このページの要点
- 成約の定義(契約の成立・入金・確定・キャンセル期間の経過など)と、成約後の解約・返金のときの戻しを一緒に決める。
- 戻しは、対象(返金・解約・不払い・取消し)、方法(返還か控除か)、期限(終了時点での打ち切り)を書く。
- 異議の期間とみなし承諾を置き、異議のない部分は期日どおり払う形にして、支払が止まり続けるのを防ぐ。
- 手数料の基礎が相手方の売上なら、報告の頻度・期限・項目と証憑の提出を手数料の条と対にして書く。
結論:「成約」の定義と「戻し」の有無は一組で決める
手数料がいつ発生するか(成約の定義)と、発生した後にお客様が解約・返金したら手数料を戻してもらうか(クローバック)は、別々の条に書かれていても、一組で考える必要があります。成約の時点を早くすれば代理店には早く手数料が入りますが、その後の解約や返金で本人の手元に残る売上より手数料のほうが大きくなることがあります。成約の時点を遅くすれば(たとえば全額の入金後)戻しの必要は小さくなりますが、代理店はいつまでも報酬を受け取れません。
事務所の契約書では、次の三つをそろえて決めています。
- 成約の定義:何が起きたら手数料が発生するか(契約の締結、初回の入金、全額の入金、キャンセル期間の経過など)。
- 戻しの有無と方法:返金・解約・不払いがあったときに、支払済みの手数料を返してもらうか、次の支払から差し引くか、戻さないか。戻しの期限。
- 支払の手続:報告・確定・異議・支払期日と、報告が遅れたり異議が長引いたりしたときの扱い。
算定の基礎は手数料①で扱いました。ここでは、発生の時期、戻し、支払と異議を、事務所の資料の型ごとに紹介します。
成約の定義の型
| 型 | 手数料が発生する時点 | 事務所の資料での例 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 契約の成立 | 本人とお客様の契約が正式に結ばれ、支払義務が法的に発生したとき | クラウドサービスの紹介業務契約 | その後の解約・不払いの扱いを別に決める |
| 契約の成立+履行の開始 | 本人所定の契約書で締結し、履行又は対価の支払が始まったとき | ビジネスマッチングの紹介契約 | 「履行の開始」が何を指すか |
| キャンセル期間の経過 | 申込書が受理され、取消しのできる期間が過ぎたとき | 定期購読の商品の訪問営業代行 | 法律上のクーリング・オフ期間は、書面の不備などで進行しないことがある |
| 全額の入金 | 契約金額の全額が本人に入金されたとき | 工事案件の紹介、研修サービスの紹介 | 分割払い・一部の未払いのときの扱い |
| 売上の確定 | 受領済みで、返金・キャンセル・チャージバック・未収・割引がなく、確定売上として計上したとき | 医療関連の送客(医療法人用)、ソフトの販売代行 | 確定の時点を誰がどう判断するか |
| 4つの要件と推定 | 正式な契約の締結・サービスの提供開始・契約関連の事務の誠実な履行・初回の対価の受領 | 電力関連サービスの紹介(紹介する側の修正版) | 要件の一つの範囲を別の書面で明示する |
全額の入金を条件にする型は、本人の側の未回収のリスクを紹介者に分けてもらう書き方です。工事案件1件の紹介契約では、有効な工事請負契約の成立と契約金額の全額の入金を報酬の発生の要件とし、お客様の未払い・債権の放棄・解除で全額が入らなければ報酬は発生しないとしています。研修サービスの紹介パートナー契約でも、お客様の入金が遅れれば支払も遅れ、いかなる理由があっても入金がなければ支払わないとしました。紹介する側から見ると、本人がお客様からの回収を怠っても報酬が出ないことになるので、本人の側の責めで入金されない場合の扱いを決めておくよう求める余地があります。工事案件の紹介契約では、紹介者の側の保護として、本人が報酬の支払を遅らせたときは遅延損害金を払い、30日以上遅れれば紹介者が解除できるとしています。
定期購読の商品の訪問営業代行の契約では、当初の案から一貫して、「成果」を、お客様が署名・押印して購読の申込書を出し、発行元が受理し、かつ契約の取消しのできる期間を過ぎた状態と定義し、完全出来高で報酬を払う形にしています。キャンセルされ得る間は成果に数えない、という考え方です。
ただし、法律上のクーリング・オフの期間を手数料の発生に結びつけるときは注意が要ります。学習コーチングの会員紹介の提携契約のレビューでは、原案が「最初の支払の完了+クーリング・オフ期間(8日)の経過」を成約としていた点について、サービスが特定継続的役務提供に当たる場合、8日は法定の書面を受け取った日から数えるので書面に不備があれば期間は進行せず、事業者が不実のことを告げるなどして解除を妨げた場合には、解除できる旨を記載した書面を改めて受け取った日から数え直すこと(特定商取引法48条1項)を挙げ、固定の8日で成約とした後に有効なクーリング・オフが来る事態があり得ると指摘しました。成約の定義をキャンセル期間に結びつけるなら、成約後のキャンセルについての戻しも必ず置いておく必要があります。
電力関連サービスの紹介契約では、相手方の原契約が「全て満たした場合」「契約関連事務を滞りなく」といった抽象的な発生要件を重ねていたのに対し、紹介する側の修正版で要件を4つに整理し、要件を満たしたときは成果を推定し、正当な理由なく支払を拒めないとしました。要件のうち「契約関連事務の誠実な履行」の範囲は別の書面で明示するとしています。紹介する側にとっては、要件の数より、要件が客観的に判定できるかどうかが重要です。
返金・解約時の戻し(クローバック)を置く例・置かない例
クローバックとは、手数料を払った後にお客様の返金・解約・不払いなどがあったとき、その手数料を返してもらう(又は次の支払から差し引く)仕組みです。事務所の資料には、置く例と置かない例の両方があります。
| 書き方 | 内容 | 事務所の資料での例 |
|---|---|---|
| 次の支払から差し引く | キャンセルなどが出た分は当月以降の報酬から控除し、明細を交付する | ソフトの販売代行 |
| 当然に無効・返還 | 返金などがあればその紹介料は当然に無効とし、支払済みなら請求から30日以内に返還する | 医療関連の送客(医療法人用) |
| 解除・不履行で返還 | 紹介した相手が契約後に解除し、又は履行を遅滞・拒絶したときは支払義務がなく、支払済みは返還する(期間の制限なし) | ビジネスマッチングの紹介契約 |
| 紹介者の責めによる解除で返還 | 紹介者の責めに帰すべき事由でお客様の契約が解除されたら、その分の手数料を全部返す | オンライン講座の顧客紹介の規約 |
| 不正だけ返還 | 虚偽の契約の報酬は払わず、受領後に虚偽・取消し・不正が分かれば請求日から5営業日以内に返還し、遅れれば遅延損害金 | 定期購読の商品の訪問営業代行 |
| 戻さない | お客様の解約・返金・解除があっても、本人の責めがない限り報酬は減額・返還・取消しの対象外。虚偽の報告で得た分だけ返す | 採用支援の営業代理・紹介 |
戻さない型は、紹介する側にとっては報酬が安定する書き方ですが、本人の側から見ると、お客様が早期に解約しても手数料だけは払い切った状態になります。逆に、戻しの範囲が広すぎる型(期間の制限がなく、理由を問わず返還)は、紹介する側にとって、いつまでも報酬が確定しない書き方です。どちらの立場で作るかを決めたうえで、戻しの対象(返金・解約・不払い・取消し)、戻しの期限、戻しの方法(返還か控除か)を選びます。
文章生成のWebサービスの代理店契約の改訂後の版では、規約違反や違法な申込みが分かったときに、支払の停止と既払いの報酬の返還を請求でき、請求日から14日以内に返さなければ未払いの報酬に充当できるとしています。違反による返還と、通常の返金・キャンセルによる戻しは別の論点なので、後者を置くかどうかは別に決めることになります。
戻しの期限と、戻しがないと何が起きるか
戻しを置くときに忘れやすいのが期限です。営業代行会社が相手方から示された広告取扱(アフィリエイト媒体)の契約をレビューした報告書では、クーリング・オフ等で取り消された分を翌月以降の報酬から差し引くとしながら期限がなく、契約が終わったときに引ききれない分を返す義務があるのかも分からないと指摘し、終了の時点で清算を打ち切ると明記させる意義を説明しています。終了時の清算と、終了後に成約した分の手数料(テール)の扱いは契約の終わらせ方で扱います。
反対に、戻しがない原案のリスクを数字で示したのが、学習コーチングの会員紹介の提携契約のレビューです。サービスを提供する側(紹介を受ける側)からの依頼で、原案では最初の3か月の契約金額の30%を紹介料とし、分割払いでも分割の総額を基準にしていました。報告書は、会員が受講1か月で解約した場合の数値例で、支払済みの紹介料がサービスを提供する側の手取りの約6割に達すること、分割払いで初回だけ払って以後払わない場合でも分割の総額の30%がかかることを示し、①入金に連動させる、②返金・取消し・不払いのときの返還又は翌月以降の紹介料からの控除を明記する、のどちらかを手当てとして挙げています。
この案件では、サービスが特定商取引法の特定継続的役務提供に当たる可能性が高く、会員はクーリング・オフの期間を過ぎた後も中途解約でき(同法49条1項)、事業者が請求できる額には上限があり(同条2項)、これに反する特約で会員に不利なものは無効になる(同条7項)という前提があります。返金のルールが法律で決まっている商品を紹介してもらう場合は、紹介料も返金に連動させておかないと、紹介料を払った分だけ赤字になる場面が生じます。特定継続的役務提供への当てはめそのものは、紹介する商品の側の問題です。紹介の場面に特有の論点は代理店・紹介者の営業と消費者向けのルールで扱います。
支払・報告・異議の書き方
手数料の支払は、締め日・報告・確定・異議・支払期日の順に流れます。事務所の資料では、異議の期間と、期間内に異議がなければ承諾したものとみなす定めを置く例が多くあります。
異議とみなし承諾の条の例
文章生成のWebサービスの代理店
異議の期間中に支払期日が来た場合の扱いを決めておくと、遅延の主張を防げます。
電力関連サービスの紹介
紹介する側からは、通知の期限と振込みの期限の両方を求めています。
報告から支払までを一続きで書いた例として、クラウドサービスの紹介業務契約があります。紹介者は成約した月の翌月10日までに紹介実績の報告書を出し、提供者が確認して金額を確定させ、翌々月末に払うとし、提供者が源泉徴収分を差し引くことと、提供者が紹介者に対して持つ債権と相殺できることも定めました。誰が報告し、誰が確定させ、いつ払うのかが一つの流れで読めるようにしておくと、どの段階で止まっているのかが分かります。
このほか、リフォームの送客サイトと施工業者の契約では確定の通知から7日以内、出張買取の業務提携では報告から5営業日以内に異議がなければ承諾とみなすとしています。
異議の手続で気をつけたいのが、支払が止まったままになる「デッドロック」です。学習コーチングの会員紹介の原案は「確定した紹介料」を支払う建付けで、照合の協議が長引くと支払期限が来ない作りでした。報告書は、報告が遅れたときの効果、協議の期限、遅延損害金の定めもないと指摘し、異議のない部分を先に払う、一定期間異議がなければ確定とみなす、という手当てを提案しています。
条文例:異議のない部分の先払い(考え方を示すための例)
1甲は、毎月末日を締日として、当月に確定した手数料の明細を翌月10日までに乙に通知する。
2乙は、前項の通知を受けた日から10営業日以内に限り、書面又は電磁的方法により理由を示して異議を述べることができる。期間内に異議がないときは、通知の内容で確定したものとみなす。
3乙が異議を述べた場合でも、甲は、異議の対象とならない部分の手数料を、本来の支払期日までに支払う。異議の対象となった部分は、協議により確定した日の属する月の翌月末日までに支払う。
日数や期日は、双方の締め日と経理の運用に合わせて決めます。
上流の条件と不正への備え
紹介や営業代行が何段にも重なる取引では、上流で代金が払われなかったり条件が変わったりしたときに、下流の報酬をどうするかを決めておく必要があります。工事関連の営業代行の契約では、改訂を重ねる中で、報酬が発生しない場合として、取引先の倒産などで入金がない場合、取引先に責任がないのに入金されていない場合を加えました。さらに、委託者自身が協力会社から紹介料を受け取る多段の紹介の構造であることから、取引先から協力会社への支払や、協力会社から委託者への紹介料の支払がない場合も、報酬が発生しない場合に加えています。上流の不払いを、下流の報酬に連動させる書き方です。何層にも代理店が重なる取引の契約の組み方は二次代理店・多層代理店で扱います。
定期購読の商品の訪問営業代行の契約では、委託者自身が発行元との契約に基づいて委託しているため、発行元の方針で報酬の体系や単価が変わり得ることを定め、変わるときは営業員に説明して協議し、30日前までに通知するとしました。上流の条件の変更を下流に及ぼすなら、変更の理由・通知の時期・説明の手続を書いておくことが、受け取る側の納得につながります。
架空の紹介や自分で自分を紹介する自演の購入への備えも、手数料の条の一部です。医療関連のプラットフォームが医療法人から紹介料を受け取る契約では、架空の紹介・自演の購入・多重登録への誘導などの不正を禁止し、不正があれば直ちに解除して調査費用を請求できるとしています。算定に疑いがあるときは帳簿などの開示を求められるとしつつ、診療に関する記録(レセプト・診療録)は開示の対象から外しました。開示を求める権利を置くときは、開示しなくてよいものも一緒に決めておくと、相手方の秘密や個人情報との衝突を避けられます。
報告と証憑、紹介者が個人のときの支払期日
報告と証憑(計算の根拠になる資料)の定めも、手数料の争いを防ぎます。ソフトの販売代行の契約では、売る側が、エンドユーザー名・契約内容・入金額と入金日・キャンセル・ポイント数を記載した明細を作り、相手方の合理的な要請があれば証憑を示す義務を負うとしています。リフォームの送客サイトの契約では、施工業者に、商談の結果、契約書の写し、着工日・完工日、入金日と入金の証明を報告させ、成約手数料の取りこぼしを防いでいます。出張マッサージとホテルの提携では、施術件数・売上額・利用客の傾向・苦情の有無を書いた月次報告書を翌月の第5営業日までに出すとし、これが手数料の計算の根拠になります。
手数料の基礎が報告する側の売上なのに、報告を「本部が求めたときだけ」にしている契約では、計算の根拠が手に入らないことがあります。報告の頻度・期限・項目は、手数料の条と対にして書きます。共同開発した製品の販売窓口の契約では、対象の取引がなかった期間も「なし」と報告させる(ゼロ報告)としています。報告がないのは取引がなかったからなのか、報告を忘れたからなのかを区別できるようにするためです(ライセンス契約書)。支払の方法にも、医療関連の紹介報酬のように年1回の確定・支払とし、それ以外の追加の振込みは紹介者が振込手数料を負担する例や、ソフトの販売代行のように報酬をポイントで渡す例があります。ポイントで渡すなら、ポイントの価値と使い道を契約と規約の両方でそろえておきます。
紹介者が従業員を使わない個人や、代表者のほかに役員も従業員もいない一人の法人である場合は、フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)の対象になり得ます(同法2条1項)。学習コーチングの会員紹介の提携契約のレビューでも、紹介する側が一人法人ならフリーランス法の60日の規制がかかる点を挙げています。委託する側が従業員を使用する個人、又は役員が2人以上いるか従業員を使用する法人(特定業務委託事業者。同条6項)である場合、報酬の支払期日は、役務の提供を受けた日から60日以内で、できる限り短く定めなければなりません(同法4条1項)。入金に連動させる、確定してから払う、という手数料の設計は、この期日の定めと両立するかを確かめておきます。なお、同じ報告書は、紹介の業務は委託する側が自ら利用する役務なので、中小受託取引適正化法(取適法。2026年1月1日に下請法から改称)の役務提供委託には原則として当たらない、と整理しています。
よくあるご質問
代理店手数料は、契約の成立時と入金時のどちらで発生させるべきですか?
どちらも使われています。成立時にすると代理店に早く報酬が入りますが、その後の解約・不払いに備えて戻しの条が必要です。入金時(又は全額の入金時)にすると戻しの必要は小さくなりますが、分割払いや一部の未払いのときの扱いを決めておく必要があります。
クローバック(手数料の戻し)は、必ず置くべきですか?
法律で必須ではありません。本人の側で作るなら、返金・解約・不払いのときに返還又は控除できるようにしておくのが基本です。代理店の側で作るなら、戻しの対象と期限を限り、契約終了時点で清算を打ち切ると書いておくことが大切です。
クーリング・オフ期間の経過を成約の条件にすれば安全ですか?
それだけでは足りません。法律上のクーリング・オフ期間は、書面に不備があると進行せず、事業者による解除の妨害があると数え直しになるため、固定の日数で成約とした後に有効なクーリング・オフが来ることがあります。成約後のキャンセルに対する戻しもあわせて置いておきます。
手数料の明細に異議があるとき、支払を全部止めてよいですか?
契約の定めによります。全部を止めると支払が長期間止まるおそれがあるので、異議のない部分は期日どおり払い、異議の部分だけ協議で確定させる書き方にしておくと、争いが広がりません。
代理店に売上の報告をさせる条は必要ですか?
代理店側の売上や代金の回収を基礎に手数料やロイヤリティを計算する契約では必要です。報告の頻度・期限・項目・証憑の提出を決めておかないと、計算の根拠がなくなります。
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