このページの要点
- 売値の拘束はネットでも原則違法。「オンラインの価格は定価と同額」は、買い取った商品なら拘束に当たり得る。供給者が危険と費用を自ら負担して実質的に売っているなら例外(令和8年7月8日改正で類型追加)。
- モール出品の禁止は販売方法の制限として書ける。商品から理由を説明でき、全販売店に同じ条件で、安売りの狙い撃ちにならないことが条件。
- 配送先が地域外のお客様との取引を停止させる運用は受動的販売の制限に当たり、価格維持効果が生じる場合は違法。
- 並行輸入は価格を維持する目的で妨げると違法。取扱いを禁じず、区別の表示と保証の範囲、真正品の確認手続を書く。
結論:ネット販売を一律に禁じるのではなく、何のための制限かを書き、価格と並行輸入には踏み込まない
商品を供給する側(このサイトでは「供給者」と呼びます。メーカー、輸入元、ブランドの保有者などです)が、商品を買い取って売る販売店に、「ネットでは売らない」「モールには出品しない」「並行輸入品は扱わない」と契約で求めることは、すべてが禁止されているわけではありません。分かれ目は、その制限が何のために、どの範囲で、誰に課されているか、そして売値を守らせる手段になっていないか、です。
公正取引委員会の「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(以下「流通・取引慣行ガイドライン」)は、インターネットを利用した取引か実店舗での取引かで基本的な考え方を変えない、としています。このページの整理は平成29年6月16日に改正された版を土台にし、価格の節には、令和8年7月8日の改正(再販売価格維持行為の例外に当たる場合と具体例の追加)を反映しています。要点は五つです。
- 販売店の売値(再販売価格)の拘束は、ネットでも店舗でも原則として不公正な取引方法に当たります(独占禁止法2条9項4号)。「オンラインの価格は定価と同額」は、買い取った商品なら当たり得ます。例外は、供給者が販売までの危険と費用を自ら負担し、実質的に供給者が販売していると認められる場合です。
- モールや自社サイトでの販売の禁止は「販売方法の制限」です。品質の保持や商標の信用の維持などの合理的な理由があり、ほかの販売店にも同等の条件を課すなら、それ自体は問題とならないとされています。
- 配送先が地域外と分かったお客様との取引をやめさせることは、受動的販売の制限に当たり、価格維持効果が生じる場合は違法です。
- 並行輸入は価格競争を促すため、価格を維持する目的で妨げると違法です。根拠のない偽物扱いも同じです。
- 禁止・許可制・例外の手続・違反時の措置を、運用できる条文にします。
販売店契約の全体像は販売店契約書・特約店契約書(再販売型)、契約の型の見分け方は代理店契約書の種類と見分け方で扱っています。
制限は四つの枠に分かれる:売値、地域と取引先、販売方法、並行輸入
「ネット販売の制限」には、法律上の扱いが違う制限が混ざっています。ガイドラインの枠に沿って並べると次のとおりです。
| 制限の種類 | ガイドラインの位置づけ | ネット販売での例 |
|---|---|---|
| 売値(再販売価格)の拘束 | 原則として違法。供給者が実質的に販売していると認められる場合などの例外がある | オンラインの価格は定価と同額、下限・上限を含む範囲の価格、事前承認の価格 |
| 地域・取引先の制限 | 責任地域制・販売拠点制は通常問題にならない。厳格な地域制限・受動的販売の制限は、価格維持効果が生じる場合に違法 | 海外配送の禁止、配送先が地域外のときの取引停止、横流しの禁止 |
| 販売方法の制限 | 合理的な理由があり、ほかの販売店にも同等の条件なら、それ自体は問題とならない | モール出品の禁止、通信販売の禁止 |
| 並行輸入の妨害 | 価格を維持するために行われる場合は違法(一般指定12項または14項) | 仕入先への販売中止の働きかけ、偽物扱い |
一般指定は公正取引委員会が告示で指定する不公正な取引方法の類型で、12項は拘束条件付取引、14項は競争者に対する取引妨害です。
売値の拘束は、供給者の地位にかかわらず原則として問題とされます。厳格な地域制限などは、「市場における有力な事業者」(目安はそのシェア20%超)が行い、価格維持効果などが生じる場合に違法となります。制限は、従わない取引先への出荷停止などで実効性が確保されているかでも判断されるため、条文が整っていても、運用で安売りの販売店だけを止めれば、運用が評価されます。
実務で多い契約書の型
- 正規取扱店型:目的の条で「再販売価格を拘束する意図はない」と宣言し、販売統制の条で「著しく低廉な価格」「無許可のオンライン出品」「転売・名義貸し」を並べ、違反に出荷停止・解除・違約金を結びつける。宣言と統制の条が食い違いやすい型です。
- 買取りの卸売型:「オンラインでは供給者の一般小売価格と同額」「基準価格を下回る価格又は著しく上回る価格で販売してはならない」と書く。売値の拘束に最も近い型です。
- 再販売制限付きの代理店型:再販売先は申請書で書面承諾を取る。承諾の基準も、断る理由の扱いも書かない例が多い型です。
- 委託販売・取次ぎ型:所有権が最終のお客様に直接移り、手数料を引いて精算する。題名だけ「販売委託」で、中身は掛率で仕入れて在庫を持つ買取り、という契約が少なくありません。
ECモールへの出店を禁じることはできるか:販売方法の制限として「理由」を書く
モール出品の禁止は、販売方法の制限として組めますが、「なぜモールではいけないのか」を条文と運用で説明できることが前提です。実務で多いのは、「オンライン販売媒体」を、モールやフリマに加え、SNSの販売機能、ライブ配信、販売店自身のサイト、越境ECまで広く定義して一括して禁じる型です。役職員や委託先を経由した出品、名義貸し、代理出品も本人の違反とみなすのが通例です。抜け道は塞げますが、次の問題が出ます。
- 実店舗を持つ販売店が公式サイトで通信販売をしていると、その時点で違反になる。供給者が自社サイトまで禁じる意図だったのか、条文から分からない。
- 例外がないため、供給者が後から特定の販売店だけを許可すると、全販売店に同等の条件を課しているとはいえなくなる。
そこで、販売の場を性質で分け、「禁止」「許可制」「条件付きで可」を割り当てます。たとえば、第三者のモールは禁止または許可制(商品ページを供給者が管理できないため)、販売店自身のサイトは承認を受けたものだけ可(表示と説明を事前に確認できるため)、SNSやライブ配信は表示の基準を守る条件で可、とします。
通信販売そのものを禁じた例が、公正取引委員会の相談事例集で紹介されています。医療機器のメーカーが取引先に通信販売を禁じた事案は、調整が行われないと性能が著しく妨げられ、その調整は通信販売では行えないこと、必要最小限の制限であること、すべての取引先に同等であること、店舗販売の取引先に希望小売価格より相当低い価格で売る者もいて売値の制限とは考えられないこと、を理由に問題とならないとされました。商品から説明できること、必要最小限、全販売店に同じ、売値の制限でないこと。この四つを条文にも運用にも持ち込みます。販売方法の制限を守らない販売店のうち安売りをする者にだけ出荷停止をすると、通常、販売価格の制限とみなされます。
条文例:インターネットでの販売(供給者側で作る場合の一例)
1乙は、本商品を、自己が管理する実店舗及び甲が書面で承認した自己の公式ウェブサイトにおいて販売するものとし、第三者が運営するインターネット上の販売の場(モール、オークション、フリマアプリ及びライブ配信による販売機能を含む。以下「モール等」という。)で、本商品を販売し、又は出品してはならない。ただし、甲が書面で承認した場合は、この限りでない。
2前項の定めは、使用方法の説明、保管条件の管理及び真正品の確保がモール等では十分にできないおそれがあることを理由とする。甲は、同等の条件をすべての販売店に適用する。
3乙は、承認を求めるときは、販売の場の名称、運営者及び商品ページの内容を記載した書面を甲に提出する。甲は、10営業日以内に諾否を通知し、承認しないときは理由を示す。
4甲は、本条の遵守の確認のため、販売の場及び出荷の状況に関する資料の提出を乙に求めることができる。この求めは、乙の販売価格を調査し、又は遵守を求める目的で行ってはならない。
新しく書いた例です。10営業日などの数字は商品に合わせて決めます。最後の項で調査の目的を限ったのは、価格の報告徴収や店頭の見回りが、示した価格で売らせる手段として挙げられているためです。
違反時の違約金は、計算方法が結果を左右します。「違反販売額の2倍と10万円のいずれか高い額」とし、単価を税込5,500円と仮定すると、8個の販売(44,000円)でも下限額の100,000円になります。媒体ごと・商品ごとに下限額が発生する書き方で、2つのモールで4個ずつ(合計44,000円)売ると200,000円で、実際の販売額の4倍を超えます。
民法420条は、違約金は賠償額の予定と推定される(3項)と定めています。超過損害も別に請求できると書くと、賠償額の予定なのか違約罰なのかが曖昧になるので、位置づけを書き分けます。実際の損害とかけ離れた金額は、公序良俗に反するとして一部が無効とされる余地があります(民法90条)。倍率や下限額は説明できる根拠から決めます(代理店契約・業務提携契約・フランチャイズの終了)。
「オンラインでは定価と同額」と書くと何が起きるか:価格に触れる書き方
買い取った商品の売値を、条文で供給者の価格にそろえさせることは、再販売価格の拘束に当たり得ます。モール制限の条文のそばに価格の一文が置かれがちなので、注意が要ります。
実務で見られる例は、仕入れて自分で売る契約で、「実店舗の価格は販売店の任意、オンラインストアでは供給者の一般小売価格と同額」と定めるものや、「基準価格を下回る価格又は著しく上回る価格で販売してはならない」とするものです。ガイドラインは、事業者の示した価格で販売することを契約で定めている場合を、拘束の実効性が確保されている典型に挙げ、拘束の対象となる価格に、一定の範囲内の価格や事前の承認を得た価格も含めています。自社サイトとの競合を避けたい趣旨でも、評価は変わりません。
例外:供給者が危険と費用を負担し、実質的に供給者が売っている場合
ガイドラインは、直接の取引先が単なる取次ぎとして機能し、実質的にみて供給者が販売していると認められる場合は、供給者が価格を指示しても通常は違法とならない、としています。令和8年7月8日の改正で、この例外に次の類型が加わりました。流通業者に商品を販売する場合でも、供給者が、お客様への販売に至るまでに生じる危険及び費用を自ら負担することにより、実質的に供給者がお客様に販売していると認められるときです。
危険と費用は個別の事案で判断されますが、通常は、売れ残りの危険、契約不適合があった場合の危険、善良な管理者の注意義務の範囲を超えて商品が滅失・毀損した場合の危険、代金回収が不能となった場合の危険、在庫保管・輸送・広告宣伝などの費用が含まれるとされます。費用の実態を供給者がすべて把握するのは難しいため、供給者が、①費用を負担すること、②費用の項目と負担方法、③項目に不足があれば協議を申し出られること、をあらかじめ明示し、申出があれば協議して確認された費用を負担したなら、通常は負担したと考えられます。ただし、協議の合意の結果でも、費用を流通業者に一部でも負担させるなら、負担したことにはなりません。
具体例は、家電メーカーが取引先に一般消費者への販売価格を指示する事例(令和6年度相談事例集)です。取引先はいつでも返品でき(返品費用と代金相当額の返金はメーカー負担)、売れ残りの危険、契約不適合と在庫管理上の危険(取引先が善管注意義務を怠ったことに起因するものを除く)はメーカーが負い、代金回収不能の危険は取引先が負わず、費用は明示と協議を経て確認されたものをメーカーが負担する、という前提なら、取引先は単なる取次ぎにすぎず、独占禁止法上問題とならない、と整理されています。
この例外は、価格を指示したい供給者が危険と費用も引き受ける設計にしたときに使えるもので、題名ではなく、返品、在庫、代金回収、費用の流れで決まります。題名が「販売委託」でも、所有権と在庫の危険が販売店に移り、販売店が掛率で仕入れる契約は、この類型を満たしません。反対に、売買の形でも、危険と費用を供給者が実質的に負担しているなら、この類型で評価されます。今回の改正は、この類型とその具体例の追加です。
価格に触れる書き方は、ほかにも二つあります。販売店の顧客(小売店)にも店頭で希望小売価格での販売を原則とさせる書き方は、間接の取引先への拘束も直接の取引先と同じ考え方で評価されるため、小売店には参考価格を伝えるにとどめます。「著しく低廉な価格や過度な値引きをしてはならない」は、水準で縛る点で一定の価格を下回らない価格に近く、出荷停止と結びつくと実効性が確保されたと評価されやすいので、価格ではなく表示・品質・保証の観点の条項にします。価格を明示した広告の禁止も、原則として不公正な取引方法に当たります。
希望小売価格は、「定価」や金額だけの表示ではなく、「参考価格」「メーカー希望小売価格」のような非拘束的な用語で示し、売値は各販売店が自主的に決めると明示することが望ましい、とされています。供給者が守りたいものは、真正品か分からない出品、使用期限の近い商品の投げ売り、保証対象外の状態での販売、誤認を招く二重価格といった、ブランドの信用を損なう実態であることが少なくありません。その実態に対応する条項(使用期限、保管の状態、付属品、保証の取扱いなど)を別に立てれば、価格に触れずに目的を果たせます(表示の規制は代理店・紹介者の営業と法規制)。販売状況の調査そのものは、出荷停止などを伴わない限り、通常問題となりません。
条文例:供給者が価格を指示する取次ぎ型(危険と費用を供給者が負担する場合の一例)
1乙は、本商品を、甲が指示する販売価格でお客様に販売する。本商品の所有権は、乙がお客様に引き渡した時に甲からお客様へ直接移転する。
2乙は、納品日からお客様への販売までの間、いつでも未販売の本商品を甲に返品することができる。甲は、返品に要する費用を負担し、代金相当額を乙に返還する。売れ残りの危険は甲が負う。
3お客様への販売前の本商品に契約不適合があったとき、又は滅失若しくは毀損したときの危険は、乙が善良な管理者の注意を怠ったことによるものを除き、甲が負う。乙は、代金の回収が不能となる危険を負わない。
4甲は、在庫の保管、輸送及び広告宣伝その他お客様への販売に至るまでに生じる費用を負担する。費用の項目及び負担の方法は別紙のとおりとし、乙が項目に不足があると考えるときは、甲に協議を申し出ることができる。甲は、協議のうえ確認された費用を負担し、その一部も乙に負担させない。
新しく書いた例です。ガイドラインの具体例の要素(返品、売れ残り、契約不適合と滅失・毀損、代金回収、費用の明示と協議)を条文にしました。実際の返品や費用の精算がこの内容で行われていなければ、取次ぎとは評価されません。
ネット販売と販売地域:配送先を理由に取引を断らせてはならない
販売店のサイトを見た遠方のお客様からも注文が入ります。ガイドラインは、地域の制限を、責任地域制(主たる責任地域で積極的な販売活動を義務付ける)、販売拠点制(店舗の設置場所を限る)、厳格な地域制限(地域外での販売を制限する)、地域外顧客への受動的販売の制限に分けます。自ら顧客を探して売るのが積極的販売、求められて売るのが受動的販売で、販売店のサイトを見たお客様の注文は後者です。責任地域制と販売拠点制は、通常、違法とはなりません。
問題は残る二つです。厳格な地域制限は、市場における有力な事業者が行い、価格維持効果が生じる場合に違法です。受動的販売の制限は、価格維持効果が生じる場合に違法です。ガイドラインはネットの典型例として、配送先情報から住所が地域外と判明した顧客とのインターネット取引を停止させる場合を挙げています。「配送先が管轄外ならキャンセルする」という運用を義務付ける条項は、これに当たり得ます。
条項を見るときは、地域の定めが積極的な販売活動の範囲か、地域外の注文を断る義務まで含むかを確認します。「日本国内に限る」の理由は、輸出先の事情として説明できるものにします(海外企業との契約)。
転売の禁止は、ブランド管理で広く使われます。実務では、転売の扱いを、原則禁止(例外は承認制)、条件付きで許容、完全に自由、の三つから先に決めてから条文にします。ガイドラインは、横流しの禁止を、価格維持効果が生じる場合は違法とします。一方、取扱いを認める基準を設け、基準を満たす販売店だけに取り扱わせてほかへの転売を禁じる「選択的流通」は、基準が品質の保持や適切な使用の確保など消費者の利益の観点からの合理的な理由に基づき、希望するほかの販売店にも同等の基準を適用するなら、特定の安売り業者が基準を満たさず取り扱えなくても、通常問題とならないとします。承諾制にするなら、基準を文書にして全販売店に示し、承諾を撤回できる場合も書きます。基準も理由も示さず裁量で断る書き方は、同等の基準という説明と合いません。安売りを理由にした販売の禁止や出荷の停止は、原則として違法です。再販売先の承諾制は二次代理店・再委託の書き方、地域単位の独占は独占販売契約の書き方にあります。
並行輸入と「偽物扱い」:商標の守り方と、やってはいけない妨害
並行輸入品を、価格を維持するために妨げることは違法で、販売店に取扱いを一律に禁じる条項も慎重に書く必要があります。「並行輸入」とは、正規の輸入総代理店などがいる商品を、第三者が別のルートで輸入して売ることです。ガイドラインは、商標権を侵害しない真正商品の輸入を前提に、並行輸入は一般に価格競争を促す効果があるので、価格を維持するためにこれを妨げる場合は問題になる、としています。
商標法側の整理は、最高裁平成15年2月27日判決(フレッドペリー事件)が示しました。特許庁の整理では、外国で適法に商標が付された商品であること、外国と日本の商標権者が同一人か同視できる関係にあること、日本の商標権者が品質を管理でき品質上の実質的な差異がないこと、の三つを満たす並行輸入は商標権侵害にならず、偽物や要件を欠く輸入品は侵害になり得ます。適法に流通に置かれた真正商品を買った販売店の転売にも、商標権は及ばないと理解されています(消尽の考え方)。商標権で止められない領域を契約で補います(商標ライセンス契約書)。
価格を維持するために行うと違法になる行為として、ガイドラインは、並行輸入業者が購入を申し込んだ供給者の海外の取引先に販売を中止させること、並行輸入品を取り扱わないことを取引条件にすること、十分な根拠なしに偽物と呼んで販売の中止を求めること、店頭での買占め、他では著しく難しい修理や補修部品の拒否、権利侵害のおそれがないのに広告掲載を止めさせることを挙げています。修理に対応できない客観的な事情がある場合の拒否は、それ自体は問題とされません。
一方、仕様や品質が異なるのに虚偽の出所表示で同一品と誤認させるおそれがある場合や、品質の劣化で消費者の健康・安全を害し総代理店の商品の信用が損なわれる場合の措置は、問題とならないとされます。並行輸入品を扱うか否かは販売店が決めるものとして、禁止の代わりに、①正規ルートの商品と並行輸入品を区別して表示すること、②保証やアフターサービスの範囲と理由を明示すること、③国内向けと仕様が異なる輸入品はその旨を表示すること、を書きます。
真贋が争点になる取引では、疑義が出たときの手続を契約に置く例があります。一方が模倣品の疑いを知ったら相手方に通知し、通知を受けた側が数営業日内に初期対応の方針を示し、販売の一時停止、在庫の隔離、掲載削除などの暫定措置を協議して決め、未販売在庫の返品や廃棄の費用は原因が帰属する側が負担します。中古品の卸売では、非正規品の返品期限と、出荷時の写真や管理番号による同一性の確認を組み合わせる例があります。競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知・流布する行為は、不正競争防止法2条1項21号の不正競争で、根拠なく「偽物」と告げたり、モールの運営者に権利侵害を申告して出品を止めたりすると、この問題が生じ得ます。
条文例:真正品の確認(供給者側で作る場合の一例)
1甲は、乙が販売する本商品について真正品でない疑いを持ったときは、根拠となる事実(商品の写真、識別番号及び販売の場所)を乙に通知し、乙に仕入先を説明する機会を与える。
2乙は、前項の通知を受けたときは、10営業日以内に、仕入先及び仕入の時期を示す資料を甲に提出する。乙が営業上の秘密に当たると主張する部分は、甲が第三者に開示しない。
3甲は、前2項の手続を経ずに、乙又は乙の販売先に本商品が偽物であると告げ、又はモール等の運営者に権利侵害を申告してはならない。ただし、模倣品の販売であることが明らかな場合は、この限りでない。
新しく書いた例です。第3項は供給者の権利行使を遅らせる条文なので、供給者側は、ただし書の範囲を商品の性質に合わせて決めます。
よくある失敗と直し方
実務で多い書き方のうち、引っかかりやすい五つを挙げます。
ネット販売・モール・並行輸入の条項:書き方の例(一般的な例)
「オンライン販売媒体」を一括して禁じる
自社サイトで売る販売店が知らないうちに違反になる事態と、例外許可が「同等の条件」を崩す事態を防ぎます。
価格は拘束しないと書きながら、別の条で水準を縛る
「拘束しない」という宣言より運用の手段が評価されるため、水準で縛る文言と不利益を切り離します。
価格の範囲を上下から縛る
下限だけでなく上限や範囲、事前承認の価格も拘束の対象です。直し方は表現ではなく、型の選び直しです。
再販売の承諾を裁量にし、終了時の在庫を決めない
基準なしの裁量は、同等の条件という説明と合いません。在庫が残ると、終了後の安売りと商標の使用停止の争いになります。
「販売委託」と題して、実質は買取りの契約にする
型で価格の指示の評価が変わるため、先に型を決めます。
ヒヤリングで確認すること
確認が足りないと、制限の理由を説明できない条項になります。
条項を作る前の確認事項(問いと、その理由)
商品はどのような性質ですか(使用方法の説明が必要か、保管条件が厳しいか、真贋が問題になりやすいか)。
販売方法の制限の理由は、商品の安全性・品質・商標の信用に結びつきます。商品から説明できなければ条文に書けません。
現在、販売店はどこで売っていますか(実店舗、自社サイト、モール、SNS)。
既にモールや自社サイトで売っている販売店に新しい禁止を課すなら、猶予期間や承認の扱いが要ります。
モールで売られると何が困りますか(価格の崩れ、偽物の混入、苦情、表示の誤り)。全販売店に同じ条件を課せますか。
困りごとが価格の崩れだけなら、販売方法の制限は価格の拘束の手段と見られやすくなります。品質や真贋の問題があれば、そちらを理由にし、ほかの販売店にも同等の条件を課します。
販売店は商品を買い取りますか、委託を受けて売りますか。所有権はいつ移り、在庫の危険は誰が負いますか。価格を決めたいのは誰ですか。
買取りか委託かで、価格の指示の評価が変わります。表題ではなく実質で型を決めます。
供給者は、返品の受入れ、売れ残りの危険、代金回収の危険、在庫保管・輸送・広告宣伝の費用を実際に引き受けられますか。
価格を指示したい場合、これらを供給者が実質的に負担しているかが、例外に当たるかを左右します。費用の一部でも販売店に負担させると、負担したことになりません。
海外のお客様への販売を認めますか。海外に総代理店はありますか。
「国内に限る」の理由は、輸出先の事情から説明します。
正規の輸入ルートの商品ですか。並行輸入品は出回っていますか。国内向けと仕様や保証が違う商品はありますか。
区別の表示と保証の範囲の条項を作るために、仕様や保証の違いを確認します。
卸価格、最低発注数量、送料、決済方法は、いつ、どの手順で変わりますか。
本文に固定すると改定のたびに変更合意が要ります。別紙に置き、事前通知、既に受けた注文には旧条件、異議があるときの協議や解約の手順を決めます。
違反をどう見つけ、見つけた後はどの順で措置を取りますか。
調査が価格の監視に傾くと、売値を守らせる手段と見られます。出荷停止や解除の前に、是正の要請と猶予の段階を置きます。
よくあるご質問
メーカーは、販売店がAmazonや楽天市場のようなモールで売ることを禁止できますか。
禁止の条項は販売方法の制限として書けます。品質の保持や商標の信用の維持などの合理的な理由があり、ほかの販売店にも同等の条件を課すなら、それ自体は独占禁止法上問題とならないとされています。ただし、安売りをする販売店だけに出荷停止をするなど、価格を守らせる手段として使うと、価格の拘束とみなされます。
ネット販売の価格を「定価と同額にする」と契約に書けますか。
販売店が商品を買い取って売る契約では、書かないほうがよい条項です。事業者の示した価格で売ることを契約で定めることは、再販売価格の拘束の典型とされ、原則として不公正な取引方法に当たります。希望小売価格は参考価格として示し、拘束しないと書くのが基本です。例外として、供給者が売れ残りや代金回収などの危険と、保管・輸送・広告宣伝などの費用を自ら負担し、実質的に供給者が販売していると認められる場合は、価格を指示しても通常は違法とならず、令和8年7月8日の改正でこの類型が追加されました。実際に危険と費用を負担していることが前提です。
並行輸入品を扱う店には商品を卸さない、と決めてよいですか。
価格を維持する目的でこれを行うと、不公正な取引方法として違法になります。並行輸入品を扱うかは販売店が決めるべきとされます。代わりに、正規品との区別の表示、保証の範囲の明示、仕様が異なる輸入品の表示を条項にする方法があります。
配送先が海外や遠方だと分かったら、注文を断るよう販売店に義務付けられますか。
地域外のお客様の求めに応じた販売を制限することは、受動的販売の制限に当たり、価格維持効果が生じる場合は違法です。ガイドラインは、配送先から地域外と判明した顧客との取引を停止させる例を挙げています。積極的な販売活動を地域で義務付けるだけなら、通常は違法となりません。
偽物ではないかと疑う商品がモールに出ているとき、契約上は何を用意しておくべきですか。
根拠のない偽物扱いは、並行輸入の妨害や、不正競争防止法上の信用毀損の問題を生みます。写真・識別番号・販売の場所などの根拠を整理して通知し、販売店に仕入先を説明する機会を与える手続を、暫定措置と未販売在庫の費用負担とあわせて契約に置くと、運用が安定します。明らかな模倣品への対応は、この手続とは別に取れるようにします。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、取引の実態や当事者の立場によって変わることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索 / 公正取引委員会 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 特許庁