このページの要点
- 募集時の説明は、FCガイドラインが挙げる8項目(仕入、指導、加盟時の金銭、ロイヤリティ、決済、補償、期間と解約、周辺出店)を書面にし、契約書の条と一致させる。
- 収益の数字は、実績・モデル・見込みを分け、根拠の事実と算定方法を示す。「保証しない」条項は、誤認を誘う説明の埋め合わせにならない。
- 返還・ロイヤリティ・商圏・更新・解約金・競業は、原案の型ごとに食い違いが出やすい。定義と算式、優先順位を決める。
- 設備・ブランド・マニュアルの変更は、事由・通知・猶予・費用の分担を決め、重要な条件は書面の合意によらなければ変えられないようにする。
結論:募集の場面の説明は「開示する項目」「収益の数字の根拠」「契約後に変える条件」の三つを書面に残す
フランチャイズ本部が加盟希望者を募るとき、独占禁止法(正式名称は「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」)の面で問題になりやすいのは、契約書の一条文よりも、契約前にどんな説明をしたか、契約後に本部が条件をどう扱うか、です。前者は「ぎまん的顧客誘引」、後者は「優越的地位の濫用」という言葉で整理されます。
ぎまん的顧客誘引とは、重要な事項を十分に知らせなかったり、虚偽や誇大な説明をしたりして、実際よりも著しく有利だと誤認させ、取引に誘い込むことをいいます。優越的地位の濫用とは、取引上優越した者が、その立場を利用して、正常な商慣習に照らして不当に相手に不利益を与えることをいいます。公正取引委員会が「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」で考え方を示しており、以下「FCガイドライン」と呼びます。
- 開示する項目:FCガイドラインが「開示することが望ましい」とする8つの項目を説明書面にし、契約書の条と食い違わないようにそろえます。
- 収益の数字の根拠:見込みを示すなら、類似した環境の既存店舗の実績などの根拠と算定方法を示します。既存店舗の平均から作った収支は「モデル」と分かるように書きます。「収益を保証しない」条項は、誤認を誘う説明の埋め合わせになりません。
- 契約後に変える条件:設備、ブランド、営業時間、ロイヤリティ(加盟者が本部に継続して払う対価)などを本部が変えたいときの事由・通知・猶予・費用の分担を、先に書きます。
本部が用意する契約書の案では、説明資料は丁寧でも、返還・解約金・商圏・変更の条が資料と食い違っている例が多く見られます。直し方は後半で示します。法定開示書面や加盟金・ロイヤリティの型そのものはフランチャイズ契約書と法定開示書面で扱います。なお、加盟店が個人でも事業として加盟するなら消費者契約法の「消費者」に当たらず(同法2条1項・2項)、同法の取消しや無効の規定は直接には使えません。独占禁止法と民法の一般的な規律が物差しになります。
FCガイドラインは何を定めているのか:三つの条文の使い分け
FCガイドラインは法律ではなく、公正取引委員会が運用の考え方を示した文書で、平成14年に公表され、令和3年4月28日にも改正されています。営業秘密の保護や統一的なイメージの確保のために必要な限度の制限なら直ちに問題とはならず、限度を超えたときに問題になる、としています。
| 条文・類型 | 時期 | 問われること | 手当の中心 |
|---|---|---|---|
| ぎまん的顧客誘引(一般指定8項) | 募集から契約前 | 重要な事項の開示が足りないか。誇大な開示で誤認させていないか。 | 説明書面、収益情報の根拠、説明の記録 |
| 優越的地位の濫用(独占禁止法2条9項5号) | 契約後から終了後 | 優越した地位を利用して、不当に不利益を与えていないか。 | 変更の手続、費用の分担、解約と競業の範囲 |
| 抱き合わせ販売等・拘束条件付取引(一般指定10項・12項) | 契約中 | 取引先や販売方法の制限が、必要な限度を超えていないか。 | 指定の理由と代替の手続 |
「一般指定」は、独占禁止法2条9項6号に基づき公正取引委員会が指定する「不公正な取引方法」です。不公正な取引方法は同法19条で禁止され、違反には排除措置命令(違反行為をやめさせる行政処分)などが行われます。優越的地位の濫用は、課徴金納付命令の対象にもなり得ます。
小売業中心のフランチャイズでは、中小小売商業振興法が契約前の書面の交付と説明を本部に求めています(同法11条)。FCガイドラインは、対象となる本部には周辺の類似店舗の直近三事業年度の収支の開示と説明の義務もある、と述べています。対象外の本部にも、独占禁止法の考え方は当てはまります。加盟の募集に紹介報酬や収入の勧誘が伴うときは、連鎖販売取引との境目が問題になります(二次代理店・再委託と連鎖販売取引の境界)。
加盟希望者に何を開示するか:ガイドラインの8項目を、書面と契約書に割り付ける
FCガイドラインが開示が望ましいとする8項目は、法律が書面を義務づけた項目ではありませんが、開示の不足はぎまん的顧客誘引の判断材料になります。大切なのは、説明書面と契約書の本文・別紙・精算の計算が同じことを言っていることです。資料では「推奨」、契約書では「指定」といった食い違いは、後の「聞いていない」の出発点になります。
| 項目 | 説明書面に書くこと | 食い違いが起きやすい点 |
|---|---|---|
| 1 商品等の供給条件 | 仕入先・設備業者の指定の有無と理由、同等品を他から買えるか | 説明は「推奨」、契約書は「指定」で変更の手続もない |
| 2 指導の内容・回数・費用負担 | 研修の回数と時間、訪問の有無、追加費用 | 「継続的に支援する」とだけで、回数や窓口がない |
| 3 加盟時の金銭の性質・返還 | 加盟金・研修費・保証金ごとの対価と、返還の有無・条件 | 「理由を問わず返還しない」とだけで、研修を提供できなかった場合の扱いがない |
| 4 ロイヤリティの額・算定・徴収 | 算定の基礎の定義、控除する項目、計算例、締め日と支払日 | 資料の率と別紙・精算の計算が違う。率が年か月か読めない |
| 5 決済の仕組み・本部の融資 | 売上の収納主体、送金の時期、差し引く項目 | 本部が売上を預かるのに、送金日と精算明細の義務がない |
| 6 損失補償・経営不振時の支援 | 補償をしないこと、不振時に何をするか | 「保証しない」とだけで、不振時の支援を説明していない |
| 7 期間・更新・解除・中途解約 | 期間、更新の条件、解除の事由、予告期間と金額の考え方 | 解約金の額だけで、算定の根拠や減免がない |
| 8 周辺での同種店の営業 | 直営店や他の加盟店を出す可能性、取決めと出店計画の有無 | 「専用地域」と書きながら、直営店・既存店・オンライン提供を除くかが不明 |
ドミナント出店とは、特定地域に同じブランドの店舗を集中して出すことです。専用地域とは、加盟店の周辺で他の加盟店を出さないと約束した区域です。
薄くなりがちなのは項目3の総負担です。加盟金と研修費だけを大きく示し、物件・内装・設備・保証金・運転資金を別の話にすると、投資額の全体を見誤ります。支払先と返還の有無まで並べた一覧にし、現地での追加支援のように交通費・宿泊費が別になる費用は、税の扱い、事前承認、上限も書きます。
契約前の説明と確認の条(書き起こした条文例)
1甲は、本契約の締結に先立ち、乙に対し、別紙「開示事項説明書」を交付し、次の各号の事項を書面により説明する。(1)仕入先及び設備業者の指定の有無並びにその理由 (2)標準支援の内容、回数及び費用の負担 (3)加盟金、研修費、保証金その他締結時に支払う金銭の性質、金額並びに返還の有無及び条件 (4)ロイヤリティの算定の基礎、方法及び支払の時期 (5)乙の売上金の収納の方法及び送金の時期 (6)損失の補償及び経営不振時の支援の有無 (7)契約の期間、更新、解除及び中途解約の条件 (8)乙の店舗の周辺における直営店又は他の加盟店の営業に関する取決め及び出店計画の有無
2甲は、前項の説明書を交付した日から( )日を経過した後でなければ、乙から締結の申込みを受けない。
3乙は、第1項の説明を受け、質問の機会があったことを確認する。説明書の記載事項のうち甲が乙に約束するものは、別紙に記載する。
契約書に説明の条を置く場合でも、挙げる事項が数項目だけで、周辺出店・損失補償・決済が抜けている例があります。第2項の検討期間は法律が定めたものではなく、考える時間を置くための工夫です。
収益予測・モデル収益は、どこまで、どう示せばよいか
FCガイドラインは、予想売上げや予想収益を示す場合、類似した環境にある既存店舗の実績など根拠のある事実と合理的な算定方法に基づく必要があり、その根拠と算定方法を加盟希望者に示す必要がある、としています。既存店舗の平均から作った「モデル収益」は、厳密な予想ではないことが分かるよう明示し、十分理解してもらう必要がある、とされています。資料の数字は、実績(期間と店舗数を書き、好調な店舗だけを抜き出さない)、モデル(実績から作った仮の収支。前提を並べる)、予想(特定の立地と規模を前提にした見込み。根拠と算定方法を示す)の三つに分けて考えると混乱しません。
同じ実績でも、平均値の見せ方で印象が変わる
説明のための仮の数字です。既存5店舗の月間売上が150万円、180万円、220万円、260万円、590万円なら、平均は280万円、中央値は220万円で、平均を押し上げているのは590万円の1店舗です。その店舗が予定地と立地が大きく違うのに「280万円が見込めます」と説明すれば、実際より有利に見せることになります。費用を固定費110万円と売上の30%(材料費20%、ロイヤリティ10%)とすると、利益は「売上×70%−110万円」で、150万円なら−5万円、220万円なら44万円、280万円なら86万円です。平均だけでなく、最小から最大までの範囲と中央値、立地や規模の区分、期間と店舗数、オーナー自身の報酬を含めるかなどの前提を並べます。
ロイヤリティの定義で負担が変わる例
FCガイドラインは、ロイヤリティの算定方法を正しく説明しているかも、ぎまん的顧客誘引の判断事情に挙げています。売上総利益(売上から売上原価を引いた額)の40%とする型で、売上100万円、販売した商品の仕入原価60万円、廃棄した商品の仕入原価5万円なら、次のとおり負担が変わります。
| 定義 | 売上総利益 | ロイヤリティ(40%) |
|---|---|---|
| 売上原価に廃棄分を含めない | 100−60=40万円 | 16万円 |
| 売上原価に廃棄分を含める | 100−65=35万円 | 14万円 |
率は同じでも、定義の違いで毎月2万円変わります。率だけを示すと、どちらの負担か読み取れません。
売上の定義は、税込か税別か、返金や値引き、回数券を販売時と利用時のどちらで計上するか、決済手数料を引くかで変わります。率の型の選び方は代理店手数料の決め方でも説明しています。どの型でも、定義と計算例を募集資料と契約書に同じ形で書きます。
収益資料の区分と取扱いの条(書き起こした条文例)
1甲が乙に交付する売上、費用又は利益に関する資料(以下「収益資料」という。)には、資料ごとに、次のいずれに当たるかを明示する。(1)甲の直営店又は既存の加盟店の実績 (2)実績から作成した仮の収支(以下「モデル」という。) (3)乙の予定する店舗についての見込み
2甲は、収益資料に、作成に用いた実績の期間及び対象の店舗数を記載する。
3甲は、第1項第3号の見込みを示すときは、その根拠となる既存店舗の実績、当該店舗と乙の店舗との立地及び規模の異同並びに算定の方法を記載する。
4収益資料は、乙の店舗の売上又は利益を保証するものではなく、乙は、前提が自己の店舗に当てはまるかを自らの責任で検討する。ただし、収益資料の記載が前三項に反していたときは、この限りでない。
第4項のただし書きは、「保証しない」という免責が、説明が正確であることを前提にしていることを書いたものです。
「収益を保証しない」と契約書に書けば、募集時の説明は問題になりませんか?
問題が消えるとはいえません。非保証条項は結果を約束していないことの確認として働きますが、ぎまん的顧客誘引で問われるのは、保証したかどうかではなく、重要な事項を十分に開示したか、誇大な開示で誤認させていないかです。FCガイドラインが総合して判断する事情として挙げるのは、次の4点です。
- 予想売上げ・予想収益の算定の根拠や方法に合理性があるか。
- ロイヤリティの算定方法を正しく説明しているか(前の節の廃棄分の例)。
- 他の本部との比較が客観的な基準によるものか。算定方法の違いを説明せず、自社の率の低さだけを強調していないか。
- 中途解約のときに高額な違約金がかかることを、十分に開示しているか。
実務では、非保証の条項は整っている一方、募集段階の月次収支モデルに前提の注記がなかったり、初期費用として一時金だけを示して物件・設備・運転資金に触れていなかったりする例が見られます。
完全合意条項と、募集時の約束
契約書末尾に、締結前の協議や提案書は契約と矛盾する範囲で効力を失う旨の条項(完全合意条項)が置かれることがあります。この条項で募集時の説明が誤認を誘うものだったかの評価まで消えるとは、整理しないほうが安全です。逆に、募集時に約束した研修の回数、専用地域、サポートの窓口、費用の内訳が、契約上の約束として扱われなくなるおそれがあります。約束したことは本文か別紙に書き、完全合意条項は別紙を含むと読めるようにし、文書が食い違うときの優先順位(個別の特約、店舗ごとの条件表、本文、マニュアルの順など)も決めておきます。
民法の面では、錯誤による取消し(民法95条1項2号・2項)、詐欺による取消し(同法96条1項)、約束した支援をしなかったときの債務不履行(同法415条)が問題になります。開業費用の説明や営業指導が争われた裁判例には、情報提供義務違反を認めつつ、加盟希望者の情報収集の不足を考慮して大きな割合の過失相殺をしたものがあります。結論は個々の事情で分かれます。広告や紹介者を通じた募集の規制は代理店・紹介者の営業と法規制でも扱っています。紹介者の説明も、本部の募集の一部として見られます。
契約後に問題になる「優越的地位の濫用」:どの条項が見られるのか
優越的地位にあるかどうかは、本部の要請が著しく不利益でも加盟者が受け入れざるを得ない状況か、で見るとされています。要素は、取引依存度、本部の市場での地位、加盟者が他へ変更できる可能性(初期投資の額、中途解約権の有無、違約金、契約期間)、事業規模の格差などで、解約金・期間・競業の三点は判断材料にもなります。FCガイドラインが挙げる主な類型と、契約書での手当は次のとおりです。
| 類型 | ガイドラインの例 | 契約書での手当 |
|---|---|---|
| 取引先の制限 | 正当な理由なく本部や指定事業者とのみ取引させ、良質で廉価な他社との取引を妨げる | 指定の理由の説明と、同等品を承認する手続 |
| 見切り販売の制限 | 売上総利益に連動するロイヤリティの場合に、見切り販売(値下げして売り切ること)を正当な理由なく制限し、廃棄を余儀なくさせる | 制限の理由と、廃棄したときのロイヤリティ算定上の扱い |
| ドミナント出店等 | 出店しない取決めに反する出店で損益を悪化させる | 専用地域の範囲、例外、書面の同意 |
| 契約締結後の内容変更 | 契約にない新規事業を、不利益に扱うと示して、利益を超える費用の負担で導入させる | 変更の事由、通知、猶予、費用の分担と上限 |
| 契約終了後の競業禁止 | ノウハウの保護に必要な範囲を超える地域、期間、内容の競業禁止 | 対象を非公知のノウハウの利用に絞り、地域と期間の根拠を示す |
契約全体として見たときの例として、FCガイドラインは、市場の実情を無視した過大な売上目標、高額な違約金、投資の回収に見合わない契約期間を挙げています。単独の条項は適法に見えても、組み合わさると加盟者が抜け出せない構造になる、という見方です。見切り販売の制限は、コンビニエンスストアの本部に排除措置命令が出た事例でも問題とされました。
契約後の変更を、手続のある条項にする
実務で多いのは、ブランドの名称や看板、指定設備、予約や決済のシステム、運営マニュアル、料金表を、本部が必要なときに変更でき、対応と費用は加盟者の負担、という書き方です。事由、通知の時期、猶予、費用の分担を決めずに追加の投資を求めると、契約締結後の内容変更の類型に近づきます。手続を付ければ、本部の柔軟性を残したまま、濫用と見られる余地を減らせます。
契約後の設備・ブランド等の変更の条(書き起こした条文例)
1甲は、ブランドの名称、店舗の外観、設備、システム又は商品若しくは役務の内容を変更する必要が生じたときは、変更の理由、内容、実施の時期及び乙が負担する費用の見込額を書面により乙に通知し、乙と協議する。
2甲は、前項の通知の日から( )か月を経過する前に、乙に変更への対応を求めない。ただし、法令の改正又は第三者の権利の侵害の防止のために直ちに対応する必要があるときは、この限りでない。
3第1項の変更に要する費用のうち乙が負担するのは、甲が通知した見込額の範囲内とし、これを超える部分は甲が負担する。
4乙は、第1項の変更が契約時に予見できなかった多額の追加の投資を伴うときは、実施の時期の延期又は費用の分担について協議を求めることができ、甲は誠実に協議する。甲は、乙が協議を求めたことを理由として、乙に不利益な取扱いをしない。
5運営マニュアルは、日常の運営の手順に関する事項に限り甲が改訂できる。ロイヤリティの率、地域権、期間、中途解約金その他本契約の重要な条件は、甲乙の書面による合意によらなければ変更できない。
専用地域とドミナント出店は独占販売契約書・テリトリーの書き方と、認定店やのれん分けの費用や制限は認定店・分室・のれん分け制度の契約書と重なります。契約の終わらせ方は代理店契約・業務提携契約・フランチャイズの終了にまとめています。
本部の原案に多い条項の型と、よくある失敗の直し方
本部が用意する契約書の案には、同じ型の書き方が繰り返し現れます。
| 条項 | よく見られる書き方 | 見られやすい点 |
|---|---|---|
| 加盟金・研修費 | 「理由のいかんを問わず返還しない」を全額に及ぼす。支払期限が条ごとに違う。費目を分けず「加盟金等」とする | 本部が研修を提供できなかった場合や開業前の終了も、不返還に読める。何の対価か説明できない |
| ロイヤリティ | 売上総額の一定率、売上総利益の一定率、本部が集客した顧客は高く自力集客は低い分配率、定額 | 売上の定義がない。集客経路の判定を「本部が合理的に判定」とするだけでは争いになる |
| 商圏 | 半径を測る起点を書く型。「新設しないよう努める」とする努力義務型。本部が必要と判断すれば例外とする型 | 努力義務と広い例外では実質の保護にならず、周辺出店の説明と食い違う |
| 期間・更新 | 1年自動更新、3年、5年。更新拒絶の期限は30日前から6か月前まで | 本部だけが「経営上の判断」で更新を拒める。通知の方式が決まっていない |
| 解約金 | 年度ごとに下がる固定額と「残存月数×定額」の低い(高い)ほう。未回収費用と逸失利益の合算 | 何を回収する金額か書かれない。通知期間中のロイヤリティと二重に取る |
| 競業・違約金 | 終了後1〜5年、都道府県全域や全国、類似事業全般、親族や関係会社まで。違反1件ごとの高額の定額と実損の別請求 | 制限の広さが必要な範囲を超えやすい。予定額と別請求の関係が不明 |
誤った書き方と、直した書き方
よくある書き方と、整えた書き方
加盟金・研修費の返還
事業者間の不返還合意が直ちに無効になるわけではありませんが、本部の不履行にまで及ぶ文言は、民法90条や信義則(同法1条2項)との関係で争われます。
ロイヤリティの率と売上
商圏
更新の拒絶
研修未受講の制裁
競業の禁止
守りたい利益と制限の範囲を対応させます。
解除
解約金と返還を、根拠のある形で書く
解約金が「何を回収する金額か」を書いていないと、募集時の開示(ガイドラインの4つ目の事情)も、後の合理性の説明もできません。違約金は賠償額の予定と推定されます(民法420条3項)。減額を求める根拠として420条2項を挙げる書き方がありますが、同項は賠償額の予定が履行の請求や解除権の行使を妨げないという規定で、減額の根拠ではありません。過大な定めは、全体の合理性が公序良俗(同法90条)や信義則から検討されます。事業目的の加盟者には消費者契約法9条の上限は直接には使えませんが、独占禁止法の面で、投資額に比べて過大でないかが見られます。数字は仮のものです。
| 場面 | 前提 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 研修の一部未実施での終了 | 研修費40万円、全8回、3回実施 | 40万円−(40万円×3÷8) | 25万円を返還 |
| 中途解約金 | 未回収の個別支援費用9万円、直近3か月の平均ロイヤリティ月4万円、その年度の残りの6か月、上限は加盟金と研修費の合計70万円 | 9万円+(4万円×6か月) | 33万円(上限内) |
予告期間中に払うロイヤリティと同じ期間の逸失利益を解約金に重ねると、二重になります。
加盟金等の返還と中途解約金の条(書き起こした条文例)
1甲は、乙が本契約の締結後に支払った研修費のうち、研修の実施回数が全回数に満たない状態で本契約が終了したときは、研修費の額から、研修費の額に実施済みの回数を全回数で除した割合を乗じた額を控除した額を、終了の日から( )日以内に乙に返還する。ただし、乙の責めに帰すべき事由による研修の未実施は、この限りでない。
2乙は、解約を希望する日の( )か月前までに甲に書面で予告して、本契約を中途解約できる。この場合の解約金は、次の各号の額の合計額とし、加盟金及び研修費の合計額を上限とする。(1)甲が乙のために現に要した個別の支援費用のうち未回収の額 (2)直近3か月間の平均ロイヤリティ額に、解約の日からその日の属する契約年度の末日までの月数を乗じた額
3期間満了による本契約の終了は、中途解約に当たらない。甲の責めに帰すべき事由により乙が解約するときは、乙は解約金を支払わない。
4解約金は、中途解約それ自体により甲に生じる損害の賠償額の予定とし、甲は、同じ原因に基づく損害について、別に賠償を請求しない。ただし、秘密保持義務の違反など、本契約の終了後も存続する義務の違反による損害は、この限りでない。
第2項の月数の取り方は、通知の日と解約の日のどちらを基準にするかで金額が変わるため、解約の日で統一します。
ヒヤリングで確認すること
契約書を直す前に、本部の事実を確かめます。確認する事項と理由は次のとおりです。
本部に確認する事項
加盟希望者を、どの経路で集めるか。誰が、どの資料を渡し、何を口頭で説明するか。加盟希望者に約束済みの条件はあるか。
募集の説明は全ての経路で同じ内容でなければなりません。紹介者や担当者の口頭の説明も本部の説明として見られ、約束済みの条件は契約書に取り込む必要があります。
収益の数字は、直営店の実績か、既存の加盟店の実績か、想定か。期間、店舗数、閉店した店舗の扱いは。
出所と母集団が分からないと、根拠のある事実に基づく予想とは説明できません。
加盟金・研修費に含む業務は何か。研修の回数・時間・対象人数・再受講の条件は。契約後・研修前・開業前に取り消したときの返金の希望は。
何の対価かが分からないと、不返還や按分の算式を書けません。研修が一部だけ実施されて終わる場合の精算が争いになりやすいためです。
ロイヤリティの基礎となる売上は税込か税別か。返金、値引き、回数券、物販、決済手数料、未収金は。
定義が変わると、同じ率でも負担が変わります。計算例を資料と契約書に同じ形で載せるために必要です。
売上は誰の名義の口座・決済契約に入るか。本部が預かる場合の送金日と、控除する項目は。
本部が預かる形は送金・精算明細・返金原資の定めが要ります。決済サービスの規約が名義を制限していないかも、開業前に確認が要ります。
周辺に直営店や他の加盟店を出す計画はあるか。オンライン提供や出張は専用地域の対象か。距離は何を起点に測るか。
取決めの具体性と、取決めに反する出店の有無が問題になるためです。
契約後に本部が変えたい項目は何か(ブランド、設備、システム、料金表、マニュアル)。頻度は。価格は統一したいか。
変更の手続の範囲を実態に合わせるためです。加盟店の価格を本部が拘束すると、一般指定12項の拘束条件付取引の検討が要るため、承認を不当に拒まない運用かも確認します。
解約金と競業の禁止で守りたいものは何か(未回収の支援費用、非公知のノウハウ、顧客、商圏)。その費用の資料はあるか。
金額と範囲を、守りたい利益と対応させる材料になります。根拠資料がないと金額の合理性を説明できません。
契約書、店舗ごとの条件表、料金表、マニュアルが食い違ったときの優先順位は。本部や加盟者の法人化の予定は。
食い違ったまま運用すると、重要な条件が一方的に変わります。法人化では契約上の地位の移転に相手方の承諾が要ります(民法539条の2)。
よくあるご質問
契約書に「収益を保証しない」と書けば、募集時の収益予測の説明は問題になりませんか?
問題が消えるとはいえません。ぎまん的顧客誘引では、保証をしたかどうかではなく、重要な事項を十分に開示したか、誇大な開示で誤認させていないかが見られます。収益の数字には根拠の事実と算定方法、前提を付け、非保証の条項は説明が正確であることを前提にした書き方にします。
既存店舗の平均から作った収益のシミュレーションを、加盟希望者に見せてもよいですか?
見せることはできますが、公正取引委員会の考え方は、モデルであって厳密な予想ではないことが分かるように明示し、十分理解してもらう必要がある、としています。平均だけでなく、範囲と中央値、期間、店舗数、費用の前提も並べます。
FCガイドラインは法律ですか。守らないとどうなりますか?
法律ではなく、公正取引委員会が独占禁止法の運用について示した考え方です。ただし、その考え方に反する行為が不公正な取引方法に当たるときは、排除措置命令などが行われることがあり、優越的地位の濫用は課徴金納付命令の対象にもなり得ます。
本部が仕入先や設備を指定すること自体が、独占禁止法に反するのですか?
指定そのものが直ちに問題になるわけではなく、営業秘密の保護や統一的なイメージの確保のために必要な限度にとどまるなら許されます。正当な理由なく本部や指定事業者とだけ取引させ、良質で廉価な他社との取引を妨げると問題になり得ます。指定の理由と、同等品を認める手続を書いておきます。
契約後に本部が設備やブランドを変えたいとき、費用は誰が負担するのが適切ですか?
一律の答えはありません。契約にない新規事業や設備を、利益を超える費用の負担で導入させる行為は、契約締結後の内容変更として優越的地位の濫用の例に挙げられています。変更の事由、通知、猶予、費用の分担と上限を決め、予見できなかった多額の投資は協議できる条項にします。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、取引の実態や当事者の立場によって変わることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索 / 公正取引委員会 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 特許庁