このページの要点
- 使ってよい用途(販促物だけか、商品にもか)、事前の承諾、ロゴのマニュアル、再販売先が使うときの手続を決める。
- 登録前は「™」などを使い、登録済みであるかのような表示や第三者への警告をしない(商標法74条・80条)。
- 「公式」「正規代理店」「認定」などの肩書きは、使ってよいか、どの表記かを立場ごとに決める。
- 名称を含むアカウント・ドメインの扱いと、終了後の撤去の期限・経歴の表示の可否を、最初に決める。
結論:「どこに、何を、誰が」表示してよいかを、契約とガイドラインで決める
代理店・販売店・加盟店・認定店に、本人の名称やロゴを使わせる場面は多くあります。そのとき決めておくべきなのは、使ってよい場所(販促物だけか、商品そのものにもか)、使ってよい表示(ロゴの形、「公式」「代理店」「認定」といった肩書き)、使ってよい人(契約の相手方だけか、その先の再販売先や店舗まで含むか)、そして契約が終わったときの撤去の方法と期限です。
登録商標であれば、商標権者は他人に通常使用権を許諾でき、通常使用権者は設定行為で定めた範囲で登録商標を使えます(商標法31条1項・2項)。使用許諾の契約は、この「範囲」を決める契約です。また、通常使用権は、商標権者の承諾を得た場合と相続などの一般承継の場合に限って移転できるとされています(同条3項)。契約で「譲渡不能」と書くのは、この点を当事者の間で確認し、代理店が事業を他社に譲るときにも、商標の使用は当然には引き継がれないことをはっきりさせる意味があります。一方で、商標がまだ登録されていない段階や、名称・肩書きのように商標権の対象にならない表示の管理は、契約とガイドラインでしか決められません。
このページでは、販促物に限った商標の使用許諾、登録前の表示と第三者への対応、「公式」「代理店」「認定」の表示の管理、SNSアカウントやドメインの帰属、終了後の表示を、事務所の資料から紹介します。キャラクターのライセンスの一般的な枠組み(許諾範囲・独占と非独占・再許諾・監修)は、姉妹サイトの解説と重なるため、ここでは名称・ロゴ・肩書きの表示に固有の点に絞ります。
販促物に限った商標の使用許諾
食品ブランドの保有者が販売店と結んだ商標の使用許諾契約は、販売店契約に付けて作ったものです。販売店が自分のお客様に売るための販促にだけ商標を使わせ、商品そのものの表示には使わせない作りにしました。
| 項目 | 定め | 定めの働き |
|---|---|---|
| 範囲 | 日本国内に限り、非独占・譲渡不能・再許諾不可。無償 | 販売店の数を本人が管理できるようにする |
| 用途 | 販促・広報(Web・SNS・印刷物・POP)に限り、商品の本体・パッケージ・ラベルへの使用は禁止 | 商品の表示は本人の管理の下に置き、販売店が独自の商品に商標を付けることを防ぐ |
| 事前の承諾 | 使い始める前に、媒体・文言・デザインの案を申請して書面の承諾を得る | 表示の品質を本人が確かめられるようにする |
| 再販売先の使用 | 再販売先・再委託先に使わせる場合は、使用許諾の申請書による事前の書面の承諾 | 販売店契約の再販売先の承諾制と連動させる |
| 品質の管理 | ロゴのマニュアルの最新版に従い、改訂の通知から10営業日以内に反映する | マニュアルを変えたときに、古い表示が残る期間を区切る |
| 不争 | 商標の有効性を争わず、類似の標章を出願・使用しない | 使用を許された立場を利用した類似の出願を防ぐ |
| 終了 | 使用権は通知なく終わり、印刷物・Web・POP・店舗の表示などから削除・撤去して完了の報告書を出す | 撤去が終わったことを書面で確かめる |
用途を販促物に限ると、本人の管理の外で作られた商品に本人の商標が付くことを防げます。販売店契約の側でも、ロゴのマニュアル(当初は統一のマークに準拠すると括弧書きで書いていたものを、改訂で括弧書きを外した)に従うことを定めています。商標の契約と販売店契約を別々に作るときは、期間の条をどちらに置き、どう連動させるか(販売店契約が終われば商標の使用権も終わる、など)を、両方の契約で明確にしておきます(販売店契約書)。
使用許諾をどの契約に置き、何を対価にするか
名称やロゴの使用許諾は、独立した契約にすることもあれば、代理店契約・フランチャイズ契約・認定の規約の一つの条として置くこともあります。事務所の資料では、使用許諾の置き場所と対価が、制度ごとに違っています。
| 制度 | 置き場所 | 対価 | 許諾の性質 |
|---|---|---|---|
| 食品ブランドの販売店 | 販売店契約とは別の商標の使用許諾契約 | 無償 | 日本国内・非独占・譲渡不能・再許諾不可、販促物に限る |
| 施術の技術の認定店 | 認定店の規約の中 | 月会費を、会員の資格の維持と技術の使用許諾の対価とする(初期の認定料は原則無償) | 非専属。商標の名称・公式のロゴ・認定店の表記などを許す |
| 施工型の商材のフランチャイズ | フランチャイズ契約の中 | 月額定額のロイヤリティに、ブランドの使用・ノウハウ・工法の特許(出願中を含む)に基づく技術の利用の対価を含める | 独占は書面で明示した場合だけ |
| 店舗型サービスのフランチャイズ | フランチャイズ契約の中 | ロイヤリティ | ブランドの使用権は非独占・譲渡不能。出店の地域は別に独占営業地域として定める |
使用許諾を独立した契約にすると、販売店契約が終わっても商標の使用だけが続くのか、反対に商標の契約だけが先に終わるのか、という問題が生じます。期間の条を置き、本体の契約が終わったら使用許諾も終わる、と連動させておきます。対価の中に使用許諾を含める場合(月会費やロイヤリティの中に含める場合)は、使用許諾が終われば対価の支払も終わるのか、ほかの対価と区別できるのかを決めておくと、途中で許諾の範囲が変わったときに困りません。施工型の商材のフランチャイズでは、特許が登録されたらロイヤリティを改定できる(30日前の通知)とし、許諾の対象が増えたときの対価の見直しの手続を置いています(フランチャイズ契約書)。
指導メソッドの認定の制度では、許諾の構造そのものを書いています。権利者から運営の法人が再許諾の権限付きで使用の許諾を受けていることを前提に、運営の法人が、認定を受けた人に、メソッド・教材・認定の表示を、非独占・譲渡不可・再許諾不可で許諾する、という二段の構造です。当初の案では権利者を代表者の個人と名指ししていましたが、改訂で「当社に許諾する権利者」に改めました。地域は限定しないものの、各国で商標の登録や独占が保証されるわけではないこと、理論やアイデアそのものに法令にない排他的な権利を作り出すものではないことも確認しています。許諾する側が自分で権利を持っていない場合は、上の権利者からどの範囲の許諾を受けているかが、下に許諾できる範囲の上限になります。
商標の登録前の表示と、第三者への対応
海外の法人が運営する指導メソッドの認定の制度で、商標・ブランドのガイドラインを作った案件では、日本での商標の登録がまだ確認できない段階であることを前提に、表示のルールを決めました。
- 登録の表示:日本で登録が確認されるまでは「®」を使わず、当面は「™」とし、国際出願の予定だけで登録済みと表示しないとしました。商標法は、登録商標でない商標に商標登録表示又はこれと紛らわしい表示を付けることを禁じ(同法74条1号)、登録商標であることを示す記号として使われる「®」は、この紛らわしい表示に当たり得ます。違反には3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金が定められています(同法80条)。
- 名称を含むアカウント:名称を含むドメイン・SNSのID・商号・屋号は禁止しました。
- 第三者への告知:第三者には契約上の義務は及ばないので、日本で登録される前の段階では、登録商標権に基づく差止めができるかのように告知しないとしました。
見積りの段階の説明では、契約は相手方にしか及ばない(相対効)ので、契約の外の第三者には、登録後の商標法、周知な商品等表示と同一・類似の表示を使って混同を生じさせる行為を不正競争とする不正競争防止法(2条1項1号)、著作権法、一般の不法行為で対応する、と整理しました。依頼者が「罰則」という言葉で考えていたことを、契約の当事者に対するもの(違約金・認定の取消し)と、第三者に対するもの(法令上の根拠が別に必要)に分けたものです。なお、商標の出願の手続の代理は弁理士の業務であり(弁理士法75条)、ガイドラインの作成とは区別しています。
この案件では、規約とガイドラインに加えて、違反を見つけたときに送る警告文のひな形を、契約の当事者向けと第三者向けに分けて作りました。当事者向けは規約の条項(是正の求め・違約金・認定の取消し)を根拠に書けますが、第三者向けは契約を根拠にできないので、法令上の根拠がある範囲に限って書くことになります。同じ「名称を勝手に使わないでほしい」という求めでも、相手が契約の当事者かどうかで、書ける内容が変わります。
「公式」「代理店」「認定」の表示を管理する
代理店や紹介者が勝手に「公式代理店」「正規パートナー」と名乗ると、お客様は本人と直接取引していると誤解し、苦情や返金の窓口が混乱します。事務所の資料では、立場に応じて表示を管理する書き方がいくつもあります。
| 場面 | 定め | 事務所の資料での例 |
|---|---|---|
| 独自に運営する代理店 | 本部の商号・ロゴの無承諾の使用と、「提携」「代理」「公式」などの誤認させる表示を禁止 | 配信プラットフォームの多層の代理店 |
| 紹介だけを頼む受託者 | 「正規代理店」「パートナー」などの表示を禁止 | 採用支援の営業代理・紹介 |
| 受講生 | 卒業生の表示は可、「認定講師」「提携講師」「代理店」「フランチャイズ」「公式スクール」などは禁止 | セラピスト養成スクールの受講契約 |
| 認定店 | 商標の名称、公式のロゴ(改変禁止)、認定店の表記、ビフォーアフターを使った広告(虚偽・誇大・医療に類似した表現は禁止)を許す | 施術の技術の認定店の規約 |
誤認の防止の書き方の改訂(工事関連の営業代行)
誤認の防止
禁止から、説明の義務に切り替えています。営業の現場で、何を言えば違反になるかが分かりやすくなります。
禁止事項
禁止の範囲を、虚偽の表示に絞っています。
名義・ロゴの使用
名乗ってよいことと、名乗り方の両方を書いています。
認定店の規約では、表示の規制として、「治る」「治療」「○○改善」「医学的に証明された」など医療と誤認される表現、加工した写真のビフォーアフター、効果を誤認させるモニターの募集を禁じています。認定の看板を貸す制度では、看板を掲げる店の広告が、本部の信用に直結するからです。同じ規約では、類似の名称の使用を、認定の前・退会の後・失効の後を問わず禁じています。セラピスト養成スクールの受講契約でも、スクール名・講座名・ブランド名と、それに類似し又は誤認・混同される名称の使用を禁じ、模倣の講座を禁止しています。名称の管理は、本物の名称の使い方と、似た名称を作らせないことの両方で考えます(認定店・分室・のれん分け)。代理店の表示と広告の法律上の責任は、代理店・紹介者の営業と消費者向けのルールで扱いました。
SNSアカウント・ドメイン・ロゴと創作したデザインの帰属
名称やロゴの使用と並んで、近年は、SNSアカウントや予約のシステムを誰のものにするかが重要になっています。
- 本部が作って貸す:施術サロンのフランチャイズでは、SNSアカウントと予約の管理システムは本部が作り、加盟店に「貸与する形式で共同使用」させ、運営の主体は本部、終了時は返還し、本部がパスワードの変更などの措置をとれるとしました。
- 名称を含むアカウントの禁止:指導メソッドのガイドラインでは、名称を含むドメイン・SNSのID・商号・屋号を禁じています。終了後にアカウントを取り戻す手間を、最初から生じさせない書き方です。
- ロゴの相互利用:比較サイトとショップの提携では、商標・ロゴの相互利用は提携に必要な範囲で事前の承認を得て行い、終了したらやめるとしました。
- 提供されたロゴと、創作したデザインを分ける:スポーツのクラブのグッズの製作の契約では、クラブ側が提供するロゴ・エンブレム・選手の写真は提供者に帰属し、製作側は業務の目的の外で使用・複製・改変できないとしました。製作側が創作したデザインの著作権は製作側に残し、クラブ側には地域・期間・媒体・回数の制限のない非独占・無償の使用権を与えています。
- 部門の名称の使用:配信事務所とスカウトの代理店の契約では、業務中は事務所の各部門の名称を使ってよいが、業務の外での使用や悪用は禁じ、違反には定額の違約金を定めました。
アカウントやドメインは、お客様の連絡先や口コミが蓄積する場所です。代理店や加盟店が自分の名義で作ったアカウントに本部の名称が入っていると、契約が終わった後もお客様がそちらに流れます。作る前に、名義・運営の主体・終了時の扱いを決めておくことが、最も確実な管理です。
表示を変える費用の負担も、決めておく点です。店舗型サービスのフランチャイズの改訂では、ブランドの変更に伴う看板などの費用を、依頼者の原案の「協議」から、加盟店の負担(本部が負担すると定めた場合を除く)に改めました。本部の都合でロゴや名称を変えるときの費用を誰が負うかは、看板を掲げる側にとって小さくない負担なので、使用許諾の条とあわせて書いておきます。
名称・ロゴの使用許諾で決めておくこと
- 許諾する表示の特定:商標の名称、ロゴ(改変の禁止)、肩書きの表記(「認定店」「正規販売店」など)。
- 使ってよい場所:販促物・Web・SNS・店舗の看板・商品の本体やパッケージのうち、どこまでか。
- 使い方の基準:ロゴのマニュアルやガイドラインへの準拠、改訂の反映の期限、事前の承諾の手続。
- 使ってよい人:契約の相手方だけか、再販売先・店舗・関係する法人まで含むか。含むなら承諾の手続。
- アカウント・ドメイン・屋号:名称を含むものを作ってよいか、作るなら誰の名義で、終了時はどうするか。
- 登録の状況:登録済みか、出願中か、未出願か。登録前なら「®」を使わない。
- 終了時:撤去の期限、完了の報告、過去の経歴の表示の可否、違反したときの違約金。
終了後の表示:撤去の期限と、過去の経歴の書き方
契約が終わった後の表示の扱いは、事務所の資料で書き方が分かれています。
| 場面 | 定め | 事務所の資料での例 |
|---|---|---|
| 販促物の商標 | 印刷物・Web・POP・店舗の表示などから削除・撤去し、完了の報告書を出す | 食品ブランドの商標の使用許諾 |
| 認定店の失効 | 失効したら7日以内に名称・ロゴ・SNSの表示を削除する。違反すれば第三者への周知・通報もあり得る | 施術の技術の認定店の規約 |
| 認定の失効と過去の経歴 | 14日以内にWeb・SNS・地図サービスのビジネスプロフィールなどを修正する。印刷物の回収は求めない。過去の認定の経歴は「○年認定(現在は失効)」と文字で書く場合に限る | 指導メソッドの認定規程とガイドライン |
| 所属の経歴の表示 | 終了後に「元○○所属」のように所属の経歴を示す表示も禁止する | 施術サロンのフランチャイズ |
過去の経歴の表示を許すか禁じるかは、制度の考え方の違いです。所属の経歴まで禁じれば、元の加盟店が本部の名前で集客することを確実に防げますが、事実として学んだ・所属したことまで書けないのは厳しいと受け取られることもあります。経歴の表示を許すなら、「現在は失効」と必ず書く、ロゴは使わず文字だけにする、といった条件を付けると、現在も認定されているという誤解を防げます。
撤去の期限は、短すぎると守れず、長すぎると誤解が続きます。印刷物の回収までは求めず、Webと地図サービスの修正に期限を切る書き方もあります(指導メソッドのガイドライン)。フランチャイズでは、終了後に知的財産を使い続けたときの違約金を、改訂の中で具体的に記入した例もあります(住宅用の設備のフランチャイズ)。終了時の措置全般は契約の終わらせ方で扱います。
よくあるご質問
代理店に商標(ロゴ)の使用を認めるとき、商標ライセンス契約書は必要ですか?
必要です。使ってよい用途(販促物だけか、商品にもか)、事前の承諾、ロゴのマニュアルへの準拠、再販売先に使わせるときの手続、終了時の撤去の方法と期限を決めておかないと、ブランドの管理ができません。代理店契約の中に条を置く方法と、別の契約にする方法があります。
商標が登録される前に「®」を付けてもよいですか?
避けるべきです。登録商標でない商標に商標登録表示又はこれと紛らわしい表示を付けることは禁じられており(商標法74条1号)、登録商標であることを示す記号として使われる「®」はこれに当たり得ます。違反には罰則もあります(同法80条)。登録前は「™」などを使い、登録済みであるかのような表示や警告をしないようにします。
代理店が「公式代理店」と名乗るのを禁止できますか?
契約で禁止できます。「公式」「正規」「提携」などの肩書きを使ってよいか、使うならどの表記にするかを決め、本人の名義・ロゴを使う場合は業務の委託を受けた者であることを表示させる、といった書き方があります。
契約が終わった代理店のSNSアカウントに、本部の名称が残っています。どうすればよいですか?
まず契約の終了時の措置の定めを確認します。名称を含むアカウントやドメインを禁じる、本部が作って貸す形にする、終了時の修正の期限を決める、といった定めを、契約の段階で置いておくことが確実な予防です。
元加盟店や元認定店が、過去の経歴を表示するのは認めるべきですか?
制度の考え方によります。所属の経歴の表示まで禁じる例もあれば、「○年認定(現在は失効)」と文字で書く場合に限って認める例もあります。認めるなら、現在は失効していることを必ず書く、ロゴは使わない、などの条件を付けます。
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