通知する義務を設け、源泉徴収の条も置きました。さらに、再許諾は書面の同意を条件とし、利用権は著作権を取得した者などの第三者に対抗できる(著作権法63条の2)ことにも触れて、分配金の債務が譲受人に当然には移らないと説明しました。売上を分ける基礎について確かめたヒヤリングの問いは、手数料①で紹介しています。

よくあるご質問

ライセンス契約書(使用許諾契約書)で必ず決めることは何ですか?

許諾の対象・地域・期間・独占か非独占か・再許諾の可否・用途、対価の基礎と料率、報告と帳簿の閲覧の方法、改良したものの帰属、期間の満了や権利の消滅のときの扱いです。

特許の通常実施権と専用実施権の違いは何ですか?

通常実施権は、設定行為で定めた範囲内で特許発明を実施する権利で、特許権者は複数の人に許諾できます(特許法78条)。専用実施権は、設定した範囲内で特許発明の実施を専有する権利です(同法77条)。独占的に使わせたい場合でも、通常実施権に独占の約束を付ける書き方がよく使われます。

共有の特許を共有者の一人が使うのに、他の共有者に対価を払う必要はありますか?

契約で別段の定めをしない限り、各共有者は他の共有者の同意を得ないで特許発明を実施できます(特許法73条2項)。対価を払わせたいなら、契約で根拠を定める必要があります。他人に通常実施権を許諾するには、他の共有者の同意が必要です(同条3項)。

ロイヤリティを営業利益や純利益で決めてもよいですか?

決めることはできますが、費用の範囲や配賦の方法しだいで金額が大きく変わります。算定の方法を別の書面で詳しく定める、累計の上限を置く、といった手当てをしておきます。

ソフトウェアを使わせる契約で、注意することは何ですか?

使える人(自社の内部だけか、エンドユーザーにも使わせるか)、再許諾の可否、データの扱い(学習・統計への利用)、保守の約束の中身、賠償の上限を決めることです。保守の回答の期限を約束するなら、守れなかったときの扱いも考えておきます。

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