このページの要点
- 保証金は、担保する債務の範囲・充当の条件・補填・返還の日を決める。「返還しない」と書くと担保から違約金に性質が変わる。
- 個人に将来の債務を連帯保証してもらうなら、極度額を確定した金額で定め、書面にしなければ効力が生じない。
- 期限の利益の喪失は、倒産の事由は当然に、遅れや違反は通知で失う型に分け、信用不安の事由を具体的に書く。
- 保証金で守れるのは未払いの一部。出荷停止・限度額・相殺の根拠を条文に置き、運用の日数まで決める。
結論:保証金・連帯保証・与信管理は、取引の「始める前・続けている間・終わった後」に分けて組み合わせる
代理店や加盟店に商品を卸し、販売や紹介を任せる側(このページでは「本部」と呼びます)が、代金や手数料の回収を守る手段は、大きく六つあります。保証金は「担保として預かる金銭」で、返還と充当のルールを書くことが中身です。個人の連帯保証は、将来の不特定の債務を保証してもらうなら、保証人が負担する上限の金額(極度額)を定めて書面にしなければ、効力が生じません。与信管理は、注文を受けるかどうかの審査、未払いの上限、遅れたときの出荷停止を、契約書の根拠に基づいて運用することです。どれか一つで足りることは少なく、代理店の型と取引の規模に合わせて組み合わせます。
用語を先に説明します。「与信」は、取引先に代金の後払いを認めることと、その信用の範囲を見積もることです。「債権保全」は、まだ払われていない代金や手数料を、払われなくなる事態に備えて回収できるようにしておくことです。「期限の利益」は、支払期日までは払わなくてよいという債務者の立場で、失うと残りを直ちに払う義務が生じます。
| 手段 | 守るもの | 契約書で決めること | 向く場面 |
|---|---|---|---|
| 先払い・決済完了で成立 | 未回収そのもの | 個別契約の成立時期、決済が取り消されたときの扱い | 新規の代理店、少額で回数の多い仕入れ |
| 注文の審査・与信限度額・出荷停止 | 未払い残高の膨らみ | 審査の基準、限度額の見直し、停止と前払い切替の要件 | 後払いを認める再販売型の継続取引 |
| 保証金 | 預かった額の範囲の未払い・違約金 | 担保する範囲、充当、補填、返還の時期、利息、管理 | 立ち上げ段階の代理店、本部の先行投資が大きい取引 |
| 個人の連帯保証 | 代理店の資力を超える債務(極度額まで) | 極度額、書面、範囲、情報提供、変更時の取り直し | 与信額の大きい法人、実質的に代表者個人の事業 |
| 期限の利益の喪失・相殺・取引停止 | 遅れが出た後の回収 | 喪失の事由と通知、相殺できる債権、停止の通知と解除 | 継続的取引の全般 |
| 所有権留保 | 代金完済まで商品を本部のものにする | 所有権が移る時期、転売・担保提供の扱い | 高額の設備や在庫を卸す取引 |
どの手段を使うかは、まず代理店契約の型(代金を誰が受け取るか)で決まります。型の見分け方は代理店契約書の種類と見分け方で説明しています。
本部の債権はどこに生まれるか:代理店の型によって焦げ付く場所が違う
保証金や保証人を考える前に、守りたい債権を特定します。型が違えば、同じ「保証金」でも担保する債務の中身が変わるからです。
| 型 | 本部が持つ主な債権 | 膨らむ場面 | 先に考える手当て |
|---|---|---|---|
| 再販売型(販売店・特約店) | 仕入れ代金(売掛金) | 繁忙期、支払の猶予が長いとき | 注文の審査と限度額、所有権留保、必要に応じて保証金・連帯保証 |
| 取次・代理受領型 | 代理店が預かった代金の引渡請求 | 送金が遅れるとき、預かった代金が代理店の資金と混ざるとき | 送金期限、専用口座、報告と照合 |
| 紹介・送客型 | 払い済み手数料の戻し | 解約や返金が続くとき、契約が終わった後 | 戻しの期限、次回支払からの控除、保証金の充当 |
| フランチャイズ・認定店 | ロイヤリティ、仕入れ代金、原状回復費用 | 閉店のとき、売上の報告が止まったとき | 保証金、代表者の連帯保証、期限の利益の喪失 |
手数料の戻しは代理店手数料の発生時期と返金時の戻し、再販売型の仕入れ代金は販売店契約書・特約店契約書で扱っています。
計算例:保証金で守れる範囲と、守れない範囲
再販売型で、代理店が月に約200万円を仕入れ、請求は月末締め・翌月末払いとします(金額は説明のための例です)。前月分が払われなかった時点では、前月分と当月分で約400万円の売掛金が残り、遅れに気づかず翌月も出荷すれば約600万円まで増えます。
| 項目 | 金額 | 考え方 |
|---|---|---|
| 前月分の支払が止まった時点の残高 | 約400万円 | 前月分と当月分が同時に未払い |
| 気づかず翌月も出荷した場合 | 約600万円 | 出荷停止が遅れた分だけ増える |
| 預かった保証金 | 70万円 | 月の仕入れ額の4割に満たない |
| 保証金で足りない額(400万円の場合) | 約330万円 | 限度額・連帯保証・出荷停止で手当てする |
保証金は未払いの一部を受け止める手段と考え、残りは限度額、出荷停止、必要な範囲の連帯保証で受けます。
保証金は、何を担保し、いつ使い、いつ返しますか
保証金の条文で決めるのは、担保する債務の範囲、使う条件、補填、返還の時期です。民法は、賃貸借の敷金には定義と返還の時期を置いています(622条の2)が、代理店や加盟店から預かる保証金について同じ規定は置いていません。契約書に書いた内容が、そのままルールになります。
加盟金・保証金・前払金・違約金は、目的で書き分ける
| 金銭 | 目的 | 終了時の扱い |
|---|---|---|
| 加盟金・登録料 | 加盟の権利、研修、開業支援の対価 | 返還しない形が多い |
| 保証金・デポジット | 代理店が負う債務の担保 | 債務を差し引いた残りを返す |
| 前払金 | 将来の代金の前払い | 使わなかった分を返す |
| 違約金 | 違反への制裁・賠償額の予定 | 返還の問題は生じない |
一つの条で加盟金と保証金をまとめて「理由を問わず返還しない」と書くと、担保としての保証金の性質が消え、争いのもとになります。
保証金の条文に入れる七つの項目
- 担保する債務の範囲:仕入れ代金、手数料の戻し、違約金、損害賠償のどれを含めるかを列挙する。
- 金額と預託の時期:締結後何日以内か。取引額に応じて増減させるなら、基準と見直しの時期も書く。
- 充当の条件:催告が要るか、事前の通知で足りるか、複数の債務への充当の順序。
- 補填:充当で減った分を、いつまでに預け直すか。
- 返還の時期:終了の日から何日以内か。手数料の戻しや返品の期間が残る取引があれば、その期間が過ぎてからにする。戻しの考え方は手数料の発生時期と返金時の戻し、保証金の額で紹介料を変える設計は手数料の決め方にあります。
- 利息と管理:利息を付さないと明記し、本部の資金と分けて管理するかを書く。
- 代理店からの相殺・譲渡の禁止:返還請求権を仕入れ代金の支払に代えることや、第三者への譲渡・担保提供を禁じる。
「返還しない」と書く条項の限界
違反があれば保証金は返還せず、足りなければ不足分を払う、という条項は、保証金の性質を担保から違約金に変えています。民法は、損害賠償の額を予定することを認め、違約金を賠償額の予定と推定します(420条1項・3項)。有効でも、実際の損害より著しく大きい部分は、公序良俗(90条)に反するとして争われることがあります。担保として預かるなら、保証金から実際の損害の額を差し引き、残りを返す書き方が安定します。違約金を取りたいなら、違約金の条で金額の根拠を書きます。
保証金を入れない判断と、預ける側の注意
加盟店の数がまだ少ない段階では、保証金も連帯保証も入れず、加盟金や中途解約金の算定でリスクを受ける整理もあります。制度を入れると、分けて管理するか、返還の条件、未払いのロイヤリティや原状回復費用への充当の順序を決める必要があり、運用の手間が生じるためです。すでに契約している代理店に後から求めるには、変更の合意が要ります。預ける側の代理店は、返還を求める債権が本部の信用に左右されるため、使い道が未払いの債務に限られること、充当の前に通知があること、本部に支払停止などが生じたときは解約して返還を求められることを確かめます。
保証金の徴収が別の規制に結びつく場合
代理店になるために保証金を払わせ、その代理店が別の代理店を勧誘すると利益を得られる仕組みは、特定商取引法の連鎖販売取引に近づきます。同法は、取引をするときに提供される金品の例に「保証金」を挙げ、名称を問いません(境界は二次代理店・再委託と連鎖販売取引の境界)。法定開示書面の対象になるフランチャイズ(特定連鎖化事業)で保証金を徴収するときは、その金銭に関する事項が、契約の前に交付する書面での説明の対象になります(フランチャイズ契約書と法定開示書面)。
個人に連帯保証をしてもらうとき、極度額・書面・情報提供をどう書きますか
代表者などの個人に、将来の仕入れ代金や手数料の戻しまで連帯保証してもらうなら、極度額を確定した金額で定め、書面(電磁的記録を含みます)で結ばなければ、保証は効力を生じません。民法は、一定の範囲の不特定の債務を主たる債務とする保証で、保証人が法人でないものを「個人根保証契約」と呼び、極度額を定めなければ効力を生じないとしています(465条の2第2項)。保証契約は書面でしなければ効力を生じず(446条2項・3項)、極度額の定めにも同じ要件が準用されます(465条の2第3項)。
保証の範囲と極度額
極度額は、主たる債務の元本、利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのもの、保証債務について約定された違約金や損害賠償の額を合わせた上限です(465条の2第1項)。別の条で保証人にも違約金を課すなら、その違約金も極度額の内側に入ります。連帯保証では、催告の抗弁(452条)と検索の抗弁(453条)がありません(454条)。連帯保証に、これらを放棄すると重ねて書く必要は小さく、条番号を引用するなら民法の中身と合っているかを確かめます。
貸付を含めるとき:公正証書が必要になる場合
仕入れ代金や手数料の戻しだけを保証してもらう契約と、開業資金の貸付も含めて保証してもらう契約では、扱いが違います。事業のために負担する貸金等債務(金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによる債務)を主たる債務とする保証や、それが含まれる根保証は、締結の前の1か月以内に作成した公正証書で、保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、効力を生じません(465条の6第1項)。主たる債務者が法人のときのその取締役などには、この規定は適用されません(465条の9第1号)。貸金等債務が含まれる個人根保証には、元本確定期日の規定(465条の3)も関係します。保証の範囲の条で、貸付を含めるかを先に決めます。
元本の確定、情報提供、期限の利益喪失の通知
個人根保証の元本は、保証人の財産に対する強制執行等の手続が始まったとき、保証人が破産手続開始の決定を受けたとき、主たる債務者又は保証人が死亡したときに確定し(465条の4第1項)、その後の債務は保証の対象になりません。代表者が替わったのに保証人を取り直さないと、その後の仕入れ代金は保証がないまま増えます。
代理店が事業のための債務について個人に保証を頼むときは、自分の財産と収支の状況、他の債務の有無と履行の状況、他に提供する担保を、その人に伝えなければなりません。伝えなかったり事実と違うことを伝えたりして、保証人が誤認して契約し、本部がそれを知り、又は知ることができたときは、保証人は契約を取り消せます(465条の10第1項・2項。保証人が法人のときは適用されません)。保証契約書に、情報の提供を受けた旨の確認欄を設け、本部も保証人になる人に直接確かめます。
本部は、委託を受けた保証人から請求があれば、主たる債務の不履行の有無や残額を知らせます(458条の2)。代理店が期限の利益を失ったことを知ったときは、知った時から2か月以内に個人の保証人へ通知しなければならず、遅れると、遅れた期間の遅延損害金を保証人に請求できません(458条の3第1項・2項)。
保証を結ぶとき・結んだ後に確かめること
- 保証の範囲:仕入れ代金、手数料の戻し、違約金、損害賠償のどれを含め、貸付を含めるのか。
- 極度額:確定した金額で、違約金や損害賠償を含めた上限になっているか。
- 保証契約書:極度額を記載し、保証人が署名又は記名押印した書面があるか。
- 代表者の交代・法人化:新しい代表者や新法人に、債務の引受けと新しい保証を求めているか。承継への同意と保証への同意は別のものです。
- 支払条件の変更:契約後に主たる債務の態様が重くなっても、保証人の負担は重くなりません(448条2項)。単価や猶予を変えるときは同意を取り直します。
代理店が支払を遅らせたとき、本部は何ができますか:注文の審査・期限の利益・相殺・取引停止
遅れが出てから条文を探しても間に合いません。本部は、契約書にあらかじめ書いた根拠に沿って、出荷の停止、期限の利益の喪失、相殺、解除を順に使います。入口から整理します。
注文の審査と与信限度額
再販売型では、発注書と承諾で個別の売買契約が成立する形がよく使われます。承諾の条に、在庫、信用の状況、支払の履歴その他の合理的な理由に基づいて、注文の全部又は一部を断れると書くと、断る理由の説明が一貫します。個別契約の成立を決済の完了時とすれば、売掛金は生じません。カード決済では、承認の拒否や取消しのときに、直ちに別の方法で払うことも書きます。
与信限度額は、未払い残高の上限として定めます。目安は、月間の平均仕入れ額に支払の猶予の期間を掛けた額で、超える注文は前払いにするか、出荷を保留します。限度額を、決算書や支払の履歴を見て、いつ・誰が見直すかも書きます。営業代行や紹介の契約では、与信の判断と契約の締結は本部が行い、代理店の業務から外す書き方が使われます。代理店が「この会社は大丈夫」と請け合うと、本部に説明の責任が及ぶことがあるためです。代金が払われるまで商品の所有権を本部に残す所有権留保を使うときは、転売と担保提供の扱いも併せて書きます(動産の売買の先取特権は321条にありますが、転売されて手元になければ使いにくくなります)。
出荷停止と、最低購入義務の関係
支払が遅れたときは、将来の取引について前払い条件への変更、限度額の引下げ、出荷の停止を行える、と書いておきます。落としやすいのが、最低購入数量や販売目標との関係です。本部が出荷を止めたのに最低購入義務が残ると、代理店が義務を果たせず、本部に責任があると主張されかねません。停止の期間は最低購入の期間に算入しない、と明記します(独占販売契約書・テリトリーの書き方)。
期限の利益の喪失と、信用不安の事由
期限は、債務者の利益のために定めたものと推定されます(136条1項)。民法が定める喪失の事由は、破産手続開始の決定を受けたとき、担保を滅失・損傷・減少させたとき、担保を供する義務を負うのに供しないときの三つです(137条)。遅れただけで残りを請求するには、契約書に喪失の事由を書く必要があります。
書き方は二つの型に分けます。支払停止、不渡り、破産などの申立て、差押えといった客観的な倒産の事由は、当然に失う型です。支払の遅れ、契約違反、資料の不提出は、本部の通知で失う型です。「一度でも遅れたら当然に全額」とすると、軽微な遅れや請求の誤りでも全額が動き、争いやすくなります。また、「本部が信用不安と判断したとき」では判断が主観になるので、支払の遅れが連続して何回又は何日を超えたとき、決算書の提出を求めても正当な理由なく応じないとき、といった客観的な事由を並べます。
相殺:弁済期、範囲、通知
相殺は、双方の債務が弁済期にあるときに、対当額で債務を消す仕組みです(505条1項)。一方から相手方への意思表示で行い、条件や期限は付けられません(506条1項)。契約書では、本部が負う手数料の支払と、本部が代理店に持つ債権とを相殺できると書くことが多く、弁済期の前後を問わないと書く例もあります。ただし、損害賠償のように代理店が争う債権を相殺に使うと、手数料の全体が止まり、関係が壊れます。代理店の立場では、相殺できるのは、弁済期が来て、存在と額に争いのない債権に限る、という修正を求める余地があります。
代理店の債権者が手数料の債権を差し押さえても、本部は、差押えの前に取得した債権による相殺を対抗できます(511条1項)。手数料から差し引く設計では、債権がいつ生じたかが分かる記録を残します。代理店が手数料の債権を譲渡するときは、譲渡を制限する意思表示があっても譲渡は効力を妨げられず(466条2項)、その意思表示を知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人に対しては、本部は履行を拒めます(同条3項)。
代理店が個人事業者のとき:報酬からの差引きとフリーランス法
代理店が従業員を使わない個人の事業者(特定受託事業者)で、本部が営業代行や紹介を業務委託しているなら、フリーランス法の適用を検討します。同法5条1項2号は、政令で定める期間以上の業務委託について、特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに報酬の額を減ずることを禁じ、4条1項は、報酬の支払期日を、役務の提供を受けた日から60日以内で、できる限り短い期間内に定めるよう求めます。お客様の解約に伴う手数料の戻しや、保証金の報酬への充当が、代理店の責めに帰すべき事由に基づくのかを決めておかないと、検討の対象になります。商品を買い取って売る再販売型は売買で、この法律の業務委託には当たりません。使った後の清算は、代理店契約・業務提携契約・フランチャイズの終了にあります。
よくある失敗と直し方:債権保全の条項で多い四つの書き方
債権保全の条項は、強く書くほど効くように見えますが、強く書いた部分が争われることがあります。契約書で多い書き方と、整え方を示します。
債権保全の条項で多い四つの書き方
保証金の没収
担保としての保証金と、違約金とを分けます。根拠を示す手続があると、返さない部分の説明がつきます。
個人の連帯保証
極度額がなければ、個人の保証は効力を生じません。保証人は主たる債務者が主張できる抗弁を主張できます(457条2項)。財産開示手続は、執行力のある債務名義の正本を持つ債権者の申立てで裁判所が行う手続で(民事執行法197条1項)、契約で開示の義務を課して代える仕組みではありません。
期限の利益の喪失
当然に失う事由は客観的なものに絞ります。通知の日が、保証人への通知(458条の3)の起点を管理する記録にもなります。
相殺
対象を列挙し、通知に根拠を付けると、代理店も納得しやすくなります。代理店の立場では、争いのある損害賠償債権を除く修正を求める余地があります。
代理店の側で契約書を受け取ったときは、保証金の担保範囲と返還の期限、連帯保証の極度額と期間、注文を断る基準と停止前の通知、停止中の最低購入義務の免除を確かめます。
ヒヤリングで確認すること:条文の前に、取引の実際を聞く
保証金や保証人の条文は、金額や率を決めるだけでは書けません。取引の実際を聞いて、守る債権の大きさと、守れる範囲を確かめてから書きます。
保証金・連帯保証・与信管理の条文を書く前の問い
代理店は誰に売り、代金は誰が受け取りますか。
型によって、守る債権が仕入れ代金、預かり金の引渡請求、手数料の戻しのどれかが変わります。
1回の仕入れ額、月間の最大額、請求の締め日と支払日はどうなっていますか。
最大の未払い残高を計算し、保証金と限度額の水準を決める基礎になります。
保証金を預かる目的は何ですか。すべての代理店からですか、新しい契約からですか。
仕入れ代金の担保か、研修などの先行投資の回収かで、担保する範囲が変わります。既存の代理店に後から求めるには合意が要ります。
手数料の戻しや返品の期間は何か月ですか。
保証金の返還は、その期間が過ぎてからにします。食い違うと、返した後に債権が残ります。
個人の保証人を求める相手は誰ですか。本部は貸付や立替払いをしますか。
取締役などか第三者か、貸付を含むかで、公正証書や元本確定期日が関係するかが変わります。
代表者の交代、法人化、事業譲渡のときはどう扱いますか。
承継への同意と保証への同意を混同しないよう、承諾の条件を決めておきます。
支払が遅れたとき、誰が、何日目に、何をしますか。
出荷停止、通知、期限の利益の喪失の運用を、条文の日数に合わせます。決めていないと、条文があっても使えません。
書き下ろしの条文例:保証金、個人の連帯保証、期限の利益・相殺・取引停止
次の条文例は、ここまでの論点を説明するために新しく書いたもので、特定の取引のものではありません。金額・日数・条番号は取引に合わせて決め、立場によって書き分けます。
例1 第○条(保証金)
1代理店は、本契約に基づき本部に対して現在及び将来負う仕入れ代金、手数料の戻しの債務、違約金及び損害賠償の債務(以下「担保債務」という。)を担保するため、締結日から○日以内に、別紙の金額の保証金を預託する。
2保証金には利息を付さない。本部は、保証金を本部の固有の財産と区別して管理する。
3代理店が担保債務の履行を遅滞したときは、本部は、あらかじめ書面又は電磁的方法で通知したうえで、保証金を担保債務に充当することができる。ただし、第○条第1項各号の事由が生じたときは、通知は充当の後でよい。
4充当で保証金が別紙の金額を下回ったときは、代理店は、請求を受けた日から○営業日以内に不足額を預託する。
5本部は、本契約が終了した日から○日以内に、未払の担保債務を差し引いた残額を返還する。ただし、終了の日に第○条の戻しの期間が経過していない取引があるときは、その期間が経過した日から○日以内に返還する。
6代理店は、保証金の返還請求権を、第三者に譲渡し、若しくは担保に供し、又は本部に対する債務の弁済に代えることができない。
第5項の「戻しの期間」は、手数料の戻しや返品を受け付ける期間です。
例2 第○条(連帯保証)
1保証人は、代理店が本契約に基づき本部に対して負う担保債務(元本、利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのもの及びこの保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額を含む。)について、極度額金○円を限度として、代理店と連帯して保証する。
2保証人は、この保証契約を、前項の極度額を記載した書面(電磁的記録を含む。)により結んだことを確認する。
3代理店は、保証人に対し、自己の財産及び収支の状況、他の債務の有無・額・履行の状況並びに他に提供する担保の有無・内容を説明し、その書面の写しを本部に提出する。保証人は、説明を受けたことを確認する。
4本部は、保証人の請求があったときは、遅滞なく、担保債務の不履行の有無並びに残額及び弁済期が到来しているものの額を通知する。
5本部は、代理店が期限の利益を失ったことを知ったときは、知った日から2箇月以内に、その旨を保証人に通知する。
6代理店が代表者を変更し、又は本契約上の地位を新設する法人に承継させるときは、本部は、新たな保証契約の締結及び承継前の債務の引受けを承諾の条件とすることができる。
第3項は、取消しを受ける危険を小さくする手当てです。法人が保証人なら第3項と第5項は不要です。
例3 第○条(期限の利益の喪失・相殺・取引の停止)
1代理店に次の各号の一つが生じたときは、代理店は、本部に対する一切の債務について当然に期限の利益を失う。(1) 支払の停止又は手形・小切手の不渡り (2) 破産手続、民事再生手続、会社更生手続又は特別清算の開始の申立て (3) 差押え、仮差押え、競売の申立て又は滞納処分
2代理店に次の各号の一つが生じ、本部が通知したときは、通知が到達した時に期限の利益を失う。(1) 金銭債務の支払を遅滞し、催告から○営業日以内に支払わないとき (2) 支払の遅滞が連続して○回に及んだとき (3) 契約に違反し、催告から○日以内に是正しないとき (4) 求めた決算書を正当な理由なく○日以内に提出しないとき
3本部は、代理店に対して負う手数料の支払の債務と、代理店に対して持つ弁済期が到来した債権とを、対当額で相殺できる。相殺するときは、債権の種類、金額及び計算の根拠を記載した通知を送る。ただし、代理店が存在又は額を争う損害賠償の債権は、双方が書面で額を確認したとき、又は裁判所の判断が確定したときでなければ、相殺に用いない。
4本部は、第1項又は第2項の事由が生じたとき、又は注文が与信限度額を超えるときは、通知により、出荷の停止、前払い条件への変更又は限度額の引下げを行うことができる。停止の期間は、代理店の最低購入数量の達成の期間に算入しない。
第3項ただし書は代理店に配慮した書き方で、本部の立場では置かず、通知に根拠を付ける形にとどめる選択もあります。
よくあるご質問
代理店から預かった保証金を「いかなる場合も返還しない」と契約書に書くことはできますか。
返還しない扱いにするなら、保証金の性質は担保から、違約金や対価に変わります。民法は損害賠償の額を予定すること(420条1項)と、違約金を賠償額の予定と推定すること(同条3項)を認めていますが、実際の損害より著しく大きい部分は、公序良俗(90条)に反するとして争われることがあります。担保として預かるなら、保証金から損害の額を差し引き、残りを返す形が安定します。
代理店の代表者に個人で連帯保証してもらうとき、極度額は書かなければなりませんか。
仕入れ代金や手数料の戻しのように、将来生じる不特定の債務を個人に保証してもらう場合は、極度額を定めなければ、保証契約は効力を生じません(民法465条の2第2項)。極度額の定めは、書面又は電磁的記録で行います(同条3項、446条2項・3項)。極度額は、元本、利息、違約金、損害賠償、保証債務の違約金を合わせた上限です。
連帯保証人を付ける契約では、公正証書が必要ですか。
公正証書が必要になるのは、事業のために負担する貸金等債務(金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによる債務)を主たる債務とする保証や、その債務が含まれる根保証です(民法465条の6第1項)。商品の仕入れ代金や手数料の戻しだけを保証する契約は、この規定が対象とするものとして書かれていません。また、主たる債務者が法人であるときの取締役などには、この規定は適用されません(465条の9第1号)。
代理店が支払を1回遅らせたら、本部はすぐに残りの代金を請求できますか。
期限は債務者の利益のために定めたものと推定され(民法136条1項)、民法が定める喪失の事由は、破産手続開始の決定を受けたとき、担保を滅失・損傷・減少させたとき、担保を供する義務を負うのに供しないときの三つです(137条)。遅れただけで残りを請求できるかは、契約書の喪失条項によります。倒産の事由は当然に失う型、遅れや違反は本部の通知で失う型に分けると運用しやすくなります。個人の保証人がいるときは、期限の利益の喪失を知った時から2か月以内に保証人へ通知します(458条の3)。
保証金の返還と、手数料の戻しや相殺は、どう整理しますか。
保証金の返還の時期は、手数料の戻しや返品を受け付ける期間が過ぎた後にします。相殺は、双方の債務が弁済期にあるときに、一方からの意思表示で行います(民法505条1項、506条1項)。損害賠償のように争いのある債権を相殺に使うと手数料の全体が止まるため、相殺できる債権の範囲と通知の方法を契約書に書いておきます。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、取引の実態や当事者の立場によって変わることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索 / 公正取引委員会 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 特許庁