このページの要点
- 上位の代理店・プラットフォームは自分の契約の当事者ではない。報酬の流れと支払の責任を層ごとに書き分ける。
- 下位代理店の設置は、自由・承諾制・禁止のどれにするかを決め、認めるなら同じ義務を負わせる。
- 上位の条件の変更を下位に及ぼすなら、通知・異議の期間・将来に向かってだけの変更などの歯止めを置く。
- 紹介した代理店の売上からも報酬が出る仕組みに負担が伴えば、連鎖販売取引の要件に当てはめて確かめる。
結論:何層目の誰が、誰と契約し、誰から報酬を受けるかを図にしてから書く
代理店の下にさらに代理店がいる、プラットフォームと提携した一次代理店の下に二次代理店がいる、紹介者がさらに別の紹介者を使う。こうした多層の取引では、契約書が二者の間の約束でしかないことが問題になります。一次代理店とプラットフォームの約束は二次代理店を拘束せず、二次代理店とクリエイターの約束は一次代理店を拘束しません。それなのに、報酬の計算は上の層のデータに頼り、禁止事項は下の層まで守らせたい、という事情があります。
事務所が多層の代理店の契約を作るときは、最初に構造を図にして、次の点を一つずつ確かめています。
- 各層の当事者は誰で、それぞれ誰と契約しているか。自分の契約の相手方ではない層の人は誰か。
- 報酬はどの層から誰に流れるか。自分の層が受け取る報酬と、下の層に分ける報酬は区別されているか。
- 下の層の代理店(下位代理店)を置いてよいか。外部の人に業務の一部を任せることはよいか。
- 上の層の規約や条件が変わったとき、下の層との契約をどう変えるか。
- 下の層から新たな加入者を勧誘させ、その売上から報酬を払う仕組みがあるか(連鎖販売取引との境界)。
このページでは、配信プラットフォームの多層の代理店(本部の側と二次代理店の側)、一次代理店の下の紹介契約、再委託の可否の書き方、連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引との境界を、順に紹介します。手数料の計算が上の層のデータに頼る場合の注意は手数料①でも扱いました。
配信プラットフォームの多層の代理店:ヒヤリングから条文へ(本部の側)
配信プラットフォームの事務所(いわゆる代理店事務所)を運営する会社から、その傘下で独自のブランドの事務所を開く「代理店」との契約の作成を受けた案件では、ヒヤリングで事業の構造を確かめてから条文にしました。構造は、プラットフォーム→本部の事務所→代理店の事務所→所属するクリエイターという多層です。
本部の側のヒヤリングで確かめたことと、条文にした内容
代理店は、本部の名称やブランドを使いますか。
使わず、独自に運営する、との回答でした。条文では、代理店は自己の名義及び計算で独立して業務を行い、本部の代理人・使用人・共同事業者ではないとし、本部の商号・ロゴの無承諾の使用と、「提携」「代理」「公式」などの誤認させる表示を禁じました。
代理店は独占ですか。代理店がさらに下の代理店を置くことはありますか。
独占ではなく自由、外部への業務の委託は可、代理店の展開は不可、との回答でした。条文では、下位代理店の設置を禁じ、補助的な業務の委託は認めて、委託先の行為には代理店が同じ責任を負うとしました。別の年度の契約でも、管理する人数・活動の地域に上限を置かず、独占もない、という条を加えています。
クリエイターの収益は、誰にどう分けますか。
原則としてクリエイターに全額、代理店とクリエイターで分けるなら本部とクリエイターの間の別の契約が必要、との回答でした。条文でも、分配するなら本部とクリエイターの別の契約を条件とする作りにしました。
代理店の報酬はどう決まり、プラットフォームの改定にどう対応しますか。
全体の報酬から規定のロイヤリティを差し引いた額で、プラットフォームの改定には事前に承諾してもらう、との回答でした。条文では、別紙の報酬表で算定し、本部の合理的な裁量で変更でき、事前に通知し、代理店は異議を述べないとしました。
プラットフォームのガイドラインに違反して罰金が科されたら、誰が負担しますか。
プランによって負担を分ける、引き抜きや不正な獲得の罰金はプランを問わず代理店が負担する、との回答でした。条文では、代理店が自分で運営するプランでは代理店が全額を負担して報酬から差し引き、足りない分を請求し、本部に任せるプランでは全体の報酬から差し引いた後にロイヤリティを算定し、足りない分は本部が負担する、と分けました。控除の計算は管理システムの表示を最終的なものとしています。
契約はいつ解約できますか。
所属するクリエイターが0人のときに限り、2か月前の書面の通知で解約できる、との回答でした。クリエイターが退所した時点で報酬の対象外になり、希望すれば本部の運営する事務所へ移籍できる、という終了時の扱いも条文にしました。
改訂の中では、所属するクリエイターのアカウントIDを代理店が一元管理し、変更するときは申請させ、無断で変えると管理システムの対象外になって報酬の算定から外れ得ること、その場合に本部は責任を負わないことも加えました。報酬の計算が上の層のシステムに頼る構造では、識別の情報を誰が管理するかが、そのまま報酬の帰属を決めます。
別の年度の契約では、改訂を重ねて、報酬の流れを「本部が算定して代理店に払う」形から「プラットフォームから代理店へ直接払われ、本部所定のロイヤリティを控除した後の額を受け取る。本部は算定と支払に責任を負わない」形に変え、加盟金・指導料・システム利用料などの金銭を代理店が払う義務はないことを明記しました。契約の変更についても、一方的に変更でき継続して利用すれば同意したものとみなす、という書き方から、通知から7日以内に異議がなければ同意したものとみなし、報酬の条件の変更は明示の合意がない限り将来に向かってだけ効力を持つ、という代理店の側の歯止めを置く書き方に変えています。期間も、当初の案の1年の自動更新から、3か月の期間に1年の自動更新を組み合わせる形を経て、最後は3か月とし、更新の規定を外しました。所属するクリエイターの引き抜きの禁止には、クリエイターが別のアカウントで新たに登録する意思を明示した場合を除く、というただし書を加え、引き抜きの禁止は終了後1年間存続させています。クリエイター本人の意思による移籍まで縛らない書き方です。
二次代理店の立場から見た切り分け
同じ多層の構造を、二次代理店の側から見た案件もあります。プラットフォームの二次代理店である配信事務所と、所属するクリエイターのマネジメント契約で、配信事務所が使っていた既存の案をレビューしたうえで、新しい契約を作りました。報告書は、二次代理店である事務所、一次代理店、プラットフォームの運営者、クリエイターの契約上の責任が切り分けられていないことを、全体の評価として挙げています。
二次代理店とクリエイターの契約:レビューの指摘と新しい契約
一次代理店の位置づけ
誰の支払の約束なのかを、当事者でない者まで含めて書き分けています。
他のプラットフォーム
一方的に条件を課す書き方を、個別の同意の方式に改めています。
事務所が受け取る代理店報酬
上の層から事務所に入るお金と、クリエイターのお金を混ぜない書き方です。
企業の案件
立場によって、未払いのリスクを誰が負うかが変わります。
退所と移籍
クリエイターの移籍の自由を、手続の期限で担保しています。
新しい契約では、クリエイターに示していない一次代理店の内部の規程によって、新たな金銭の負担や重大な活動の制限を課さない、という定めも置きました。下の層の人から見れば、上の層の規程は見たこともないルールです。自分の契約に書かれていない上の層のルールに縛られないことを明記しておくと、多層の構造での予測できない負担を防げます。
一次代理店の下の紹介契約:データ・引き抜き・違約金
配信事業者がクリエイターの紹介者と結ぶ契約でも、上に一次代理店がいる構造でした。紹介者の報酬は、紹介したクリエイターの配信の収益のうち一次代理店から配信事業者に分配される額の10%で、算定は一次代理店が示すデータに基づきます。役割は、配信事業者がクリエイターの管理・育成・アカウントの運用をし、紹介者は紹介・登録の支援・参加の促進をする、最終的な意思決定と管理の権限は配信事業者だけが持つ、と分けています。
- さらに下の紹介者:紹介者がさらに下の紹介者を使う(再委託する)には配信事業者の事前の書面の承諾が必要で、同じ義務を負わせ、無断なら催告なしに解除できるとしました。
- 引き抜きの禁止:所属するクリエイターへの勧誘・引き抜き・直接の契約、第三者を使った同じ行為、SNSやDMでの勧誘を禁じ、競業の禁止は契約中と終了後6か月、日本国内としました。
- 違約金と推定:禁止事項・競業の禁止に違反したときは、対象のクリエイター1名ごとに定額の違約金がかかり、損害賠償の請求は別にでき、移籍の目的での接触があれば違反と推定するとしました。
- 責任の上限:通常かつ直接の損害に限り、直近3か月の分配額の総額を上限とし、故意・重大な過失と、禁止事項・競業の禁止・秘密保持の違反には上限を適用しないとしました。
配信事務所がスカウトの代理店に業務を委託する別の契約では、業務中は事務所の各部門の名称を使ってよいが、業務の外での使用や悪用は禁じ、違反には定額の違約金を定めています。契約期間は5年で、満了の6か月前までに申出がなければ2年ずつ延長する作りです。長い期間と自動の延長を組み合わせるなら、延長しないための申出の期限が実際に守れる長さかを確かめておきます(契約の終わらせ方)。
再委託・下位代理店の可否の書き方
代理店が業務の一部を他の人に任せること(再委託)や、下に代理店を置くことを、どこまで認めるかは、契約によってばらばらです。事務所の資料には三つの書き方があります。
| 書き方 | 内容 | 事務所の資料での例 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 自由に認める | 「再委託することができる」とだけ定める | 研修サービスの紹介パートナー契約 | 紹介の網を広げたい場合。ただし、下の層の勧誘や表示を管理する手段がなくなる |
| 事前の書面の承諾 | 再委託には本人の事前の書面の承諾が必要。子会社やフリーランスも「第三者」に含めると明記する例もある | 文章生成のWebサービスの代理店、クラウドサービスの販売代理店 | 誰が勧誘しているかを本人が把握したい場合 |
| 補助的な委託だけ認め、下位代理店は禁止 | 外部への業務の委託は認め、委託先の行為に代理店が同じ責任を負う。代理店の展開は禁じる | 配信プラットフォームの多層の代理店 | 代理店の数を本部が管理したい場合 |
どの書き方でも、下の層の人が勧誘の禁止事項や表示のルールを守らなければ、その結果は本人に跳ね返ります。消費者を勧誘する取引では、消費者契約法5条1項が、二以上の段階にわたる委託を受けた者の勧誘にも取消しの規定を準用しています(代理店・紹介者の営業と消費者向けのルール)。再委託を認めるなら、同じ義務を負わせること、本人が求めれば再委託先を知らせること、再委託先の違反を代理店の違反とみなすことを、あわせて書いておきます。
役務を再販する広告代理店の契約(代理店契約書の種類で紹介)のように、代理店がエンドクライアントを持つ構造では、代理店の側に「エンドクライアントに守らせる」義務を負わせます。エンドクライアントは制作会社の契約の当事者ではないので、制作会社が直接義務を課すことはできません。
連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引との境界
代理店が新しい代理店を紹介すると、紹介した代理店の売上からも手数料が入る、という二段階の報酬の仕組みは、代理店の網を広げるためによく考えられます。けれども、この仕組みに加入の費用などの負担が組み合わさると、特定商取引法の連鎖販売取引(いわゆるマルチ商法)の規制を受けることがあります。
特定商取引法33条1項は、連鎖販売業を、物品の販売(あっせんを含む)又は有償の役務の提供(あっせんを含む)の事業であって、再販売・受託販売・販売のあっせん(役務なら同種役務の提供・そのあっせん)をする者を、他の者が提供する取引料などの「特定利益」を収受し得ることをもって誘引し、その者と「特定負担」(商品の購入、役務の対価の支払、取引料の提供)を伴う取引をするもの、と定義しています。また、同法51条1項は、業務提供誘引販売業を、物品の販売又は有償の役務の提供の事業であって、その商品や役務を利用する業務(事業者が自ら提供し、又はあっせんする業務)に従事することで得られる「業務提供利益」を収受し得ることをもって相手方を誘引し、特定負担を伴う取引をするもの、と定義しています。どちらも、該当すれば法定の書面の交付や不実告知などの禁止がかかり、業務提供誘引販売の契約は、書面を受け取った日から20日を経過するまでクーリング・オフができます(同法58条1項)。
講座の主宰者がつくる講師の制度についての報告書の指摘
- 仕組みの構造有償の講座を提供し、修了後に主宰者が認める講師の業務への道を用意し、受講料とは別に講師の費用(特定負担)を取る仕組みは、業務提供誘引販売取引の定義に「危険なほど近い」。
- 勧誘の内容勧誘で「講師になれば業務を回す」「収入が得られる」などを示していれば、該当する可能性が高い。
- 非保証の一文依頼者の回答(収入やあっせんを約束する説明はないが、講師になれば主宰者の講座の講師になる)を受けた回答書で、「収入を保証しない」の一文だけでは該当性を否定できない、要件は業務提供利益を収受し得ることをもって誘引することで、収入の保証までは要らない、と説明。講師に登用するという説明は、主宰者が自ら業務を提供する仕組みそのものである。
- 将来の紹介料講師が新たな受講者を勧誘して紹介料などの利益を得る仕組みを入れるなら、連鎖販売取引に当たるおそれがあり、入れる時点で改めて検討が必要。
この案件の改訂版では、講師の費用は受講料と別で希望者だけが払うこと、修了しても当然には講師にならないこと、講師としての業務の委託は別の契約にすること、収入・業務のあっせん・顧客の紹介を保証も約束もしないこと、業務の提供・あっせんを内容とする契約を結ぶ場合は特定商取引法などが定める時期までに法定の書面を交付することを定めました。講師の制度そのものの設計は講座の分野の論点なので、ここでは代理店の網と共通する部分、つまり「下の人が新しい人を勧誘して利益を得る仕組み」を入れる前に、連鎖販売取引の要件に当てはめる、という点を押さえておきます。
代理店の契約でも同じです。施術サロンなどがお客様を紹介する紹介代理店の契約で、紹介した代理店の売上からも一律の手数料を払う二段階の報酬を置き、代理店の登録は無料(無料の勉強会への参加が条件)とする作りがあります。リフォームの送客サイトの契約にも、施工業者が別の業者を紹介して審査に通れば双方に紹介料の割引券を渡し、3か月以内に解約したら正規の料金を払う、という加盟店による加盟店の紹介の仕組みがあります。こうした仕組みを置くなら、加入に負担(登録料・研修費・商品の購入・保証金など)があるかどうか、紹介による利益をうたって勧誘していないかを、要件に照らして確かめます。フランチャイズの加盟店の募集に紹介の報酬や収入をうたう勧誘が伴う場合も、フランチャイズという名前だけで連鎖販売取引や業務提供誘引販売取引の規制を否定することはできません(フランチャイズ契約書)。
よくあるご質問
二次代理店を置くことを、契約で禁止できますか?
できます。下位代理店の設置を禁じ、業務の一部を外部に任せること(補助的な委託)だけ認める、という書き方があります。認める場合は、事前の書面の承諾、同じ義務の負担、再委託先の違反を代理店の違反とみなすことを定めておきます。
上位の代理店の規約が変わったら、下位の代理店との契約も変わりますか?
自動的には変わりません。変える必要があるなら、通知の方法、異議を述べる期間、報酬の条件の変更は将来に向かってだけ効力を持つことなどを契約で決めておきます。下位の代理店に示していない上位の規程で新たな負担を課さない、と書く例もあります。
代理店が新しい代理店を紹介したら手数料を払う仕組みは、問題がありますか?
加入に登録料・商品の購入などの負担があり、紹介による利益をうたって勧誘する場合は、特定商取引法の連鎖販売取引に当たるおそれがあります(同法33条1項)。仕組みをつくる前に、要件に当てはめて確かめる必要があります。
「収入を保証しない」と書けば、業務提供誘引販売取引に当たりませんか?
その一文だけでは否定できません。要件は、業務に従事して得られる利益を収受し得ることをもって誘引することで、収入の保証までは要件ではないからです。勧誘や広告で何を伝えているか、業務を有償で提供するかを確かめます。
二次代理店がクリエイターや下の代理店と契約するとき、上位の代理店の報酬はどう扱えばよいですか?
自社が上位の代理店から受け取る報酬と、クリエイターや下の代理店の報酬を混ぜないように書きます。上位からの報酬を下の層の報酬から差し引くのか、分配の対象にするのかを明記します。
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