このページの要点
- 輸入した者は製造物責任法上の製造業者に当たり、国内で仕入れて売るだけの販売店も、自社の表示により製造業者等に当たることがある。
- メーカーとの保証期間の起算点を、お客様への引渡しや不具合の発見に合わせないと、期間のずれを販売店が負担する。
- リコール費用は、原因別の最終負担と、先に立て替える者のルールを分けて書き、責任の上限が届くかを確かめる。
- 事故の報告、お客様情報の扱い、保険、契約終了後の記録の保存まで、保証とリコールの条文と一体で設計する。
結論:「誰が製造業者等か」「誰が売主か」「誰が回収の費用を持つか」を、別々の問いとして契約に書く
メーカーの商品を仕入れて売る販売店や、海外の商品を輸入して売る輸入代理店が、商品の事故や不具合で責任を問われるとき、三つの別々の責任が重なります。一つ目は、お客様がけがをしたり他の財産に損害を受けたりしたときの製造物責任(PL責任)、二つ目は、売った商品が契約の内容に合っていないときの売主としての責任(品質保証・契約不適合責任)、三つ目は、商品を回収するリコールの費用の分担です。
根拠も相手方も期間も違います。製造物責任は製造物責任法が定める被害者に対する責任、売主の責任は民法の売買の規定による買主に対する責任で、リコール費用の分担には法律に一律の決まりがなく、契約の中身がそのまま結論になります。契約書では、次の五点を分けて書いておきます。
- 輸入する者は製造物責任法上の「製造業者」に当たり(同法2条3項1号)、国内で仕入れて売るだけの販売店は、自社の表示で製造者のように見せない限り、原則として当たらない(同項2号・3号)。
- 売主としての責任は、メーカーとの関係とお客様との関係で別々に生じる。期間がずれると、差額を販売店が抱える。
- お客様向けの保証書は、販売店が何を約束する書面なのかを決める。「メーカー保証に準ずる」とだけ書くと、売主の責任を消したように読まれる。
- リコール費用は、費目と原因で分けて最終負担を決め、原因が分かる前の立替えのルールも置く。
- 事故情報の報告、お客様情報の扱い、保険、契約終了後の対応は、保証とリコールの条文と一体で設計する。
代理店という名前が付いていても、売主がだれになるかで構造が変わります。見分け方は代理店契約書の種類と見分け方、買い取って再販売する場合の基本の条文は販売店契約書・特約店契約書で説明しています。ここでは、そこに重ねて必要になる品質と責任の条文に絞ります。製造を委託する側の契約の責任の上限や保険は別のガイドで扱うため、販売店・輸入代理店の立場に限ります。
輸入代理店や販売店は、製造物責任法の「製造業者等」に当たるのか?
当たるかどうかは、「輸入したか」と「どんな表示をしたか」で決まります。製造物責任法は、製造物の欠陥によって他人の生命・身体・財産が侵害されたときに、製造業者等が損害を賠償する責任を負うと定めています(3条)。「欠陥」とは、製造物の特性や通常予見される使用形態、引き渡した時期などを考慮して、通常有すべき安全性を欠いていることです(2条2項)。過失ではなく安全性の欠如を問題にする点が、民法の不法行為と違います。「製造業者等」は、2条3項に三つ書かれています。
- 一号:製造物を業として製造、加工又は輸入した者。海外メーカーの商品を輸入して売る輸入代理店はここに当たり、被害者の請求は輸入した者に向かいます。
- 二号:自ら製造業者として氏名、商号、商標その他の表示をした者、又は製造業者と誤認させる表示をした者。自社ブランド名で売る販売店(PB商品、ホワイトラベル)が当たり得ます。
- 三号:製造、加工、輸入又は販売の形態その他の事情から見て、実質的な製造業者と認められる表示をした者。「企画・開発」の表示で、メーカーのように見える販売元が当たり得ます。
メーカーの表示のまま国内で仕入れて売るだけの販売店は、原則としてどれにも当たりません。ただ、自社のロゴのシールを貼る、自社の連絡先を製造元のように載せる、メーカー名を隠して自社名だけで売る、といった運用が重なると、二号・三号に近づきます。
被害者であるお客様は、輸入者(2条3項1号)に請求できます。販売店は、自社の表示で2号・3号に当たる場合に限り、同じ立場に立ちます。最終的な負担は、当事者の契約で決めます。
| 販売の形 | 製造物責任法上の立場 | 契約で先に決めること |
|---|---|---|
| メーカー表示のまま国内で仕入れて売る | 原則として当たらない。表示を加えると変わり得る | メーカーへの求償、保証期間のそろえ方、回収への協力 |
| 自ら海外から輸入して売る | 輸入した者として製造業者に当たる | 海外メーカーへの求償、保険、日本語表示と同梱書類の責任 |
| 自社ブランド名で売る(PB・ホワイトラベル) | 氏名等の表示により当たり得る(2号・3号) | 製造者への補償請求、品質基準の別紙化 |
| メーカー名義で契約する代理型 | 原則として当たらない。売主はメーカー | 代理店が品質を保証する発言をしないこと、苦情の転送 |
実際の運用(どの名前で売り、何を貼り、だれが保証を約束しているか)で評価が変わります。表は出発点です。
契約で「責任を負わない」と書いても、被害者には効かない
免責の条項は、契約の当事者の間でだけ効力を持ちます。販売店とメーカーが「欠陥による損害はメーカーだけが負担する」と書いても、お客様が輸入者に請求することは妨げられません。だから販売店契約には、請求を受けた側がその負担を最終的に責任のある側へ移すための、求償と補償の条項が要ります。
期間にも注意が必要です。製造物責任法の損害賠償請求権は、被害者が損害と賠償義務者を知った時から3年(人の生命・身体の侵害は5年)、又は製造業者等が製造物を引き渡した時から10年で時効により消滅します(5条1項・2項)。蓄積して健康を害する物質による損害や、潜伏期間の後に症状が出る損害では、10年は損害が生じた時から数えます(同条3項)。契約上の保証期間が1年でも、責任は引渡しから10年残り得るので、販売店契約が終わった後も問題は続きます。なお、損害がその製造物についてのみ生じたとき(商品そのものが壊れただけのとき)は同法の対象外で(3条ただし書)、売主としての責任の問題になります。
品質保証は、メーカーとお客様で期間がずれる:「メーカー保証に準ずる」と書く前に
販売店は、メーカーに対しては買主、お客様に対しては売主という二つの立場に同時に立ちます。この二つの関係で保証の期間と範囲が一致していないことが、販売店が損をする最も多い原因です。
民法は、引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないとき、買主に、履行の追完の請求(562条)と代金の減額の請求(563条)を認め、損害賠償の請求と解除も妨げないとしています(564条)。種類又は品質の不適合は、買主が不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しないと、これらの権利を失います。ただし、売主が引渡しの時に不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは別です(566条)。つまり、お客様が不適合に気づいてから1年以内なら、販売店は売主として追完等の請求を受けます。
一方、メーカーとの契約では「納品から6か月以内に通知」のように短く切られていることがあります。販売店が在庫を数か月持ち、売った後に不具合が見つかると、メーカーへ通知できる期間はすでに過ぎています。
| 出来事 | 日付 | メーカーとの契約(納品から6か月以内) | お客様との関係(知った時から1年以内) |
|---|---|---|---|
| メーカーから販売店へ納品 | 1月10日 | ここから6か月(7月10日まで) | まだ売っていない |
| 販売店からお客様へ引渡し | 6月10日 | 残り1か月 | 通知期間はまだ始まらない |
| お客様が不具合に気づく | 翌年2月 | とうに経過 | 翌々年2月まで通知を受け得る |
お客様への引渡しから約1年8か月まで請求を受け得るのに、メーカーへの期間は納品から6か月で終わり、その後は販売店が一人で負担します。数字は説明のための仮のものです。
メーカーとの契約の、通知期間の定め方
通知の起算点
起算点をお客様への引渡し・発見の日に移し、無制限にならないよう全体の上限を置きます。年数は商品の使用期間や在庫の回転に合わせます。
「メーカー保証に準ずる」型の保証条項
輸入して売る販売店の契約では、「メーカーと協議して対応を試みるが、修理、交換、保証を確約せず、メーカーの対応の内容に準じる」といった書き方が使われていることがあります。海外メーカーの対応が遅い商品では、責任を限定したくなる気持ちは理解できますが、三つの問題があります。第一に、売主としての責任(民法562条以下)を実質的に消す内容に読まれます。事業者どうしでも、売主が知りながら告げなかった事実は免責されません(民法572条)。第二に、メーカーが動かないとき、買主が何を請求できるかが分かりません。第三に、買主が消費者なら、事業者の債務不履行による損害賠償責任の全部を免除する条項は無効です(消費者契約法8条1項1号)。
同法8条2項には例外があります。事業者が追完や代金の減額をする責任を負うとされている場合(1号)や、消費者のために別の事業者が損害賠償責任や追完の責任を負うとされる契約が、販売契約の前か同時に結ばれている場合(2号)は、1項1号・2号が適用されません。メーカーの保証書がお客様に直接の責任を負う形になっているか、日本国内に窓口があるかが、分かれ目です。
お客様に渡す保証書は、メーカーの保証書を取り次ぐ型か、販売店が独自に保証を約束する型かを決め、書面から分かるようにします。賠償の上限を置くときは、事業者、代表者又は使用する者の故意又は重大な過失による一部免除は無効で(8条1項2号)、故意又は重大な過失を除く過失による行為にのみ適用されることを条項が明らかにしていないときも無効です(8条3項)。上限を定める一文の中に、除外を書き込みます。
お客様向け保証規定の賠償の上限(条文例)
1当社は、本商品に契約の内容に適合しない点があるときは、保証期間内に限り、当社の選択により、無償で修理し、又は同等の商品と交換します。
2当社は、前項に定める以外の損害について、当社、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き、本商品の購入代金の額を上限として賠償します。ただし、人の生命又は身体の侵害については、この上限を適用しません。
3本商品の欠陥により、お客様の生命、身体又は財産に損害が生じたときは、製造物責任法その他の法令に基づくお客様の権利は、本規定により制限されません。
要点は、第2項が上限を定める一文の中に「故意又は重大な過失による場合を除き」を入れていること、生命・身体の侵害に上限を及ぼさないことです。事業者向けの販売では、上限の水準や除外の範囲を取引の実情に合わせて決めます。
リコールの費用は、だれが先に払い、最終的にだれが持つのか?
リコール(回収、販売停止、交換、無償修理など)の費用の分担は、法律が一律には決めていません。メーカー、輸入者、販売店の間でどう分けるかは契約で決まります。費用は、告知・連絡、回収の運送と人件、検査・原因調査、交換品と代金の返還、未販売在庫の買戻し、廃棄などに分かれ、販売停止の間の販売店の逸失利益は、契約で明示しないと争いになりやすい費目です。
製造を委託する側の契約には、これらの費用をすべて受託者の負担とする書き方がありますが、販売店の契約でそのまま使うと、「だれの原因か」を切り分ける仕組みがなく、揉める元になります。原因と段階の二つの軸で分けるのが実務的です。
| 原因 | 最終負担 | 決め方のポイント |
|---|---|---|
| 設計・製造上の欠陥、原材料や部材の変更 | メーカー(輸入の場合は輸入者経由で求償) | ロット番号などで対象の範囲を特定できる記録を残す |
| 輸入時の日本語表示、同梱書類、ラベル貼付の誤り | 輸入者 | 海外メーカーとの契約に、表示内容の確認の責任を書く |
| 販売店の保管・輸送の不備、説明・広告の誤り | 販売店 | 保管条件を別紙に書き、守れていたかを記録する |
| 原因が分からない、複数が重なる | 調査後に寄与度で按分 | 調査の方法と期限、第三者機関を使うかを決める |
按分の割合は固定せず、調査の結果を踏まえて協議する書き方が一般的です。協議が整わないときの手順も置いておきます。
段階も分けます。回収の初動ではお客様の安全が最優先で、負担を決める余裕がありません。回収を実際に行う側がいったん立て替え、原因が確定した後に精算する二段の設計にしておくと、初動が遅れません。
品質事故の報告・回収・費用の精算(条文例)
1販売店は、本商品に関し、お客様の生命、身体若しくは財産に損害が生じ、又は生じるおそれのある事故、苦情その他の重大な事象を知ったときは、知った日の翌営業日から起算して2営業日以内に、メーカー(又は輸入者)に報告し、対象の商品、ロット番号その他の記録を保存する。
2メーカー(又は輸入者)は、回収、販売停止その他の措置(以下「回収等」という。)が必要と判断したときは、販売店に指示することができる。販売店は、安全の確保のために緊急の必要があるときは、指示を待たずに対象の商品の販売を停止することができ、直ちにその旨を通知する。
3回収等に要する費用は、実際に回収等を行った者がいったん立て替え、費目ごとの明細を添えてメーカー(又は輸入者)に請求する。メーカー(又は輸入者)は、請求を受けた日から30日以内に、仮払いとして相当額を支払う。
4調査の結果、原因が販売店の保管、輸送、説明又は表示にあるときは、その部分の費用は販売店が負担する。原因が複数あるときは、寄与の程度に応じて負担の割合を協議して定め、仮払いの額が最終の負担額を上回るときは、上回る部分を速やかに返還する。
5回収の対象のうち、販売店の未販売の在庫は、メーカー(又は輸入者)が仕入れ価格に相当する代金を返還して買い戻す。販売済みの商品は、交換品を無償で提供し、又は販売店がお客様に返還した代金を補填する。
第3項と第4項が、立替えと最終負担を分ける部分です。第2項の停止権は、メーカーの指示が遅れたときに販売店が責任を問われることを避けるために置きます。
この条文例による精算を、仮の数字で計算します。対象のロットが1,000個で、640個が販売済み、360個が販売店の在庫、仕入れ価格は1個3,000円です。販売店の立替費用は、告知・連絡費12万円、回収の運送費20万円、人件費の実費8万円の合計40万円。調査の結果、製造工程の不良が主な原因でしたが、販売店の倉庫の温度の逸脱が拡大に関係していたため、負担の割合をメーカー8、販売店2と協議して決めました。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 立替費用のメーカー負担分 | 40万円 × 80% | 32万円 |
| 未販売在庫の買戻し | 3,000円 × 360個 | 108万円 |
| 販売済み640個 | メーカーが交換品を無償で提供 | 現物 |
| メーカーから販売店への金銭の合計 | 32万円 + 108万円 | 140万円 |
販売店の負担分は40万円 × 20% = 8万円です。割合は調査の結果で変わります。
買戻しは、仕入れ価格を基準にするか、期限の残りを考慮するかで揉めやすいので、基準日と評価の方法を条文に書いておきます。逸失利益は、メーカー側が「間接損害は負わない」と書いていることが多いため、含めるなら明記し、含めないなら含めないと書きます。また、責任の上限が回収費用の条にも届くのか、逆に回収費用が上限の外にあるのかを、契約書を読むときに最初に確かめます。
事故の情報、お客様の情報、回収の判断は、だれが握ってよいのか
事故の情報を最初に知るのは、お客様とつながっている販売店です。実務の契約には、苦情や健康被害の報告を数営業日以内に行い、証拠資料と対象の商品を保存すること、ロット番号や期限を確認できる状態で管理すること、メーカーの回収・販売停止に協力すること、販売店の保管の不備や表示の違反による損害は販売店が負うことが書かれるのが通例です。これは販売店に義務が偏った形なので、均衡を取るために、メーカー(輸入者)にも、既知の不具合や安全情報を販売店に通知する義務と、問合せの窓口を置く義務を書いておきます。知らされていない不具合でお客様に責任を問われる事態を避けるためです。
販売店が持つお客様の情報を、リコールのために渡してよいか
リコールの告知にはお客様の連絡先が要り、それを持つのは販売店です。個人情報保護法では、利用目的をできる限り特定し(17条1項)、本人の同意なく目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱ってはならず(18条1項)、同意なく個人データを第三者に提供してはなりません(27条1項)。人の生命、身体又は財産の保護のために必要で、同意を得ることが困難なときの例外はありますが(18条3項2号、27条1項2号)、リコールの告知に常に使えるとは限りません。購入時の案内に、「商品の安全に関する連絡のために、メーカー又は輸入者に連絡先を提供することがあります」という利用目的と同意を入れておくのが現実的な備えです。利用目的の達成に必要な範囲で取扱いを委託するときの委託先は第三者に当たらないので(27条5項1号)、連絡の業務をメーカーに委託する形も考えられます。
事故・回収の手順を契約に書くときの確認
- 販売店からの報告の期限と方法、保存する記録の範囲を決めたか。
- メーカー(輸入者)から販売店への、既知の不具合・安全情報の通知義務を書いたか。
- 回収等を指示する権限がだれにあるか、販売店の緊急の停止権を認めるかを決めたか。
- お客様の連絡先の扱いを、購入時の案内と契約の両方でそろえたか。
- 契約終了後も、販売記録(ロット、販売先)を一定期間保存し、回収に協力する義務を存続させたか。
最後の項目は見落とされがちです。販売店契約が終わっても、製造物責任の請求権は引渡しから10年残り得ますが、終了後の条項に記録の保存や協力の義務がない契約は多くあります。数年後の事故で、どのロットをだれに売ったのかを示せなくなります。終了時の在庫や商標の一般論は代理店契約・業務提携契約・フランチャイズの終了で説明しています。
保険と海外メーカー:求償が空振りしないための準備
製造物責任やリコールの費用は大きくなりやすく、負担する側に支払う力がなければ契約の分担は意味がありません。確認する点は四つあります。第一に、輸入者の生産物賠償責任保険が、輸入して売る商品を補償の対象にしているか。第二に、海外メーカーの保険が日本国内で生じた事故を補償するか(補償の範囲が国や地域で限られていることがあります)。第三に、販売店や輸入者が追加の被保険者になれるか。第四に、回収の費用が対象に含まれているか(通常の賠償責任保険だけではてん補されないことがあり、別の保険が要る場合があります)。
契約の条項としては、保険の加入と維持、対人・対物を対象とすること、1事故あたりと期間を通じた補償額の下限、追加の被保険者とする努力、加入と更新を示す書面の提出、失効や変更の通知、違反したときの解除といった型が使われます。「合理的に付保できる範囲」と限定すれば、小さなメーカーに過大な保険を求める形を避けられます。
海外メーカーへの求償は、契約があっても回収できなければ意味がありません。準拠法、紛争解決、外国通貨の支払、正文の言語の一般論は海外企業との代理店契約・ライセンス契約にあるため、ここでは品質に関わる点だけを挙げます。求償の対象に、製造物責任の請求だけでなくリコール費用と第三者からの請求への対応費用を含めているか。メーカーに、原因調査への協力とサンプル・製造記録の提出の義務があるか(調査の協力がなければ原因の割合の協議が進みません)。日本語の表示や取扱説明書の作成と確認の責任を、輸入者とメーカーで分けているか。品目によっては輸入する者に届出や表示を義務づける法令があるため、契約の前に、商品に適用される法令を一覧にして、担当を書いておきます。
よくある失敗と直し方:誤りやすい条項を、書き方の型で見る
次のような条項が使われていることがあります。
書き方の例(一般的な例)
保証の範囲
取次ぎの役割と売主の責任を分け、メーカー保証で足りる範囲だけ義務を履行したものとする、無理のない書き方に直します。
リコール費用
原因別の分担と立替えの順序を分けます。原因を問わず一方が全部持つ形は、責任のない部分まで負担させます。
契約終了後
製造物責任の請求権が引渡しから10年残り得ることに合わせた存続条項です。年数は商品の性質に合わせます。
ヒヤリングで確認すること:品質と責任の条項を決める前の質問
確認事項と、その理由
商品は自分で輸入していますか、輸入者から仕入れていますか。
自分で輸入していれば製造業者に当たります(2条3項1号)。仕入れなら、輸入者への求償と情報の流れが中心になります。
商品に自社の名前、ロゴ、連絡先は付きますか。メーカーの名前は表示されますか。
自社の表示を付すと製造業者等に当たり得ます(2条3項2号・3号)。メーカーの承諾と補償の条項の要否を判断します。
お客様は消費者ですか、事業者ですか。
消費者への販売では保証規定や免責に消費者契約法の規律が及びます(8条、10条)。事業者向けは取引の実情に合わせて上限と除外を設計できます。
メーカーの保証書は、お客様に直接責任を負う形ですか。国内に修理窓口はありますか。
免責条項の効き方が変わります(消費者契約法8条2項2号)。窓口の有無は、取次ぎ型の保証が成り立つかを左右します。
メーカーとの契約の通知期間は納品から何か月ですか。在庫は平均して何か月持ちますか。
期間のずれの大きさを把握し、起算点の修正の要否を決めます。在庫の回転が遅いほど、ずれが大きくなります。
PL保険は商品を補償の対象にしていますか。海外メーカーの保険は日本の事故を補償しますか。購入時の案内に、安全のための連絡の利用目的は入っていますか。
契約で負担を決めても、支払う力がなければ意味がありません。連絡先を使えるかも、リコールの初動を左右します。
よくあるご質問
輸入代理店は、製造物責任法上の「製造業者」になりますか?
なります。製造物責任法2条3項1号は、製造物を業として製造、加工又は輸入した者を製造業者とし、これに当たる者は、製造物の欠陥によって他人の生命、身体又は財産を侵害したときの損害賠償責任を負います(3条)。メーカーが海外にあっても、輸入した者に請求が向かう構造です。最終的な負担は、海外メーカーへの求償を含めて、契約で決めておきます。
国内メーカーの商品を仕入れて売るだけの販売店も、製造物責任を負いますか?
メーカーの表示のまま売る販売店は、原則として製造業者等に当たりません。ただし、自社の氏名、商号、商標を製造者のように表示した場合や、製造業者と誤認させる表示をした場合、実質的な製造業者と認められる表示をした場合には、製造業者等に当たり得ます(2条3項2号・3号)。売主としての責任(民法の契約不適合の責任)は、製造物責任とは別に負います。
契約に「メーカー保証に準ずる。販売店は責任を負わない」と書けば、販売店は免責されますか?
免責の効果は限られます。事業者どうしの売買でも、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れられません(民法572条)。買主が消費者である場合は、事業者の債務不履行による損害賠償責任の全部を免除する条項が無効です(消費者契約法8条1項1号)。取次ぎの役割と、売主として負う責任を分けて書くほうが、争いを避けられます。
リコールの費用は、法律でだれが負担すると決まっていますか?
回収費用の分担を一律に決める規定は、本記事で確認できた範囲ではありません。メーカー、輸入者、販売店の間の負担は、契約の定めで決まります。原因別の最終負担と、回収を実際に行う者の立替えを分けて書いておくと、初動が遅れず、後の精算もしやすくなります。
販売店が持つお客様の連絡先を、リコールのためにメーカーに渡してよいですか?
あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供することは、原則としてできません(個人情報保護法27条1項)。人の生命、身体又は財産の保護のために必要で、同意を得ることが困難なときの例外はありますが、常に使えるとは限りません。購入時の案内に、安全のための連絡の利用目的とメーカー等への提供を入れておくなどの備えをします。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、取引の実態や当事者の立場によって変わることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索 / 公正取引委員会 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 特許庁